2020.03.24
国民年金について
社会保険労務士の土屋です。今回もみなさんにとって関心の高い年金についてお話しさせていただきます。今回は国民年金についてです。
自営業者の方や学生やパート・アルバイト等で働く方で日本に住所を有する20歳以上60歳未満方は国民年金に加入する義務があります。
国民年金の保険料は月額16,410円(令和1年度価格、令和2年度月額16,540円)です。20歳~60歳まで40年間保険料を納付すれば、65歳から老齢基礎年金780,100円(令和1年度価格)が受給できます。老齢基礎年金の年金額は老齢厚生年金とは違い、納付した定額の保険料に応じて年金額が計算されます。なお、平成29年8月からは10年以上の受給資格期間(保険料納付済期間・免除期間・合算期間を合計した期間)を満たせば、老齢基礎年金を受給できますが、納付をした保険料(または免除期間)に応じた年金を受給することになります。
また、国民年金の被保険者(第1号被保険者)は国民年金保険料とは別に付加年金(月額400円を納付し、老齢基礎年金受給時に200円×月数に応じた付加年金を受給する)に加入することや、国民年金基金に加入し受給額を増やすこともできます。
収入の減少や病気や失業等で国民年金の保険料の納付が難しい場合
事業がうまくいかず収入が減少したときや、病気や失業等の理由で、国民年金の保険料の納付が一時的に困難になった場合には、申請することによって保険料の納付を免除することができます。
免除には全額免除、半額免除、4分の1免除、4分の3免除があります。全額免除は保険料納付が全額免除になり、免除期間については本来の納付期間の2分の1として年金計算されます。半額免除は保険料の半額が免除になります。ただし、半額免除・4分の3免除・4分の1免除については、免除された以外の保険料について納付しなければ、免除期間とはされませんので、注意が必要です。
なお、免除が認められた期間については、追納をしない限り、免除した期間については下記の表のように年金計算されます。
※平成21年4月から国民年金への国庫負担が3分の1から2分の1に引き上げられたことにより、平成21年4月以降と平成21年3月までとは異なる計算をします。納付済期間と免除期間の合計月数が480月を超えた場合、超えた月数については、別途定められた乗率を掛けて年金額が計算されます。
免除申請の手続きは居住地を管轄する年金事務所または市区町村で行えますが、免除を受けるためには厚生労働大臣の承認が必要です。また、免除を受けた期間については、手続き後10年経過前であれば、免除された保険料を納付することによって、本来の納付済期間とすることもできます。
免除申請は本人並びに同じ世帯の家族の収入が一定の条件に該当することが必要
免除申請の手続きを行うためには、本人並びに同じ世帯に属する家族の収入が一定の条件に該当する必要があります。それぞれの基準は以下の通りです。
●保険料全額免除(下記要件に該当する方が申請をすることによって認められます。)- 保険料を納付することを要しないものとすべき月の属する年の前年(1~6月の申請は前々年)の所得が、その人の扶養親族等の有無及び数に応じて政令で定める額以下(下記表を目安に認定されます。)であるとき
※免除申請は7月~6月が対象年度(学生納付猶予は4月~翌年3月が対象)になり、納付月から2年まで遡及して手続きができます。なお、審査対象の所得については、たとえば、令和1年7月~6月までの免除申請については平成30年中の所得が対象になりますが、令和2年7月~6月の申請を今年の6月までに手続きする場合、令和1年の所得情報を日本年金機構や市町村では確認できない為、平成30年の所得が審査対象になります。 - 被保険者または被保険者の属する世帯のほかの世帯全員が生活保護法による生活扶助以外の扶助を受けるとき
- 地方税法に定める障害者であって、年間所得が125万円以下であるとき
- 地方税法に定める寡婦であって、年間所得が125万円以下であるとき
- 上記以外の理由により保険料を納付することが著しく困難であると認めるとき
20歳以上の学生で国民年金の保険料の納付が難しい場合
大学生や専門学校生の方であっても20歳に到達すれば、日本に住所を有する以上、国民年金への加入義務が発生します。国民年金の保険料を納付すれば、その分だけ老齢基礎年金の受給額を増やすことができますが、「学生納付特例」の手続きを年金事務所または市区町村等で行えば、納付を猶予することもできます。納付を猶予した期間については、年金額の計算期間とはされませんが、未納期間のままにしておくと、傷病や怪我等で障害の状態になった場合に障害年金を受給できない等の不利益が生じてしまうこともあります。20歳に到達し、国民年金の保険料をとりあえず納付しない場合には、必ず手続きをするようにしてください。なお、猶予した期間については、手続き後10年経過するまでなら、追納(猶予された保険料を支払い年金額を増やす)することもできます。
