年金コラム

2023.03.20

学生の間の国民年金

皆さん、こんにちは。社会保険労務士の尾田佳子です。
今年は厳しい寒さを感じることが多かったですが、少しずつ、春の訪れが感じられるようになってきましたね。
間もなく、新しい年度も始まり、通勤電車はフレッシュな空気に包まれると楽しみにしています。

さて、令和5年度は年金に関しての大きな法改正はないものの、年金額が変更になります。
ニュースでも取り上げられましたので、ご覧になった方もいらっしゃるでしょうか。
年金については、改正や変更があるとニュースになりますので、意識してみてくださいね。

そして、ここには、自分の年金について調べていくうちに、子どもの年金についても気になった親がいます。
いつの世も、親が子を想う気持ちは、変わりませんね。

礎一郎:
「この前話してた、国民年金の任意加入。手続きしてきたよ。付加保険料もつけて。」
公美:
「あっ、早い!」
礎一郎:
「嫁さんがね(笑)」
厚二郎:
「僕んとこは、家で任意加入の話をしてたら、嫁さんが、せっかくだから、この機会に、子どもらの学生の時の保険料、後払いしようかなって言い出してん。何て言ってたかな・・・追納?後から納めておいたら、年金増えるって聞いたみたいやで。」
公美:
「こーくん、それって、学生の納付特例を申請してた期間の分?」
厚二郎:
「多分それ。20歳になってから、大学卒業までの保険料が免除されるってやつ。」
公美:
「正確には、保険料免除ではなくて、納付猶予ね。」
礎・厚:
「猶予?」

免除と猶予

公美:
「意味合いは似てるんだけど、根本的に違うのは、将来の年金額かなぁ。」
礎一郎:
「免除って確か、年金額に反映されたと思うんやけど。」
公美:
「そう。例えば、全額免除なら、年金額を計算する時、その期間は2分の1月としてカウントするよ。」
厚二郎:
「じゃ、学生の期間のは反映されないってこと?」
公美:
「そう。年金を受け取れるか受け取れないかを確認する月数としてはカウントするけど、年金額を計算する月数としてはカウントしないの。」
礎一郎:
「じゃあ、手続きしてても年金額は変わらんってことかぁ…」
公美:
「でも、手続きしてなかったら、未納になるんよね。」
厚二郎:
「何か影響ある?手続きしても意味ないように思うんやけど…」
公美:
「もし、手続きしてなかったら、ないとは思うけど、保険料を納めない期間が長くなってしまった場合、年金をもらう権利自体が発生しなくなるかも知れないし、20歳以降の学生の間に、事故や病気で身体に障害が残ってしまっても、障害年金の請求を出来ないこともあるよ。」
礎一郎:
「そうなん?」
公美:
「そうよ。だから、手続きだけはしておかないと。放ったらかしは1番ダメ。障害年金も国の年金制度だし、保険料納めてなかったら、請求出来ないよ。」
厚二郎:
「そらそうやな。」
礎一郎:
「そしたら、仮に、障害年金もらったとしたら、歳とってから老齢年金はもらえなくなるんやんな?」
公美:
「ううん。他の年金もらってても、老齢年金は要件に該当したら、権利は発生する。ただ、両方はもらえないから、その時点で、自分にとってベストな選択をすることになるけどね。」

