2007.08.02
遺言・相続(3)遺産分割における「特別受益」について
さて、前回は、「遺留分」(いりゅうぶん)について記述させて頂きましたが、今回は遺産分割における「特別受益(とくべつじゅえき)」についてふれたいと存じます。
たとえば、被相続人がお父さん、相続人が4人の兄弟姉妹であると仮定致します。通常は、法定相続分として兄弟姉妹それぞれが4分の1ずつ相続することになりますね。
ところが、4人のうちで、亡くなった被相続人のお父さんから生前に特別な恩恵を受けていた人がいるとすれば、兄弟姉妹の相続分を均等にすると、かえって不公平になる場合があります。
その特別な恩恵を受けていたことを「特別受益」といいます。
遺産分割の話し合いをする際に、その点を考慮して、「特別受益」を受けていた人からその分は、相続分から「差っ引きますよ」という趣旨なのです。
それでは、どんなことが「特別受益」になるかと申しますと、以下の3つのケースがございます。
- 「生計の資本」によるもの
これは、たとえば兄弟姉妹のうち、長男だけがマンションを購入する際に、お父さんから頭金を出してもらったとか、次男だけが私立の医学部に進学させてもらったとか、長女だけがイギリスに2年間、留学させてもらっていたという場合です。 - 「婚姻・養子縁組」によるもの
次女が婚姻をする時や次男の他家への養子縁組の際に、多額の持参金を持っていったとか、高額な輿入れ道具を持たせてもらったという場合がこれに当たります。 - 「遺贈(遺言による贈与)」の場合
これは兄弟姉妹のうち、次男だけがお父さんから軽井沢の温泉つき高級別荘を遺贈されたといった例です。
特別受益の計算方法は、以下のようにします。
(例:相続財産の総額が4,500万円で、上記の例で長男だけがマンションの頭金をお父さんから500万円出してもらっていたと仮定します。)
相続財産に特別受益の額を加えて、相続人の数で割り、その額から長男だけ特別受益の金額を減算します。
4,500万円+500万円÷4人=1,250万円(これが長男を除く兄弟姉妹の相続分)
1,250万円-500万円=750万円(長男の相続分)
もっとも、遺産分割の話し合いの際に、特別受益は考えないで、「兄弟姉妹で平等に分けましょう!」という合意があれば、それでもかまいません。
小柴 正晴