また、令和7年6月までの間の時限制度ですが、50歳未満の第1号被保険者本人とその配偶者で一定の条件を満たす場合で、申請し認められた場合には保険料の納付を猶予することができます。
なお、学生納付特例を受けるためには下記の要件を満たす必要があります。
※保険料は全額免除になりますが、猶予された期間は追納しない限り年金の計算に反映されません。
- 保険料を納付することを要しないものとすべき月の属する年の前年(1~6月の申請は前年)の所得が、118万円(年収約195万円)以下であるとき
- 全額免除の要件の2・3・4に該当するとき
- 天災その他厚生労働省で定める事由により保険料納付が困難と認められるとき
第1号被保険者の産前産後期間の保険料免除について
厚生年金の被保険者の方が産前産後の休暇を取得した期間については、厚生年金保険料が免除になりますが、第1号の被保険者が妊娠した場合、産前産後期間の保険料については免除を受けることができます。
- 産前産後の保険料免除の取り扱い
出産予定日(産後に手続きするときは、出産の日)の属する月の前月(多胎妊娠の場合は3ケ月前)から当該月の翌々月までが免除。 - 出産日が平成31年2月以降の被保険者が対象。任意被保険者は該当しません。
- 妊娠85日(4ケ月)以上の出産(死産、流産、早産含む)が対象
- 出産予定日の6ケ月前から申請が可能です。提出先は住所地の市区町村の年金課または住所地の年金事務所です。
- 出産後でも免除申請はできます。認定後納付した保険料は後日還付されます。
障害基礎年金の受給権者や一定の要件に該当した場合は法定免除
下記の要件に該当する方は「法定免除」といい、法律上当然に該当する期間の保険料納付が免除されます。(申請手続きは不要です。)
- 障害基礎年金等の受給者(障害等級3級より軽くなって3年を経過した受給権者を除く)
- 生活保護法による生活扶助を受けているとき
- 国立のハンセン病療養所等に収容されているとき
厚生年金の被保険者は国民年金の第2号被保険者
厚生年金に加入する方は国民年金保険料を納付する必要はありません。厚生年金制度が基礎年金拠出金として国民年金の財政に支出していますので、65歳から老齢基礎年金(国民年金)を受給できます。厚生年金の被保険者の方(65歳未満の方、65歳以上70歳未満で老齢基礎年金の受給権のない方、10年の受給資格期間を満たさない方)を国民年金の第2号被保険者と呼びます。
また、厚生年金の被保険者に扶養される配偶者(60歳未満の方)は国民年金の保険料を納付する義務がありませんが、厚生年金の被保険者の扶養とされた期間(第3号被保険者期間)についても、65歳から老齢基礎年金(国民年金)を受給できます。この配偶者の方を国民年金の第3号被保険者と呼びます。
当然のことですが、国民年金から老齢基礎年金を受給するためには、受給資格を満たす必要があります。平成29年8月からは10年の受給資格を満たせば、65歳から老齢基礎年金を受給できます。また、希望すれば、様々なデメリットがありますが、60歳~65歳の間に繰り上げて受給することも可能です。
保険料の納付方法
第1号被保険者の国民年金保険料は、原則として当月分を翌月末までに納めなければなりません。納付の方法は、口座振替、クレジットカード、納付書による金融機関、郵便局、コンビニエンスストアでの納付、MMK端末を設置しているドラッグストア、スーパー、病院内売店、金融機関での納付のほか、インターネットを利用した電子納付が可能です。
また,保険料を前納することもできます。前納方法は2年前納、1年前納、6カ月前納、年度途中の前納、毎月前納があります。前納の期間に応じて、保険料が割引されます。
手続きの方法については、期限もありますので、市区町村の年金課または日本年金機構(年金事務所)で確認していただくようお願いいたします。
第1号被保険者が死亡した場合に受給できる年金(一時金)
第1号被保険者が死亡した場合、満18歳未満の子または20歳未満の障害のある子をもつ妻、または18歳未満の子、20未満の障害のある子に遺族基礎年金が支給されます。
また、第3号被保険者が死亡した場合、その夫に満18歳未満の子または20歳未満の障害のある子がいる場合にも遺族基礎年金が支給されます。受給できる期間はすべての子が満18歳到達後最初の年度末までです。
また、国民年金の保険料を3年以上納付した方が、老齢基礎年金・障害基礎年金を受けずに死亡したとき、生計を同じくしていた遺族に死亡一時金が支給されます。受給できる遺族は死亡した人の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹であって、その人の死亡当時その人と生計を同じくしていた人です。
※3年以上付加保険料を納付した人が死亡した場合には、8,500円が加算されます。
また、国民年金保険料納付済期間が10年以上ある方が老齢基礎年金・障害基礎年金を受けないまま、死亡したとき、10年以上の婚姻期間のある妻は60歳から65歳の間、寡婦年金を受給することができます。なお、寡婦年金は死亡一時金との選択受給になります。