2008.11.27
読者からの素朴な相談(12) 厚生年金の「標準報酬月額の改ざん問題」
クリスマスイルミネーションがロマンティクな輝きを放ち、通りかかった私たちの心を華やかにしてくれます。サンタクロースがいると信じることができた子供時代が懐かしいですね。
さて、ねんきん特別便の送付が完了したと思うまもなく、また新たな問題が注目されています。「厚生年金の標準報酬月額の改ざん問題」です。今回は、この問題ついて解説します。
A1:標準報酬月額とは、厚生年金の保険料の額と年金や一時金の額を計算する基となるもので、1等級(98,000円)から30等級(620,000円)迄に区分されています。標準報酬月額の決定方法は、次の3種類です。
- 被保険者となった時の取得時決定
- 毎年、4, 5, 6月の3ヶ月の給与の平均値をもとに9月分から改定される定時決定
- 昇給、降給によるなど報酬に著しい変動があったときに行われる随時改定
標準報酬月額の対象となる報酬には、賃金・給料・手当等いかなる名称であっても、労働者が労働の対償として受け取るものは、全てが含まれます。通勤交通費はもとより、例えば、単身赴任先で寮に入所した時や会社の社員食堂で昼食等が支給される場合は、現物給与として一定の金額を標準報酬月額の金額に加算することもあります。
A2:給料等を引き下げた事実が無いにもかかわらず、社会保険事務所の関与のもとに、事業主が社員本人に無断で給料を引き下げたという届出を行い、標準報酬月額を低く改定することを言います。具体的には、次の3つの要件すべてに該当している記録で、社会保険庁によると約6万9,000件あるということです。
- 標準報酬月額の引き下げられた日または翌日に資格喪失をしている
- 五等級以上(現行では約15万円)さかのぼって標準報酬月額が引き下げられている
- 6ヶ月以上さかのぼって標準報酬月額が引き下げられている
A3:標準報酬月額は、年金額の計算の基礎となる重要な数字です。これが実際よりも低い金額になっていると、本来受給できる年金より、低額の年金となります。
A4:標準報酬月額の改定については、事業主には通知されるものの、被保険者本人には通知されません。これら改ざんのケースでは給料から源泉徴収する保険料は、従前のままになっており、ご本人が社会保険事務所で確認しないかぎりわかりません。
A5:簡単に言えば、経営の苦しい事業主と、保険料の収納率を問われる社会保険事務所の両者にとって、都合のよい対応だったからといわざるを得ません。
厚生年金の保険料は標準報酬月額×15.35%(一般の被保険者)の額を会社と本人で折半負担します。標準報酬月額を引き下げれば、事業主の納付する社会保険料も負担軽減となります。経営状態が厳しく、社会保険料の納付がままならず、さかのぼって標準報酬月額の記録を引き下げたり、全員の資格を喪失させた事例がほとんどです。
また、社会保険事務所も保険料について収納率が問われますので、不適正な指導があったのも事実です。
A6:改ざんの可能性の高い6万9,000件のうち、すでに年金を受給している2万3,000件については、社会保険事務所の職員が直接ご本人を訪問して確認を進めています。
また、それ以外のすべての受給者には、来年中に各人の年金支払いの基礎となった標準報酬月額等の記録を送付し、確認していただくことになっています。
現役加入者については、来年度から実施される「ねんきん定期便」に標準報酬月額の記録が同封される予定です。標準報酬月額は、年金額に直結する基礎の額ですので、 届いたら必ず確認しましょう。