2021.11.22
年金の履歴書?!
皆さま、こんにちは。
社会保険労務士の尾田佳子です。
前回、皆さまと初めてお会いしたのは初夏でしたが、季節はすっかり移り変わり、間もなく冬になろうとしています。
日に日に寒さも厳しさを増し、体調管理が、より一層大切な時期になりますので、どうぞ気を付けてお過ごしくださいね。
さて、姉御肌のくーちゃん(公美)、幼なじみである双子の兄そーくん(礎一郎)と弟こーくん(厚二郎)。今回はどんなギモンを解決するのでしょうか?
年金に、全く関心のなかった双子の兄弟も、いろいろと調べているみたいですよ。
- 厚二郎:
- 「この前言ってた“ねんきん定期便”。探してみたら、ちゃんとあったよ」
- 礎一郎:
- 「僕もあったけど、びっくりしたのは、嫁さんがもう年金もらってたってこと!」
- 公美:
- 「そりゃそうだよ。奥さん、3つ年上だよね?」
- 礎一郎:
- 「そうそう。思わず、繰上げ請求したんかと思って確認したら、嫁さんは61歳からもらえる世代やってん。一応、国民年金はもらってるんか聞いたら、それはまだって言ってた。」
- 公美:
- 「違う世代の話を聞くと、違いが分かるよね。・・・だから、ややこしいんだけど。」
- 厚二郎:
- 「で、この“ねんきん定期便”だけどさ。あれ?兄貴のと違う?」
- 礎一郎:
- 「僕のは、去年の誕生日辺りに届いたやつ。こーくんのは、ハガキ?封筒なかった?」
- 公美:
- 「両方とも、ねんきん定期便で間違いないよ。年金制度の加入記録とか、年金の見込額とかが記載されてる。ただ、こーくんのは、直近1年分の記録しか記載されてない。それ、今年届いたハガキ?」
- 厚二郎:
- 「うん・・・」
- 公美:
- 「だったら、最新の情報が記載されてるね。
そーくんが持ってる封筒の方には、最初に年金制度に加入した時からの記録が、全部記載されてる。
そーくんは、国民年金だけだから、納付したとかしてないとかが記載されているけど、こーくんの場合は、厚生年金だから、その月々に、どのくらいのお給料(=標準報酬月額)で、ボーナス(=標準賞与額)はどれくらいだったかってのが記載されてるの。」
- 礎一郎:
- 「あ、じゃあ、僕が持ってる定期便では、去年の誕生日以降の記録が分からないんだ。ハガキ、探しとくよ。」
- 公美:
- 「そだね。“ねんきん定期便”は、毎年お誕生月に届くの。
加入している年金制度の記録や年金の見込額が記載されていて、そーくんが持ってる封筒は、35歳・45歳・59歳のいわゆる節目年齢の時に届くもの。
こーくんが持ってるハガキは、この節目年齢以外の時に届くんだよ。」
- 礎一郎:
- 「くーちゃんの定期便は?」
- 公美:
- 「私は、転職を経験しているから、2人とは違って、国民年金もあるし、厚生年金もある。抜けがないよう、ちゃんと納めてきたけどね。」
- 厚二郎:
- 「俺らが知らんだけやけど、くーちゃん、こういう会社に勤めてたんやなぁ~。」
- 公美:
- 「履歴書みたいでしょ。20歳で国民年金に加入して、就職して厚生年金に加入。で、会社辞めて、すぐに仕事決まらなかったら国民年金加入して・・・って。」
- 厚二郎:
- 「ほんと、履歴書や。次に転職する時は、これ見て履歴書書けるやん。」
- 公美:
- 「もうしないつもりだけどね(笑)。」
- 礎一郎:
- 「これ、短期間で就職と退職を繰り返している人も、ちゃんと記録に入ってるの?」
- 公美:
- 「うーん。それが、この定期便に記載されていない記録がある人もいるみたい。
だから、記録確認してくださいねって、日本年金機構はこうやって定期便を送ってるんだけど、覚えていなかったら、別の記録があるってことも分からないよね。」
- 厚二郎:
- 「そう言えば、会社の先輩が年金の手続きに行った時、覚えていない記録があったって言ってた。調べたらアルバイトで働いていた会社で、厚生年金に加入してたらしい。」
- 公美;
- 「そういうことも割とあるみたいで、誰の記録か分からない記録が、まだまだあるらしいよ。」
- 礎一郎:
- 「なんで、そんなことが起こるのかな?」
- 公美:
- 「今は、就職する時とかに、基礎年金番号やマイナンバーを年金事務所に届け出て、厚生年金保険の資格取得手続きを行うんだけど、そもそも、基礎年金番号っていうのが出来たのが平成9年だから、それ以前は、国民年金と厚生年金の番号は別だったの。
