2009.10.08
読者からのお手紙・メールと年金手続きの体験談(3)
金木犀の香りとともに秋本番が到来。今年の紅葉はどうかしらと楽しみですね。人生を四季に例えるなら、生まれてから25歳くらいまでが春、60歳くらいまでが夏、60歳から秋でしょうか。再雇用等があるものの、ひとつの職業人生の区切りである60歳以降に、皆様がそれぞれ描かれる紅葉の錦絵が、個性的で、美しいものとなるように、今回は、60歳以降の働き方についてお話しましょう。
読者-N:先日、社会保険事務所へ相談に行った際、「Nさんは高校卒業後、現在の企業で継続し厚生年金に加入しているので、再就職後63歳の誕生日で44年間加入となり、"528ヶ月制度?"が適用され、老齢基礎年金の支給が65歳を待たずに2年早く受給できますよ」と言われました。HP等で探したが見当たらないので、詳しく教えてください。(2009年12月25日の誕生日で退職後、関連企業へ再就職予定の高校卒59歳男性)
原:「528ヶ月制度」とは、「長期加入の特例」のことですね。昭和24年度~昭和28年度生まれの男性の方を例にして、ご説明しましょう。
「長期加入者」とは
厚生年金の加入期間または共済年金の加入期間が、44年(=528月)以上ある方を長期加入者といいます。44年は、厚生年金単独または、共済年金単独の加入期間で判断します。厚生年金と共済年金の合算で44年以上になった場合は該当しません。
「長期加入者の特例」とは
60歳時点で長期加入者に該当し、厚生年金の被保険者でない場合は、60歳から報酬比例部分と定額部分と加給年金額(要件を満たしている場合のみ。以下同様)が支給されます(図表1赤色部分)。
定額部分は、年間約80万円、加給年金額は年間約40万円ですので、これが5年早く受け取れる長期加入者は、65歳までの支給額が長期以外の方に比較して600万円(120万円×5年)多くなるということです。
ただし、60歳以後も引き続き厚生年金に加入する場合は、特例は適用されず、赤色部分は、支給されません。原則通り、60歳から65歳までの間は、報酬比例部分となり、在職老齢年金のしくみによる年金の一部または全部のカットの対象になります。
60歳時点で厚生年金の期間が44年以上ある方は、60歳以後働く場合には、働く時間または日数を正社員の3/4未満にして厚生年金に未加入の状態にすると、報酬比例部分、定額部分、加給年金額(加算される場合のみ)の年金と給料が支給されます。
60歳以後に引き続き働いて44年になったとき
60歳時点で厚生年金の加入期間が44年未満の人が、60歳以後も引き続き厚生年金に加入し、厚生年金の期間が44年以上になってから退職(=厚生年金未加入)した場合も、長期加入者の特例として年金額が改定されます。
たとえば、高校を卒業して就職した場合は、60歳時点で42年を超えることになります。この場合、後2年前後、厚生年金に加入すると厚生年金の期間を44年にできますね。その後、厚生年金の被保険者でなくなると、長期加入者の特例を受けられるようになり、加給年金額が加算される方は、月額で10万円年金額が増加します(図表2参照)。
年金額の改定時期は、被保険者の資格喪失日(=退職日の翌日または厚生年金の未加入日)から1か月経過後の月からとなります。
報酬比例部分が60歳後に支給開始となる方は...
昭和28年4月2日以後生まれの男性は、60歳以後から報酬比例部分を受給することになります。
このような場合は、報酬比例部分の支給開始時点で、長期加入に該当していれば、その時点から、報酬比例部分に加えて、定額部分と加給年金額が加算された年金が支給されます。
ねんきん定期便で確認しましょう
ねんきん定期便には、被保険者月数の表示があります。厚生年金の月数を確認してみましょう。44年は、528月ですので、後どのくらい勤めれば長期加入者に該当するかわかります。
なお、確認の際には、定期便作成年月日に気をつけてください。表示されている月数は、記載されている月の前月までの記録となります。