2007.10.18
雇用保険の高年齢雇用継続給付
皆さん、こんにちは。
8月16日と8月23日のコラムでは、10月からの雇用保険法の改正について触れましたが、今回は、働く60歳以上の人を対象に支給される、雇用保険の「高年齢雇用継続給付」についてご説明します。
高年齢雇用継続給付の対象者
高年齢雇用継続給付は、雇用保険に一般被保険者として加入している60歳から65歳までの人で、60歳時点(※1)のそれまでの賃金と比べて、60歳以降の賃金が75%未満(※2)に下がった状態で働く人に対して支給されます。
ただし、60歳以降に支払われた賃金が、月額339,235円を超える場合は、生活するに足りる収入があると解され、支給されません。また、賃金と給付金を合算した額が、月額339,235円を超える場合は、339,235円と賃金額の差額が、給付金として支給されます。
また、給付金として算定された額が、月額1,656円以下のときは、給付をしても効果が少ないとされ、支給されません。
【表】給付金額を算定する際の上限額と下限額(平成19年8月1日現在)
60歳時点(※1)賃金月額 | 60歳以降支払われた賃金月額 | |
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上限額 | 451,800円 | 339,235円 |
下限額 | 62,100円 | 1,656円 |
※これらの額は、毎年8月に変更される予定です。
高年齢雇用継続給付の対象者
高年齢雇用継続給付には、60歳以降基本手当(失業給付)を受けずに働いている人で、賃金が下がった人に支給される「高年齢雇用継続基本給付金」と、基本手当(失業給付)を受け、残日数が100日以上ある状態で、60歳以降に再就職した人に支給される「高年齢再就職給付金」の2種類があります。
それでは、2種類の給付金の概要を見ていきましょう。
1.高年齢雇用継続基本給付金
対象者 | 以下1.~3.を全て満たす人
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支給対象 期間 |
60歳に達する月から65歳に達する月まで(各暦月の初日から末日まで被保険者である月に限る) |
賃金低下率 と支給額 |
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※1)60歳時点で、雇用保険の被保険者であった期間が5年未満の場合は、雇用保険に加入していた期間が5年となった月を60歳時点とみなし、その月から、この給付金の支給対象期間となります。(この場合であっても、給付金の支給は、65歳に達する月をもって終了となります。)
※2)平成15年5月1日前に60歳に到達し、かつ高年齢雇用継続給付の受給資格の要件を満たしていた場合(旧制度対象者)については85%未満となっています。
60歳時点の賃金:40万円
60歳以降の賃金:24万円
賃金低下率:60%
高年齢雇用継続給付:36,000円
2.高年齢再就職給付金
対象者 | 以下1.~5.を全て満たす人
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支給対象 期間 |
60歳以降の再就職した日の属する月(再就職日が月の途中の場合はその翌月)から以下の期間。ただし、65歳に達する月が限度。
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賃金低下率 と支給額 |
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年金との調整
特別支給の老齢厚生年金(在職老齢年金)を受けている人は、高年齢雇用継続給付を受けている期間について、年金の方が6%を限度に支給調整される場合があります。
高年齢雇用継続給付の申請先
会社の所在地を管轄するハローワークですので、詳細は、ハローワークまたは会社の人事ご担当者へお問い合わせください。
今年2007年は、団塊世代が60歳に達し、大量退職が始まる年として、世間にクローズアップされました。
企業の人手不足を引き起こす問題もさることながら、法律上の定年が60歳であるにも関わらず、年金の支給開始年齢は段階的に引き上げられており、年金だけで生活することは困難です。
そこで、平成18年4月施行の高年齢者雇用安定法の改正では、企業に対し、「定年年齢の引き上げ」、「継続雇用制度の導入」(再雇用または勤務延長)、「定年の廃止」のいずれかを導入するよう義務付けました。
企業としては、人件費の増大は避けたいし、若い人も採用したい。調査によれば約9割の企業が、再雇用による「継続雇用制度」を選択しているということです。
再雇用される場合は、賃金が下がることが多いので、この給付金の対象とならないかの確認が必要です。
多少の個人差はあるのかもしれませんが、今の60歳は、まだまだ若く、働きざかり。
経験豊富な知識を生かして、ますます活躍していただきたいものです。