2024.04.16
年金受給後の手続きについて
こんにちは社会保険労務士の土屋です。今回も皆さんにとって関心の高い年金についてお話しさせていただきます。
本題に入る前にまずみなさんに考えていただきます。年金は下記のうち、いつからもらえるでしょうか?
① 65歳
② 0歳
③ 20歳
正解は、年金は支給要件を満たせば3つすべての年齢から受給できます。順番にご説明します。
原則年金は65歳から支給
昭和61年4月の改正で年金受給は「65歳」から支給となりましたが、当分の間60歳から受け取ることができます。それが特別支給の老齢厚生年金です。特別支給の老齢厚生年金は厚生年金加入期間が1年以上あれば、生年月日に応じて65歳前から報酬比例部分の年金(厚生年金保険料の基になった給与&賞与の金額に応じた年金)が受給できます。(国民年金加入期間のみの方や厚生年金の加入期間が1年未満の方は65歳から)
この年金はいずれ受給する方がいなくなり、男性で昭和36年4月2日以降生まれの方、女性で昭和41年4月2日以降生まれの方は、年金は原則65歳から支給になります。
ただ、上記の生年月日の方でもまた61歳からが本来の年金支給年齢の方であっても、60歳から遡及して年金を請求することもできます。この請求手続のことを繰上げ請求といいます。
65歳前に繰上げ請求することも可能
繰上げ請求を選択すると、年金を請求した翌月から受けることができますが、デメリットとして本来の受給年齢から請求時までの期間の月数に応じた割合で、本来受給する年金が減額されます。繰上げ請求後減額は一生続き、増額されることはありません。(※請求以降に厚生年金に加入する期間については65歳以降に加算されます。)この減額率が昭和37年4月2日以降に生まれた方は1ケ月0.4%に改定されています。(昭和37年4月1日以前生まれの方は0.5%)繰上げ請求をするといずれ本来の年金受給総額に追いつかれます。年金受給額は生年月日による受給年齢や厚生年金の加入月数によってそれぞれ違いますので、一概に判断はできません。昭和37年4月1日以前生まれの方が60歳で全部繰上げ請求した場合、減額率は0.5%で減額支給され、老齢基礎年金と老齢厚生年金を一緒に繰上げしなければなりませんので、本来の支給開始年齢から受給した場合の受給総額に追いつかれるのは12~13年後の72歳~73歳になります。一方で、昭和37年4月2日以降生まれの男性が60歳で年金を繰上げ請求した場合(老齢基礎年金と老齢厚生年金を一緒に繰上げしなければなりません)本来の年金受給である65歳(女性は特別支給の老齢金を65歳前から受給できる場合があり)から受給した場合の受給総額に追いつかれるのが約20年後の80歳頃になります。男性の平均年齢は現在81歳程ですから、自分の生活設計を考えて繰上げ請求を選択するということもありかもしれません。ただ、一度請求手続をしてしまうと取り消しはできませんし、減額支給される以外に下記のデメリット等があります。請求をされる方はよく検討のうえ手続きをお願いします。
〇主な繰上げ請求のデメリット
① 事後重症の障害年金を請求できない。
② 過去の国民年金の免除期間の納付や高齢任意加入はできない。
③ 年金額が減額され、厚生年金加入以外は増額されない。
※繰上げ請求手続きの詳細はバックナンバーを確認いただくか日本年金機構のホームページ等で確認してください。
遺族年金は胎児にも受給権がある
②の「0歳」は、たとえば厚生年金加入中に被保険者が死亡した場合や、厚生年金の加入期間があり25年以上の受給資格期間を満たしている夫が死亡し、その配偶者(妻)が死亡時に妊娠をしていて死亡後に出産した場合、その胎児に遺族年金の受給権が発生します。ただ、生まれた子は母親と同居(生計維持関係がある)していた場合、子にも受給権は発生しますが、母親が遺族基礎年金(子の加給年金が加算)と遺族厚生年金を受給し、子の年金は支給停止になります。なお、遺族基礎年金は対象となる子が満18歳に達した最初の年度末で支給終了となります(子が障害者の場合は満20歳まで支給)。従って、妻は遺族厚生年金のみをその後受給することになります。
②厚生年金加入中に初診日があり、退職後、その病状が悪化して初診日から5年以内に死亡したとき
③障害厚生年金1級、2級を受給している人が死亡したとき
妻以外の遺族には年齢要件がある
遺族年金を受けられる範囲は死亡した人と生計維持関係にあった配偶者、子、孫、父母、祖父母になります。配偶者の妻には年齢要件はありませんが、その他の遺族には年齢要件があります。子、孫は満18歳未満(障害者の場合20歳未満)、夫、父母、祖父母は55歳以上(原則支給は60歳~)とされています。ただし、18歳未満の子のある夫については60歳前でも支給されます。また、子のいない30歳前の妻は5年の有期年金となります。なお、死亡時に子がいても、子が満18歳以上(障害者は20歳)の年度末を迎えて30歳前に該当する子がいなくなると、その時から5年で遺族厚生年金も終了になります。
最近は女性も男性と同じように就労を継続する方も多くなり、社会保険の適用拡大の問題もあり短時間で働く方も厚生年金に加入することになります。第3号被保険者制度についても逆に就労をさまだけているという問題にあがっています。また、同性婚の問題やLGBTの問題についてもさまざまな場で議論されるようになりました。社会保険の適用拡大がさらにすすみ、第3号被保険者制度のあり方も今後かわっていくことが予想されます。遺族年金の制度も社会状況に応じて改正をしていかなければならないのではないかと考えます。
障害年金は20歳から受給
最後の「20歳」は、障害年金は20歳から受給できます。障害年金を請求するためには初診日を確定し、受診状況等証明書(以下受証という)等を提出し初診日を証明しなければなりません。知的障害や生まれつきの傷病で請求をする場合には、診断書を作成する医師による生まれつきの傷病である(発病日は出生日)との所見があれば、その旨を記載した診断書(20歳時前後3ケ月以内の現症を記載)を作成してもらいます。病状の状態が国の認定基準に該当すると認定をされれば、20歳から障害年金が受給できます。
※初診日の受証がカルテの廃棄や医療機関の廃院等で、取得できない場合は2番目以降の受証を提出する。2番目以降の受証も取れない場合は第3者証明での請求も可能。詳しくはバックナンバーや日本年金機構のHP等を確認してください。
生まれつきの傷病ではなく20歳前の初診日がある傷病で障害年金を請求する場合には、20歳前に初診があった証明が必要になります。たとえば、発達障害の場合は生まれつきではなく、発達障害と医師が診断した日が初診日となります。ただ、初診の証明がカルテの廃棄等で取得できない場合でも、18歳6ケ月以前に2番目以降の証明が取得できれば、請求をすることができます。
障害年金の請求は初診日から時間が経過すると、受診証明書や診断書を用意することが非常に困難になります。ただ、病状が初診日の時点ではそれほど重篤な病状でない場合でも何年か経過後に悪化したときや、当時は障害年金のことを知らずに何年も経過してしまうということがあります。そのようなケースはご自分や家族の方が請求手続をすることは非常に困難なことがありますので、社会保険労務士に相談をしていただくようお願いします。下記の窓口でも相談対応(無料)を実施していますので、ぜひご利用をいただければと思います。
〇東京都社会保険労務士会年金相談センター 毎週金曜・第2・第4土曜の対面相談(東京都社会保険労務士会館)
10:00~16:00予約制 03(5289)8833
〇障害年金支援ネットワーク 電話相談 月~土10:00~12:00 13:00~16:00
固定電話から0120-956-119
携帯電話から0570-028-115