で、厚生年金の番号を持っているのに、就職した時に会社に提出しなかったら、新しい番号が付与されるってことが、結構あったみたい。」
- 厚二郎:
- 「へぇ~。基礎年金番号、そんな古くないんだ。それもビックリやな。」
- 公美:
- 「逆のパターンもあって。自分は、厚生年金に入っていたと思っていても、入っていないこともあるし、そもそも、会社自体が厚生年金に加入していない会社だと、厚生年金の記録は出てこない。」
- 礎一郎:
- 「それって、どうなるの?」
- 公美:
- 「調査してもらえるよ。会社名とか働いていた場所、一緒に働いていた同僚の氏名とかを申し立てて。お給料から保険料を引かれてたことが分かるものとかがあれば、明確だよね。
働いていたイコール、厚生年金に加入していたってことにはならないから、一概には言えないけど、調査の結果、記録が見つかることもあるしね。」
- 厚二郎:
- 「記録が見つかるってことは、年金額にも影響するもんなぁ。」
- 公美:
- 「そうそう!自分のことだから、きちんと記録は確認した方がいいよね。」
- 礎一郎:
- 「定期便見てたら、見込額ってあるけど?」
- 公美:
- 「うん。そーくんのは去年の定期便だから、60歳まで、国民年金の保険料を納めた場合の見込額。もし、ここ1年間に保険料納めてない時期があって、そのままにしてたら、この見込額より少なくなるってことね。
こーくんの場合は、この定期便が作られた時期辺りまでの厚生年金の記録に基づいて見込額が計算されてる。実際には、60歳超えても厚生年金に加入するだろうから、65歳の時の見込額は変わってくるよね。」
- 礎一郎:
- 「僕は国民年金だけだし、この食堂がある限りは働けるかな~。」
- 厚二郎:
- 「60歳でリタイアしたら、これくらいの金額。もうしばらくがんばれば、年金額は増えるってことか。」
- 公美:
- 「うんうん。ただ、この金額は現在のお金の価値での計算だから。大体、これくらいって参考にして、これからの人生を考えていかなきゃね。」
- 厚二郎:
- 「若い時は、60歳超えてからも会社員してると思ってなかったけど、まだまだ働けるし、年金もらえるのは65歳からだし。」
- 公美:
- 「厚生年金は、70歳まで加入できるから、65歳から年金もらいつつ、働くって選択肢もあるよ!」
- 厚二郎:
- 「70歳まで?!想像も出来ないけど、あと10年やもんね。」
- 公美・礎一郎:
- 「案外、奥さんは働いていて欲しいって思ってるかも(笑)。」
!今回のポイント!
“ねんきん定期便”は、日本年金機構より、1年に1回、お誕生月に届きます。
定期便には2種類あり、年齢によって、ハガキタイプのものか、封書タイプのものが届きます。
封書タイプのものは、それまでの記録がすべて記載されていますので、国民年金や厚生年金の記録に誤りや漏れがないかを、きちんと確認するようにしましょう。
誤りや漏れがある場合は、同封されている年金加入記録回答票に記入して、返送すると、調査が行われます。
出来る限り、具体的に記入するようにしてください。
定期便に記載されている見込額についても、年齢によって次のように、計算方法が異なります。
・60歳未満の方の見込額は、定期便作成時点での記録が、60歳まで続いたと仮定しての見込額
・60歳以上65歳未満の方の見込額は、定期便作成時点までの記録に基づいた見込額
この見込額は、あくまでもご自分の記録のみで計算されており、様々な前提条件があります。
将来の年金額を約束するものではありませんので、ご注意くださいね。
言葉のおさらい
繰上げ請求= | 年金をもらう権利が発生する前に、年金の受け取りを請求すること。 |
ねんきん定期便= | お誕生月に届く加入年金制度の記録・年金見込額等が記載されたもの。 35歳・45歳・59歳の節目年齢は封書、節目年齢以外は圧着ハガキが届く。 |
標準報酬月額= | 給与・手当等をある一定の幅で区切ってグループ分けした額。 この額を基準として、保険料を決定し、給与から毎月控除。 一般的には、4月~6月に支払われた給与を元に決定。(例外あり) |
標準賞与額= | ボーナスの額から1,000円未満を切り捨てたもの。(上限150万円) この額を基準として、保険料を決定し、賞与から控除。 |
尾田佳子