2021.01.19
コロナ禍における保険の特別措置(1)
■ 2年暖冬が続きましたが、この冬は、晩秋に突然厳冬期の寒さがやってきました。
寒さが厳しいと、インフルエンザの流行が懸念されます。新型コロナウイルス感染症の拡大とのダブルパンチになるのではと心配されましたが、幸い、この原稿を書いている2020年12月の段階ではインフルエンザの流行は特には報告されていません。
新型コロナウイルス対策で外出時のマスク着用、帰宅時の手洗いの徹底のせいなのではと聞きました。感染防止のために外出する人が減って、人間同士の三密接触が減ったのが一番大きい理由なのかもしれません。
■ 外出の制限に伴って、経済活動も制限されています。飲食業や観光業といった業種に限らず、大変多くの方がコロナ禍で収入減にみまわれています。保険料の支払いが大変で保険契約を解約しようかと迷っている方もいらっしゃるかもしれません。
これに関して、金融庁から保険会社等に対して、顧客保護の観点から種々な要請がなされています。そのひとつに、保険料払込猶予期間の延長というものがあります。
(保険料払込猶予期間というのは、保険料の支払が遅れて期日には間に合わなくても、その翌日からいきなり契約が無効になるわけではなく、一定の期間内に支払えば契約を維持できるという仕組みです。)

新型コロナウイルス感染症により影響を受けた契約者への特別取り扱いとして、保険料払込猶予期間の延長(最長6ヶ月間)が2020年3月に実施されました。
つまり、もし最長の6ヶ月間延長ということになれば、延長後の猶予期間の末日(2020年9月30日)までに、猶予期間6ヶ月分の保険料を支払えば、生命保険契約が継続できるということでした。
しかし、新型コロナウイルス感染症が社会に与えた影響が大きいため、さらに払込期間を延長して2021年4月30日までということになりました。ただし、すべての契約において自動的に払込猶予期間が6ヶ月延長されるという事ではありません。保険契約者が、自ら生命保険会社に申し出なければなりませんので、注意が必要です。
■ 特別措置には、保険金・給付金に対するものもあります。特約で入院給付金などをつけている方も多いと思います。新型コロナウイルスの場合、病院に入院できず、都道府県が設置した宿泊施設等に入居したり自宅療養せざるを得ないという現状があります。
こういう場合にも、特約で言う入院に当てはまる場合がありますので、契約先の生命保険会社に問い合わせをされると良いでしょう。
ところで、保険契約者の認知機能が低下した場合などに、家族が代わりにいろいろな手続を代行したいと思っても、どこの生命保険会社と契約しているのか分からないということがあります。加入先の生命保険会社がどこなのかを調べるために、生命保険各社に一つ一つ問い合わせるのは、大変な作業になります。
実は、日本生命保険協会に問い合わせれば、無料で協会が家族に代わって加盟全42社に問い合わせてくれるという制度があります。ただし、現在は災害救助法が適用された地域限定となっています。契約者が死亡したり、自宅が被災して保険証券などが確認できない場合を想定した制度です。それが、災害時でなくても調べてもらえる「契約照会制度」というものが2021年7月頃をめどに設けられることになっています。現在は問い合わせる家族の本人確認方法や費用などの詳細が調整されている段階だそうです。(災害時には、現行通り無料となる予定)
■ 2020年12月中旬現在、感染は拡大中にもかかわらず、一部の繁華街では人出が増えているという報道がありました。街頭インタビューではコロナ疲れという状況にあるように聞こえました。
しかし、残念ながら、ウイルスはウイルスの都合で増殖し、版図を拡大します。人間の希望や腹積もりや計画とは完全に無関係です。楽しい予定があるから、自粛生活に飽きたから、もうやけになったから等々、人間の側にどんな理由があろうと、ウイルスは容赦してくれないのです。
ところが、まずいことに人間の脳には「正常性バイアス」という認知のゆがみがあります。それは、「まさかそんな恐ろしい事は起こるまい」「私は大丈夫」という思い込みからものごとを見るので、たとえ現実には危険な状況の中にいても、そのことに気がつくことが出来ないということを指します。もちろん、正常性バイアスが起こりにくい人はいますが、そういう人の方が少数派です。
心理学の実験で、被験者が面接官が来るまで待たされている部屋に、ドアの隙間から白い煙(もちろん無害なものです)を吹き込んだ、というものがあります。ぱっと立ち上がって煙の原因を調べに行った人は、ほとんどいませんでした。
また、人間は何か判断するとき、周りの人の行動を参考にするということもよくやります。「○○という映画が評判になっているらしい。ものは試しだ、見てみよう。」といった具合です。 この2つの心理が組み合わされると、上記の実験が本当の火事であった場合、こんな事になる公算が大きいでしょう。
何か怪しいことが起きている・・・
↓
私:「でも、私は大丈夫」
↓
周囲の他の人達も「私は大丈夫」と思っているので、動かない。
↓
私:「ほら、周りの人も動かないじゃない。やっぱり大丈夫なんだ。」
↓
周囲の人達も私を見て同じように「ほらね、やっぱり大丈夫。」
↓
全員が手遅れになる・・・
このように、お互いがお互いを参照して反応を返すので、危機管理としては最低の悪循環になってしまいます。
しかし、たとえ認知のゆがみについての知識があっても、正常性バイアスは強力に働きます。また、そうでなくては、心配のし過ぎで心の健康を保てません。みんながみんな、杞憂の語源になった古代中国人のようだったら、人類はすでに絶滅しているでしょう。
つまり、言い古されたことですが、要はバランスです。ウイルスが示すような冷徹な現実の中に置かれているという自覚をもとに、現実に対して合理的に対処しつつも、根本的には、未来は明るいと捉える楽観的な構えでいるという両面作戦を遂行するしかありません。
生命保険は、人間の致死率は100%だという冷徹な現実の中で、自分個人を超えた未来(保険金の受取人になる家族)のために今行える現実的な対処の1つです。