年金コラム

2024.11.19

遺された年金~長年連れ添った配偶者の死亡

皆さま、こんにちは。社会保険労務士の尾田佳子です。
前回から4ヶ月が過ぎていることになるのですが、いかがお過ごしでしたでしょうか?

この4ヶ月で、何が一番印象に残っているか?と聞かれたら・・・私は、「令和のコメ騒動」を挙げます。
日本人の主食であるお米が、一時は余っている等と言われていたのに、不足?!
おかげで、私のスマホの検索履歴は“米”が続きました。

新米が流通し、お米不足は解消されたようですが、スーパーに行けば当たり前にあるお米が姿を消すなんてこともあるんだなぁ・・・と。
今、新米をいただいていることが、本当にありがたく、毎日、感謝しながら味わっています。
ふと、そーくんの食堂は大丈夫だったのかな?!なんて考えたりもしたこの4ヶ月でした。

さて、いつもの食堂では、頼れる公美(くーちゃん)の帰りを待っている人がいます。
ちょっと、悲しい顔をされていますね。
くーちゃんも帰ってきたようですし、ちょっと食堂を覗いてみましょう。
今日は、どんなことが待ち受けているのでしょうか?

公美 「こんばんは~。そーくんいるぅ?晩ごはん食べさせて~。
あれっ?あんみつ屋の女将さん?こんばんは。ご無沙汰してます。こんな時間に珍しいですね?」
礎一郎 「くーちゃんが帰ってくるの待ってたんやで。」
女将 「すみません。お仕事でお疲れのところ…実は、父が亡くなりまして…。」
公美 「えっ?!」
厚二郎 「あんみつ屋の大将、去年辺りから体調崩してはったらしいわ。」
公美 「それで、代替わりを…。」

あんみつ屋さんは、礎一郎が切り盛りする食堂の向かいにあります。
食堂で食べて、お腹いっぱいになったお客さんの、別腹を満たしてきました。
その大将が、昨年、婿養子となった女将の夫へと代替わりをしました。
代替わりを果たした大将は、奥さんと穏やかな毎日を送られていたそうです。

公美 「そうでしたか…大変でしたね。でも、大将の味は、しっかりと引き継がれているから、きっと安心されていますね。
それで、私を待っていたというのは…。」
女将 「はい。いろいろ手続きが必要なんですが、年金のことは公美さんが詳しいとお聞きして…教えていただけませんか?」
礎一郎 「手続きは、女将さんが出来るん?」
公美 「ううん、大女将が手続きすることになるよ。」
女将 「私が付き添うので大丈夫です。」
公美 「では、私でお役に立てるか分かりませんが…。」
女将 「ありがとうございます。よろしくお願いします。」

遺族年金の受給権

公美 「あんみつ屋は、法人化してないですよね?」
女将 「夫に代替わりした時に、法人化しました。」
公美 「大将は、ずっとあんみつ屋ですか?」
女将 「あんみつ屋を始めるまでは、20年くらい、一般の企業に勤めていたそうです。
その後で、あんみつ屋をオープンさせたと聞いています。」
公美 「大女将は?」
女将 「母は、会社勤めの経験がないそうです。父があんみつ屋をオープンさせた後は、夫婦の国民年金の保険料をきっちり払ってきた、と聞いています。」
公美 「大将と大女将は、もうあんみつ屋の経営に関わっていなかったのですか?」
女将 「2人の年金だけでは厳しいので、夫が父に月10万円程の給料を渡していたようです。
母には、給料を渡していなかったようなので、母は自分の年金だけが収入だと思います。ひょっとすると、今後は母に給料を渡すかも知れません。」
公美 「なるほど。大将と大女将の住民票って、どうなっているか分かりますか?一緒にお住まいだったと思うのですが、世帯を分けているとか・・・そういったことは?」
女将 「なかったと思います。同じ世帯で、世帯主は父です。」
公美 「お2人住まいですよね?」
女将 「そうです。私が結婚して家を出ましたので、そこから2人暮らしです。」

