税金・保険コラム

2021.12.21

雇用保険の教育訓練給付金

日本では感染状況が落ち着いてきた新型コロナウイルスですが、やっと旅行や外食ができるようになったと思ったところ、また新たに、南アフリカで発見された変異種オミクロン株が世界で拡大してきているとのことで、油断できない状況が続いています。

再度感染者が増えればさまざまなことがまた制限されてしまうので、感染が広がらない対策や今まで通りマスクの着用、密閉、密集、密接を避け、換気や手を洗って感染防止を続けないといけないですね。

さて、このような状況が続く中、テレワークの普及でパソコンを使いこなす知識が必要と感じたり、今の仕事の将来性を考えて転職や資格の取得を考えたり、新たなことにチャレンジしたいと思っているかたもいるでしょう。また、出産・育児で仕事を辞めてしまったかたが再就職するにあたり、何か知識を身に付けることで強みになることも。そんなとき、利用できないか検討して欲しいのが、雇用保険の「教育訓練給付金」の制度です。
今回は、雇用保険の「教育訓練給付金」について解説します。

教育訓練給付金の制度とは・・・

教育訓練給付金は、働く人が自主的に厚生労働省指定の教育訓練(全国で約14,000講座)の中から受講したいものを選び、実際に受講し修了した場合に、本人が支払った費用の一部が雇用保険から支給されるものです。「専門実践教育訓練」・「特定一般教育訓練給付金」・「一般教育訓練給付金」の3種類に区分けされています。
※昼間の「専門実践教育訓練」を受講する45歳未満の離職者に対しての「教育訓練支援給付金」や経費助成についての内容は今回割愛します。

教育訓練給付金を利用できる人は、基本的に雇用保険の被保険者なので、お勤めしている人、または勤めていた会社を離職して1年以内の人、妊娠・出産等の理由で離職後教育訓練を受講できる期間の延期が認められた人が対象となります。

なお、パート、アルバイトでも雇用保険に加入していれば対象になります。残念ながら、個人事業主や経営者、公務員、昼間学生など雇用保険の被保険者でない人は利用できません。

各制度の内容と利用できる人、訓練講座にはどのようなものがあるのでしょう?

受講開始日時点に、在職中で雇用保険に加入していれば給付対象です。また、離職してから1年以内※であり、期間内に受講開始日がある講座を選ぶことが必要条件です。
※ 妊娠、出産、育児、疾病、負傷などの理由により 適用対象期間の延長を行った場合は最大20年以内。

① 専門実践教育訓練給付金

主な目的: 中長期的キャリア形成(離職後が多い)
支給要件期間: 雇用保険の被保険者期間3年以上(初回は2年以上)
給付率と上限額: 受講費用の50%(年間上限40万円)が支給されます。受講終了後1年以内に資格取得等をし、かつ雇用保険の被保険者として雇用された場合は、受講費用の20%(年間上限16万円)が追加で支給されます。(最大70%。年間計56万・最長4年)
対象講座と対象講座の例: 全国で2,584講座(令和3年10月1日時点)※長期に渡す講座はほとんどが4月と10月開講。
  • 1. 業務独占資格・名称独占資格の取得を訓練目標とする養成施設の課程(原則1年~3年)
     看護師、介護福祉士、社会福祉士、歯科衛生士、保育士、美容師、柔道整復師、調理師 、キャリアコンサルタントなど 1,579講座
  • 2. 専門学校の職業専門実践課程(2年)及びキャリア形成促進プログラム(1年~2年未満)
     トリマー、ペットケア、医療事務、ホテル、ブライダル、自動車整備、調理師、製パン、ネットワーク、AIシステム、情報ビジネスなど690講座
  • 3. 専門職大学院・大学などの課程(2年~3年以内)
     MBA、法科大学院、教職大学院 など91講座
  • 4. 大学等の職業実践力育成プログラム(3ヶ月~2年)(文部科学大臣認定の特別の課程)
     認定看護管理者、看護士特定行為研修など136講座
  • 5. 高度情報通信技術関係資格取得
     シスコ技術者認定、情報処理安全確保支援士など3講座
  • 6. 第四次産業革命スキル習得講座(30時間以上2年以内)(経済産業大臣認定課程)
     データサイエンス、ウェブ開発、AIエンジニアなど85講座
  • 7. 専門職大学(4年以内)・専門職短期大学/専門職学科の課程(3年以内)(文部科学大臣認定)

