2008.08.28
読者からの素朴な相談(9)繰上げ受給の注意点
厳しい残暑が続いていますが、お変わりありませんか?
この時期、五感をめいっぱい働かせて、秋のかすかな気配を探すのが、私の恒例行事です。朝夕の一筋の涼風、昨日とは違うちょっと高い青空、雲の形、桃が終わってブドウが並ぶ店頭・・・などなど。
あまりの暑さに、早く終わってほしい夏でしたが、秋への移り変わりを感じると一抹のさびしさを感じます。
年金の「繰上げ受給の注意点」
今回のテーマは、繰上げ受給の注意点です。繰上げ受給とは、65歳から受け取る老齢基礎年金を60歳以上65歳に達するまでの間の希望する時期から受給することができる制度ですが、請求をする際は、次のような注意点があります。場合よっては、繰上げ受給をすることで、不利になることもありますので、慎重に検討しましょう。(参考コラム:読者からの素朴な相談(8)年金の繰上げ受給)
- 一生減額
減額率は、繰上げ請求の時期で決められており、その減額率は一生続きます。時々、「65歳になると100%に戻るのですよね」といわれることがありますが、そうだとすれば、皆さん繰上げ請求しますよね。
また、一度繰上げ請求すると、取り消しはできません。 - 障害の保障
繰上げ請求後は、原則として障害に対する保障がなくなります。
障害基礎年金は、65歳に達する日の前日までに初診日のある病気・ケガで、障害の状態になったときに支給される年金です。「老齢基礎年金の繰上げ請求」=「65歳到達」とみなされますので、繰上げ請求をすると65歳以後と同じ取り扱いとなり、障害に対する保障がなくなるのです。 - 遺族の保障(遺族厚生年金の受給権が発生した場合)
厚生年金の加入期間のある夫が死亡した場合、要件を満たしていれば、妻に遺族厚生年金の受給権が発生します。
しかし妻が老齢基礎年金の繰上げ受給をしていた場合は、遺族厚生年金と繰り上げた老齢基礎年金は、65歳までの間は両方受給することができません。どちらか一方の選択になりますが、ほとんどの人が、「遺族厚生年金>繰上げた老齢基礎年金」となるため遺族厚生年金を選んでいます。
65歳以後は、遺族厚生年金と老齢基礎年金は併給されますが、この場合の老齢基礎年金は、繰上げにより減額された老齢基礎年金です。その結果、繰上げをしない方が良かったというケースもあります。ただし、寿命は誰にもわかりませんので、結果論となりますが・・・ - 寡婦年金 (死亡した夫が寡婦年金の要件を満たしている場合)
寡婦年金は、次のような夫が亡くなったときに妻に支給される年金です。
国民年金の第1号被保険者(65歳未満の任意加入被保険者も含む)としての保険料納付済期間と保険料免除期間等が合計で25年以上ある ・障害基礎年金を受ける権利を持っていたり老齢基礎年金を受給していなかったこと つまり、死亡した夫が老齢基礎年金を繰上げ受給していた場合は、妻に寡婦年金を残すことはできません。 また、妻が老齢基礎年金を繰上げ受給していた場合は、夫が残した寡婦年金を受給することはできません。 また、死亡一時金についても死亡した夫の要件が、「障害基礎年金・老齢基礎年金を受給したことがないこと」となっています。そのため、繰上げ受給をしていた夫は、死亡一時金も残すことができません。
繰上げ受給の注意点
- 年金額は、繰上げ請求をする時期に応じて減額され、受給率は一生変わりません。
- 繰上げ請求後に障害になっても、原則障害基礎年金は受給できません。
- 遺族厚生年金は、65歳になるまで併給されません。
- 繰上げで老齢基礎年金を受給している方が遺族厚生年金を受給できるようになっても65歳まではどちらか一方しか受給できません。
- 65歳以後は併給されますが、老齢基礎年金は減額されたままの金額です。
- 寡婦年金は受給できません。
- 繰上げをしていた夫が死亡した場合は、寡婦年金は発生しません。
- 繰上げをしている妻は、寡婦年金が受給できません。