遺族年金の手続き

公美 「手続きとしては、3つになるかと思います。
まずは、未支給年金と言って、大将が亡くなられた月分までの年金の受け取りについての手続きと、大将が亡くなられた月の翌月分からの遺族厚生年金の手続き。
あと、お聞きする限りでは、老齢年金生活者支援給付金も対象になると思います。」
女将 「結構ありますね。」
公美 「実際、手続きの窓口で確認した際に、他の手続きが必要になることもあるかも知れませんが…。」
女将 「分かりました。では、母と一緒に行ってきます。」
公美 「大女将の本人確認書類と、戸籍謄本、死亡診断書、大女将名義の通帳を用意して行ってくださいね。
あ、マイナンバーカードもあればいいと思います。」
女将 「持って行くようにします。お疲れのところ、すみませんでした。ありがとうございます。失礼いたします。」
礎一郎 「あ、女将さん、気を付けて!大女将にもよろしく。
(公美の方を向き)世代的に、こうやって亡くなる人も増えてくるよなぁ。」
公美 「うん…仕方のないことだけど、淋しいね。懐かしいなぁ、大将のあんみつ…。」
礎一郎 「せやな・・・。あんみつはないけど、俺が作る晩メシもうまいで!ちょっと待ってな!」

!今月のポイント!

年金を受け取っている方が亡くなった場合、年金事務所もしくは街角の年金相談センターで手続きが必要です。

亡くなった方が受け取る権利を有している年金で、死亡により受け取れない年金を、一定の要件に該当する家族や親族等が受け取れる未支給年金。
亡くなった方と遺族の双方が、一定の要件に該当する場合に発生する遺族年金。
いずれも、要件に該当するか否かは、手続きの窓口で確認出来ます。

未支給年金は、亡くなった月分まで受け取れ、遺族年金は亡くなった月の翌月分からの受け取りとなります。
手続きが遅れた場合でも、未支給年金、遺族年金ともに5年以内であれば遡って受け取ることが可能です。
ただし、実際の振込までには数ヶ月程要しますので、ご注意ください。

老齢年金生活者支援給付金は、消費税が10%に変わった時に導入された制度です。

  1. 65歳以上で、老齢基礎年金を受給している
  2. 住民票上の世帯全員の住民税が非課税
  3. 前年の年金収入と所得が基準額以下である

上記全ての要件に該当する場合のみ、受けることの出来る給付金となっています。

こちらは、未支給年金や遺族年金と違って、原則、手続きをした月の翌月分からの支給となりますので、ご注意くださいね。

これ以外にも、手続きの窓口で、別途必要な手続きを求められることもあります。
必要な書類については、状況によって異なるので、事前に、年金事務所や街角の年金相談センターで確認をしておいた方がいいと思います。

!言葉のおさらい!

未支給年金
受け取る権利が発生している年金で、本人が死亡により受け取れない場合に、生計を同じくする家族や親族が、本人に代わって受け取ることが出来る年金。

遺族厚生年金
老齢厚生年金を受給している人や、厚生年金加入中の人、受給要件を満たしている人等が亡くなった時、その者によって生計を維持されていた一定の要件に該当する遺族に支給される年金。
*受け取るには様々な要件を満たすことが必要となります。

老齢年金生活者支援給付金
65歳以上で、老齢基礎年金を受給している等、一定の要件を満たす人に支給される給付金。
消費税が10%に変わった令和元年10月に開始。
なお、年金生活者支援給付金には他に、障害年金生活者支援給付金と遺族年金生活者支援給付金があるが、いずれも障害基礎年金・遺族基礎年金を受給している人が対象。

遺族年金
要件を満たしている人が亡くなった時、その者によって生計を維持されていた一定の要件に該当する遺族に支給される年金で、遺族基礎年金と遺族厚生年金がある。
双方の要件によって、支給される年金が決定されるが、要件によっては、遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方が支給される。

社会保険労務士
尾田佳子
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