税金・保険コラム

2024.05.21

社会保険の適用拡大(4)(令和6年10月から常時50人超の事業所で働く短時間労働者が対象に)

皆さん、こんにちは。令和6年10月から、社会保険(健康保険と厚生年金保険)加入対象となるパ―ト・アルバイト等の短時間労働者の枠が更に広がります。対象事業所の規模について、社会保険の被保険者数が常時101人以上だったところ、常時51人以上の事業所に変更されます。該当する事業所で働くパート・アルバイト・嘱託社員等で加入条件に当てはまる短時間労働者の人は、今年10月から社会保険に加入することになります。
今回は、令和6年10月からの短時間労働者の社会保険の適用拡大について解説します。

1. 令和6年10月から社会保険加入対象となる短時間労働者

事業所規模、常時51人以上の被保険者がいる「特定適用事業所」にお勤めで、以下の4つの条件全てに当てはまる人が加入対象です。

  1. ①週の所定労働時間が20時間以上
  2. ②雇用契約期間2か月超の見込み
  3. ③賃金月額88,000円以上
    ※通勤手当、残業代、家族手当、通勤手当など最低賃金に含まれない賃金はこれに算入しない。
  4. ④昼間学生ではない

※常時51人以下の事業所でも、勤め先が「任意特定適用事業所」になっている場合は、短時間労働者も加入対象です。

2. 適用拡大対象の「短時間労働者」と、常勤者の3/4要件を満たす「パート労働者」の違いは?

パート・アルバイトで、勤務先の正社員と比較し1週および1か月の所定労働日数が3/4以上の人は、そもそも社会保険の加入対象になっています。

3/4要件を満たすパート・アルバイト(以下、「パート労働者」といいます)と、適用拡大対象となる「短時間労働者」に大きな違いはありません。保険料の見直しの際の勤務日数の基準が異なります。

(1)定時決定(算定基礎)

年1回、4月から6月の3か月間に支給される給与の平均額で、9月分以降の社会保険料の見直しを行うことになっています。

  1. ①「パート労働者」の場合、原則、勤務日数が17日以上の月の平均で決定します。もし17日以上勤務した月がなければ15日以上の月の平均、3か月とも15日未満しか働いていなければ従前の保険料の等級のままとなります。
  2. ②適用拡大対象の「短時間労働者」の場合は、勤務日数が11日以上の月でみるという算定基準の違いがあります。

(2)随時改定(月額変更)

固定給の変動(時給や通勤手当・諸手当の変更等)や給与体系の変更(時給から日給・月給等になる等)があった場合、変動があった月から3か月間の平均が従前の保険料の等級より2等級以上差が出る場合、保険料を見直します。

  1. ①「パート労働者」は、3か月とも17日以上働いていないと随時改定とはなりません。
  2. ②適用拡大対象の「短時間労働者」は、3か月とも11日以上働いていれば随時改定となります。

どちらも勤務先の会社が手続きを行いますので、本人が特に何かする訳ではありません。

3. 社会保険料の個人負担はいくらか?

健康保険料と介護保険料は、勤務先の事業所が加入している保険者(健康保険組合・全国健康保険協会都道府県各支部)で、それぞれ保険料率が異なります。

健康保険料は5%前後、介護保険料(40歳~64歳)は0.8%前後、厚生年金保険料は全加入者共通で9.15%となっています。

正確には事業所が加入する保険者の標準報酬月額保険料額表によります。

※出典:全国健康保険協会ホームページ

なお、社会保険に加入すると、保険料の負担が生じるだけではなく、いざというときに、健康保険の給付が受けられたり、厚生年金に加入するので年金が少し増えたり、勤務先が半分保険料を負担してくれて保障が手厚くなりますので、備えと捉えればデメリットばかりではないことに注目しておかなければなりません。

おしまいに

将来的には、会社の規模に関わらず週20時間以上等の条件に当てはまる「短時間労働者」に該当する人は、社会保険に加入することになっていくのでしょう。男性の育児参加はまだまだですが、保育園にもだいぶ入りやすくなり、退職せず育児休業から復帰し働いている女性も本当に増えています。個人的には、時代も激変しているので、扶養の特権である、「国民年金第3号の被保険者」というのは、介護や子供の世話等でどうしても専業主婦(主夫)にならざるを得ない人くらいにしてもいい気がします。誰もが納得できる制度改正にすることで、日本の未来が明るく保てるといいですね。

ちなみに、経済産業省では、働いている人が家事支援サービス(いわゆる家事代行)を使うと、子育てや介護と仕事の両立、仕事を継続しやすい環境整備として、どれくらい効果があるのか、補助金を使って実証事業を行うそうです。応募した中堅企業向けに、福利厚生として使ってもらい効果を確認するというもの。
このようなサービスがもっと気軽に使えるように普及していくといいですね。

社会保険労務士
木村 晃子
さいたま総合研究所人事研究会 所属
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