2019.11.26
「れいこ先生のやさしい年金」(15)「年金生活者支援給付金」について
10月から消費税率が引き上げになりました。増税分は社会保障に使われるとのことですが、具体的にどのように使われるのか、関心を持っている方も多いかと思います。今回は、増税分を財源とした新しい制度「年金生活者支援給付金制度」のお話です。
この制度は公的年金制度ではありませんが、公的年金の受給額が少ない人に対し年金に上乗せして支給するものです。支給事務等については日本年金機構が行います。この制度の概要と受給時の注意点等についてQ&Aでご紹介します。
1.制度の概要
Q1. 年金生活者支援給付金(以下、支援給付金と記載)とはどのようなものですか?
A1. 支援給付金は、公的年金を含めても所得が低く(=所得基準額以下)、経済的な援助を必要としている人に対して、年金に上乗せして支給されます。年金と同様に偶数月の年金支払日に支給されます。支援給付金の財源は、消費税が当てられ、制度は消費税10%引き上げの令和元年10月1日から施行されました。
支援給付金には、次の4つの種類があります。
〇 老齢年金生活者支援給付金
〇 補足的老齢年金生活者支援給付金
〇 障害年金生活者支援給付金
〇 遺族年金生活者支援給付金
Q2. 老齢年金生活者支援給付金は、具体的にはどのような人が支給対象になりますか?
A2. 老齢年金生活者支援給付金は、次のすべての要件に該当する人に支給されます。なお、日本国内に住所のない人、繰下げ受給の待機者は対象外です。
① 65歳以上で老齢基礎年金の受給権者である
② 前年の公的年金等の収入金額とその他の所得(給与所得・利子所得等の)との合計額が老齢基礎年金の満額相当額(令和2年度は779,300円。毎年度老齢基礎年金の額を勘案して改定)以下である
③ 同一世帯全員の市町村民税が非課税である
2.支援給付金の額
Q3. 老齢年金生活者支援給付金は、どのように計算されますか?
A3. 老齢年金生活者支援給付金の月額は、次に掲げる①と②の額を合算した額となります。
① 保険料納付済期間に基づく給付額
5,000円 (※1)×保険料納付済月数(※2)/480月(※3)
② 保険料免除期間に基づく給付額
約10,800円(※4)×保険料免除月数/480月
(※1) 毎年物価スライドにより4月に改定されます。令和元年度では月額5,000円(年6万円)
(※2) 20歳未満60歳以後の国民年金第2号被保険者期間は除きます。
(※3) 昭和5年4月1日以前生まれの人は480月を加入可能年数に読替えます。
(※4) 全額、1/2、3/4保険料免除期間については、約10,800円。1/4免除期間については、約5,400円となります。学生納付特例期間は除きます。
(※5) 老齢年金生活者支援給付金は非課税です。
● 計算例
すべて月額での計算です。
① 保険料納付済月数が480月の人
5,000円×480月/480月=5,000円
② 保険料納付済月数が360月、全額免除月数120月の人
5,000円×360月/480月=3,750円
10,800円×120月/480月=2,700円
合計 3,750円+2,700円=6,450円
3.支援給付金の請求
Q4. 年金生活者支援給付金を受け取る手続きはどうすればよいのでしょうか?
A4. 日本年金機構は、平成31年4月1日時点で年金を受給している、給付金の対象者に、簡易なハガキ形式の給付金請求書を送付しています。給付金を受け取るためには、この請求書を提出しなければなりません。
ここで、注意しなければならないことがあります。それは、請求が遅れて令和2年1月1日以後になると、支援給付金の支払いが請求日の翌月分からとなり、令和元年10月から令和2年1月までの4ヵ月分が受給できなくなります。請求した日と支払日の関連は、次のようになります。
なお、新規に老齢基礎年金を請求する人、特別支給の老齢厚生年金の受給者で65歳に達した人等には、年金請求書の送付時に支援給付金の請求書も送付されます。年金請求書と併せて提出し、要件を満たせば、支給決定通知書が送付され、支援給付金が支払われます。
Q5. 老齢年金生活者支援給付金以外の支援給付金の要件を教えてください
A5. 老齢年金生活者支援給付金以外の給付として、補足的老齢年金生活者支援給付金、障害年金生活者支援給付金、遺族年金生活者支援給付金があります。
それぞれの要件は、次のようになっています。
●補足的老齢年金生活者支援給付金
・65歳以上で老齢基礎年金を受けている
・世帯全員が市町村民税非課税である
・前年所得額(公的年金等の収入金額と前年の所得との合計額)が,779,300円(所得基準額)を超え879,300円(補足的所得基準額)以下である
●障害年金生活者支援給付金
・障害基礎年金を受けている
・前年の所得額が4,621,000円以下である
●遺族年金生活者支援給付金
・遺族基礎年金を受けている
・前年の所得額が4,621,000円以下である
4.支援給付金の相談事例
【世帯分離したらどうなる?】
Q6. 私は66歳で老齢厚生年金(年額約7万円)老齢基礎年金(年額約47万円)を受給しています。長女と二人暮らしでしたが、この度長女が結婚して独立するので、私は一人暮らしになります。長女は、会社員で住民税課税対象者です。私は、支援給付金が受け取れるようになるのでしょうか?
A6. 公的年金等の収入金額の合計額が120万円までの場合は、所得金額は0円となります。相談者の収入額は、所得額は54万円で120万円までのため、住民税非課税者です。現在は、同一世帯の娘さんが住民税課税対象者であるため、相談者は支援給付金を受給できません。しかし、娘さんが別世帯になる(世帯分離)と、相談者は住民税非課税世帯となります。また、前年所得額も支援給付金の所得基準額(779,300円)以下なので、老齢年金支援給付金受給の要件に該当し、老齢年金支援給付金が支給されます。
【繰り上げ・繰り下げ受給をした場合】
Q7. 繰り上げ受給や繰り下げ受給は、支援給付金に影響がありますか?
A7. 繰り上げ請求をすることで、支援給付金がもらえなくなるケースや、繰り上げ請求をしても支援給付金がもらえるケース、また、繰り上げ受給をすれば補足的支援給付金がもらえるケースもあります。
老齢基礎年金を繰り下げている間は、支援給付金は支給されません。繰り下げ受給の申し出をした時点で支援給付金の要件に該当していれば、その時点からの請求ができます。
繰り上げや繰り下げ受給を希望する場合は、年金事務所で相談する際に支援給付金についても合わせて相談されることをお勧めします。