2008.04.17
労災保険の基礎知識(2)仕事中の自動車事故(事故に巻き込まれた場合)
皆さん、こんにちは。
今回は、働く人が仕事中や通勤途中に交通事故に巻き込まれて負傷してしまったときの、治療費と休業中の保険給付についてご説明します。
1. 交通事故に遭ってしまったら・・・
保険給付の話しの前に、交通事故に遭ってしまったときに必要なことをまとめます。
そのときは何ともないと思っていても、あとで後遺症が出たり、家に帰ってみたら青あざができていたり、ということはよくあるものです。怪我が軽くても、必ず下記のことをしておきましょう。
- 安全な場所へ移動
- 救急車を呼ぶ又は呼んでもらい医師の手当て・診療を受ける
- 現場での二次被害を防止する
- 警察へ連絡する又はしてもらう
- 会社へ連絡する又はしてもらう(仕事中や通勤途中の場合)
- 相手方との双方確認をする
- 相手方車両ナンバー、氏名、住所、勤務先、連絡先、免許証番号等
- 相手方の加入している自賠責保険の保険会社名と保険証明書番号
- 相手方の加入している任意の自動車保険の保険会社名と保険証券番号
- 目撃者の情報確保(氏名、住所、連絡先等)
- 事故の経緯を覚えておき、可能であれば現場の写真を撮っておく
2. 怪我の治療費はどうすればいい?
業務上や通勤途中に被った怪我の場合、前回(2月21日掲載)ご説明した通り、労災保険への給付請求をすることができます。しかし、他人である相手方(第三者)のいる自動車事故となると、加害者側が加入する自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)へ保険金を請求することもできるのです(労災保険給付との調整あり)。
原動機付自転車(原付)を含むすべての自動車には、自賠責保険への加入が義務付けられており、自賠責保険には、被害者の救済と、加害者が負う経済的負担を補填するという目的があります。自賠責保険には、労災保険の給付にはない、慰謝料が支払われるなど、内容が手厚くなっているのです。
通常は、自賠責保険の支払限度額120万円までを優先して使いますが、相手方の自賠責保険や任意保険で補償を受けるか、会社の労災保険で給付を受けるかは、被害者自ら選択できることになっています。
3. 労災保険を使う場合や労災での治療を先行させたほうがいいケース
- 自分が負傷し被害者であっても、自分に重過失があって相手の自賠責が使えないときや自分の過失割合が大きく、自賠責の補償が減額されるとき
- 相手方の加害者が自賠責保険や任意保険に加入しておらず十分な補償を受けられない可能性があるとき
- ひき逃げされたなど相手が不明なとき
- 治療が長引きそうなとき
- その他、交渉が困難なときなど
4. 自賠責保険と労災保険の違い
自賠責保険と労災保険の治療費と休業に関しての給付を対比すると、以下のようになります。
5. 請求の時効
損害保険の請求は、2年で時効になるので、治療が長引いたり、話し合いがつかなかったりした場合は、注意が必要です。
労災の療養(補償)給付と休業(補償)給付の請求も、2年で時効となります。
なお、治療費等は、その費用が発生した日の翌日から、休業については、働けなかった日の翌日から、日々カウントします。
6. 4日以上会社を休んだときは、労災の請求も必要
自賠責保険の休業損害を受けた場合でも、労災保険の休業特別支給金(給付基礎日額の20%)は、受けられるので、忘れないよう会社に手続きをしてもらいましょう。
仕事や通勤に車を使っていて運転中に事故を起こし、自らも負傷してしまった場合等については、次回にご説明します。