受講期間:通学、通信により1か月~3年、管理栄養士のみ4年

② 特定一般教育訓練給付金

主な目的: 速やかな再就職と早期のキャリア形成。受講前にキャリアコンサルティングが必要。
支給要件期間: 雇用保険の被保険者期間3年以上(初回は2年以上)
給付率と上限額: 受講費用の40%(上限20万円)が支給
対象講座と対象講座の例: 全国で484講座(令和3年10月1日時点)
  • 1. 業務独占資格・名称独占資格・必置資格に関する養成課程またはこれらの資格取得を目標とする課程
     介護職員初任者研修、大型自動車免許、中型自動車免許、税理士、社会保険労務士、宅地建物取引士など467講座
  • 2. 情報通信技術資格取得を目標とする課程
     情報通信技術関係資格(シスコ認定・ITSSレベル2以上)、PMPなど4講座
  • 3. 短時間のキャリア形成促進プログラム及び大学の職業実践力育成プログラム
     特別の課程13講座

受講期間:通学、通信により1か月~12か月(短期のものが多い)

③ 一般教育訓練給付金

主な目的: 雇用の安定と再就職の促進。受講前にキャリアコンサルティングが必要。
支給要件期間: 雇用保険の被保険者期間3年以上(初回は当分の間1年以上)
給付率と上限額: 受講費用の20%(上限10万円)
対象講座と対象講座の例: 全国で11,177講座(令和3年10月1日時点)
公的資格や民間の職業資格の取得を目標とする講座など
  • ①情報関係
     パソコン技能検定、Word/Excel/PowerPoint技能検定、MOS、プログラミング能力認定試験検定、Webデザイナー検定など250講座
  • ②事務関係
     簿記検定、英会話、医療事務など405講座
  • ③専門的サービス関係
     社会保険労務士、税理士、司法書士、公認会計士、通関士、行政書士、FP、図書館司書など490講座
  • ④営業・販売・サービス関係
     宅地建物取引士、インテリアコーディネーター、調理師、ソムリエなど490講座
  • ⑤医療・社会福祉・保健衛生関係
     訪問看護員、介護福祉士、ケアマネ、管理栄養士、保育士など2,055講座
  • ⑥輸送・機械運転関係
     移動式クレーン運転士、大型自動車、フォークリフト、普通自動車など6,812講座
  • ⑦技術関係
     電気工事士、電気技術主任者、測量士、1級・2級建築士など355講座
  • ⑧製造関係
     技能検定など24講座
  • ⑨その他
     食品衛生管理者、PMS,修士・博士の学位などの取得を目標とする課程など585講座

受講期間:通学、通信により1か月~18か月。大学・大学院のみ24か月。

※1 支給要件期間は、前職等過去の被保険者期間との間が1年以内であれば通算可能。
※2 2回目以降の受講は再度支給要件期間が3年以上あることが必要。

受講から支給申請までの流れ

おしまいに

私自身も、転職前に離職して失業給付を受けながらパソコン講習を受講して検定を受けました。社会保険労務士の資格を取ったときにも雇用保険の制度を使って学校に行かせていただきました。今の自分があるのもこれらの制度のお陰ですから、本当にありがたいことです。
自分で必要だと思う訓練があったらぜひ受けてみてください。学び直しが人生の転機となることがあります。但し、時間もお金も掛かりますから、本当にこれをやってみたいという仕事に活かせるものをおすすめします。見つかったらぜひチャレンジしてみてください。

【参考】キャリア形成サポートセンター - キャリア形成サポートセンター(厚生労働省) (https://carisapo.mhlw.go.jp) 自分にどんな仕事が向いているのか、どんな教育を受けたらいいのか、キャリアについての相談が無料でできます。個人(在職中)の利用の他、企業や学校関係者の申し込みも可能です。

社会保険労務士
木村 晃子
さいたま総合研究所人事研究会 所属
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