2009.10.22
読者からのお手紙・メールと年金手続きの体験談(4)
「勉学の秋」といいますが、秋はまさに研修のハイシーズンです。仕事柄、全国各地をセミナーで回りますが、美しい自然や美味しい海の幸、山の幸、源泉100%掛け流しの温泉に出逢う機会も多く、なんと幸せな仕事をさせていただいているのだろうと感謝でいっぱいになります。その上、セミナーにご参加いただいた方から「今日の話をきいて、年金がどんなに大切なものかわかりました。」などといわれると、幸せ感は、100倍くらいに膨れ上がります。そのエネルギーで、またまたお役に立つ年金のセミナーを展開して行こうと思う私です。
「年金の繰下げ受給」とは?
読者-Q:以前、「繰上げ受給の注意点(2009年2月26日掲載)」を興味深く読み参考になりましたが、「年金の繰下げ受給」の注意点についても教えてください。
当初は予定通り65歳から受給することにしていましたが、現在、健康状態もよく預貯金の金利よりも良さそうな繰下げ受給のメリットに気づいた為です(59歳女性、22歳より現在まで厚生年金加入中)。
原:あなたは、60歳から特別支給の老齢厚生年金の報酬比例部分、63歳から定額部分が支給され、65歳からは、老齢厚生年金と老齢基礎年金が支給されます(図表1)。
この中で、あなたが繰下げることができる年金は、65歳から支給される老齢基礎年金と老齢厚生年金です。これらの年金は、66歳以後70歳までの間の希望する時期まで、受給を遅らせることができます。これを繰下げ受給といいます。年金額は、遅らせた月数に応じて、増額になります(図表2参照)。
66歳0ヵ月で請求すると受給率は108.4%。70歳0ヵ月で請求すると受給率は142.0%となります。
老齢基礎年金を満額(792,100円/平成21年度価格)受給できる方が、70歳0ヵ月で請求されたときは、1,124,800円(792,100円×142.0%)、月額にして、約93,000円となります。この金額は70歳以後、終身受給できます。
老後の生活は、ほとんどの方が公的年金に頼る生活となります。繰下げ受給は年金額を多く確保することができますので、老後生活が安定します。
《繰下げ受給の注意点》
- 繰下げ期間中(繰下げのため年金を請求しない期間)は、繰下げている年金は受給できませんので、その間の生活の収入源を考えなければなりません。
- 受給権発生日(通常は65歳の誕生日前日)において、障害や遺族の年金の受給権がある場合、あるいは、受給権発生日から1年を経過するまでの間に障害や遺族の受給権者になった時は、繰下げができません。
- 繰下げ待期中は、65歳支給の年金(受給率100%)を請求することもできます。繰下げ受給するかどうかの最終決定は、最長70歳到達まで持越すことができます。しかし、一旦繰下げ請求をすると、その後に65歳支給に変更することはできません。
- 65歳0ヵ月から65歳11ヵ月までは繰下げはできません。一番早く請求できるのは、66歳0ヵ月です。
- 70歳ですぐに請求せず、70歳2ヵ月で請求すると、年金の支給は請求の翌月からとなりますので、2ヵ月分年金を受け取り損ねることになります。70歳到達月に忘れず請求してください。
- 老齢基礎年金の繰下げ待期中は、振替加算額も受給できず、振替加算は繰下げても、増額しません。その為、繰下げを検討する時は、振替加算額も考量して考える必要があります。
- 繰下げ待期中に万一死亡した場合は、65歳支給の年金(支給率100%)を、遺族が未支給年金として、一括して受給できます。ただし、繰下げ請求後に死亡の場合は不可です。
「老齢厚生年金の繰下げ受給」は次号でご紹介します。