猶予期間の保険料の納付=追納

厚二郎:
「なるほどな~。子どもらも、結果的に、障害を負うこともなく、元気に就職もしてくれたけど、何かあってからでは遅いよな。ちゃんとしといて良かったわ。
で、猶予してもらってた期間の分を後払いすることによって、子どもらの年金が増えるってことか。」
公美:
「そうそう。猶予されてから10年間は納めることが出来るから、子どもたちが落ち着いてから、自分で納めるのも良し、親としての務めと思って納めてあげるのも良し。
納めてあげた場合、その保険料は年末調整や確定申告で、社会保険料控除に含めることも出来るよ。」
礎一郎:
「そうなん?それは大きいな。」
公美:
「参考程度にね。詳しいことは税理士さんに聞いて。」
礎一郎:
「分かった。聞いてみる。」
厚二郎:
「猶予されてた期間の保険料を納めるには、どうすんの?」
公美:
「年金事務所で手続き出来るよ。追納したいって言って、手続きすれば、納付書送ってくれるから、それに基づいて納付すればOK。ちなみに、保険料は猶予を受けていた当時の保険料ね。」
礎・厚:
「へぇ~、任意加入は今の保険料やけど、違うんやな。」
公美:
「制度が変われば、何かがちょっとずつ変わるよね。それがややこしい。そうそう、追納は出来るんだけど、3年より前の期間の分は、保険料とは別に、利息みたいなのを納めなきゃいけないから、気を付けて。」
礎一郎:
「そうなん?納めるなら、早い方がいいな。」
公美:
「負担にはなるだろうけど、私は、父親が納めてくれてて、本当にありがたいな~と思ってるよ。」
礎・厚:
「くーちゃんみたいに思ってくれますように~(願)」

!今回のポイント!

国民年金の加入は、日本国内に住所がある20歳から60歳までです。
この期間については、原則、保険料を納付しなければならず、納付しなかった月は未納となります。
ただし、様々な理由で、保険料の納付が困難な場合、免除や猶予の制度を利用することが出来ます。

その内、学生である期間については、学生本人の収入が一定以下の場合、保険料の猶予を申し出ることが出来ます。
猶予が認められた場合、その期間については、年金の受け取りが可能かどうかを確認する月数に含めることは出来ますが、年金額を計算する時の月数に含めることは出来ません。

ただ、手続きを行うことで、学生の期間に病気やケガで障害を負ってしまった場合に、障害年金の請求が可能になるということもあります。
年金は、何があるか分からないことに備える為でもありますので、手続きは行うようにしましょう。

この猶予された期間については、10年以内であれば、後から納付(=追納)することが出来ます。
追納すると、その期間については、年金額を計算する時の月数に含めることが出来ますので、猶予期間のままよりも、年金額は多くなります。

納付する保険料は、猶予された当時の保険料であるところが、前回の任意加入とは違う点ですね。
ただし、10年以内であっても、3年より前の期間については、保険料とは別に加算額を納付しなければならないので、早めに納付する方がいいですね。

なお、追納で納めた保険料については、社会保険料控除の対象となりますので、所得税や住民税の負担が軽くなります。

免除や猶予、そして、その期間分の追納については、お近くの年金事務所で確認・手続きをしてくださいね。

!言葉のおさらい!

国民年金の任意加入= 国民年金の強制加入期間中ではない場合に、任意で保険料を納めることができる制度
保険料は任意加入期間中の保険料を納付
付加保険料= 自分自身で納付する国民年金保険料に400円を上乗せして納付する保険料(任意)
学生の納付特例= 20歳以降、大学等に通学している間、学生であることを理由とし、国民年金保険料の納付の猶予を申し出る制度(申し出をしない場合は保険料を納付)
学生本人の前年所得が一定以下であることが要件で、認定されると、保険料の納付を要しない。この特例の期間は、年金の受給資格を確認する月数に含めることは出来るが、年金額を計算する月数には含まれない(申し出をせず納付した場合に比べて、年金額が低額になる)
追納= 国民年金保険料の納付を免除・猶予されていた期間について、後から納付すること
追納した期間は、納付済み期間となり、年金額を計算する月数に含まれる
10年以内に、免除・猶予されていた当時の保険料を納付するが、3年より前の期間分については、期間に応じた加算額が上乗せされる
障害年金= 年金制度に加入期間中等の病気やケガにより、障害の状態に該当した場合に受け取れる年金
*受けるには様々な要件を満たすことが必要となります。
社会保険労務士
尾田佳子
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