2008.03.27
読者からの素朴な相談(4)在職老齢年金
全国各地から桜の便りが伝えられ、新入社員の初々しい姿は街に活気をもたらしてくれます。また、長かった現役から開放され、退職後、第二の人生を頑張ろう、セカンドライフを楽しみたい、と思っていらっしゃる方も多いことでしょう。それぞれに明るい表情に気づく今日この頃です。
今月号も続く「読者からの素朴な相談」シリーズは、"まだまだ若い!働きたい!働かなくちゃ食べられない!"そんな思いで第二の人生を迎える方へ「在職老齢年金」について掲載します。是非参考にしていただきたいと思います。
在職老齢年金
Q1:マスコミの報道や友人の話しで、60歳以降の年収が多いと年金がカットされると聞きました。せっかくかけてきた年金なので全額受け取りたいと思っています。いくらくらいの給料で再就職すればよいのでしょうか?
A1:よく受ける質問ですが、誤解の多い部分でもあります。働くと年金がカットされるしくみを「在職老齢年金」といいます。このしくみについて説明しましょう。
年金のカットは厚生年金に加入している場合のみ
まず大事なことは、年金のカット(=支給停止)は、厚生年金に加入して働く場合に行われ、厚生年金に加入しない場合は年金は全額受け取ることができるという点です。
たとえば、60歳以後、サラリーマンから自営業に転身すると厚生年金には加入しません。このような場合は、収入額にかかわらず、年金は全額支給されます。
会社に勤める場合でも1日の労働時間又は1ヶ月の労働日数のいずれかが正社員の3/4未満であれば厚生年金に加入しません。この場合も給料の額にかかわらず、年金の支給停止は行われません。
在職老齢年金が適用される期間は
在職老齢年金は、65歳未満の間と65歳以上の働く間の2つの期間に分けて、計算方法が定められています。厚生年金は70歳に到達した時点で資格を喪失しますので、保険料の納付は終了します。しかし、その後も働く限り、在職老齢年金のしくみによる年金のカットは続きます。なお、65歳以後の在職老齢年金は老齢厚生年金部分のみが対象で、老齢基礎年金は全額支給されます。
65歳未満の間の在職老齢年金の考え方
在職老齢年金の支給額を決定するのは次の3つです。
- 年金月額
- その月の標準報酬月額
- その月以前1年間の標準賞与額の合計額の1/12
この3つの合計額が28万円を超えると、超えた額の1/2が支給停止になります(ただし、年金月額≦28万円かつ②+③の合計≦48万円の場合)。
4月の支給額=①-(①+②+③-28万円)×1/2
4月の年金月額(①)
4月の標準報酬月額(②)
4月を含む過去1年の標準賞与額の合計の1/12(③)
※「月」は、在職老齢年金を受給する「月」に読み替える。たとえば6月には4月をすべて6月と読み替える。
※65歳以後は、28万円を48万円と読み替える。
では具体的に次の事例で検証してみましょう。
Q2:M夫さんは会社員、60歳誕生日(3月27日)に退職後、同日から関連会社に再就職を予定(厚生年金加入)。65歳の誕生日前の3月末まで働きたいと考えています。M夫さんの再就職後、年金がカットされないようにするためには、いくらの給料にするとよいのでしょうか?
- 退職後の年金月額(①):特別支給の厚生年金の報酬比例部=約120万円/年額(月額約10万円)
※社会保険庁からの見込み額通知あり - 再就職時の標準報酬月額(予想)(②):約15万円/月額・賞与なし
- 過去1年の賞与額の合計の1/12(③):計算する月から12ヶ月分さかのぼり該当する支給額の合計を12で割る
※支給額:平成19年6月84万円/平成19年12月120万円
A2.M夫さんは、3月に60歳になるので、年金の支給は4月分からとなります。また再就職が3月のため、4月から在職老齢年金として支給されます。では、各月の支給額を見てゆきましょう。
- 4月の支給額=①10万円-(①10万円+②15万円+③17万円-28万円)×1/2=3万円
退職直後の4月は在職中の高い賞与が影響するために、年金は3万円のみの支給となります。 - 6月の支給額=①10万円-(①10万円+②15万円+③10万円-28万円)×1/2=6.5万円
6月になると過去一年間の賞与の合計額に昨年の6月分の賞与が含まれなくなり、年金の支給額がアップします。 - 12月の支給額=①10万円-(①10万円+②15万円+③0円-28万円)×1/2=10万円(全額支給)
12月になると過去一年間の賞与の合計額に昨年の12月分の賞与が含まれなくなり、年金は全額支給となります。
年金が支給されるための給料の目安については、過去1年の賞与の合計額の1/12と年金額が影響するため、ケースごとに違ってくることがお分かりいただけたでしょうか。
なお、個別のご相談は、社会保険事務所相談窓口へお問合せください。