2009.11.26
読者からのお手紙・メールと年金手続きの体験談(5)
温かく湯気の上がる鍋を囲んでの一家団欒の夕食風景は、幸せの象徴のように感じられます。牡蠣土手鍋、たら鍋、寄せ鍋、うどんすき、しゃぶしゃぶ、ちゃんこ鍋、てっちり、キムチ鍋、鳥や豚の水炊き、すき焼き、もつ鍋、おでん、湯豆腐、石狩鍋、はりはり鍋etc、etc・・と毎日鍋でもひと冬は大丈夫というくらい、鍋料理はバラエティーに富んでいます。野菜もたくさんいただけて、栄養のバランスもよく、身体も温まる鍋料理ですが、一つの鍋を囲んで家族が一緒に食事をすることで、心が芯からあったまる。それが何よりのご馳走かなと思います。
さて前回(2009年10月22日掲載)は、「繰下げ受給の注意点」のうち、老齢基礎年金の繰下げ受給を中心にお話しましたので、今回は老齢厚生年金の繰下げについてお話しましょう。
老齢厚生年金の繰下げ受給
ご相談者の女性(読者-Qさん)は59歳で、22歳から現在まで厚生年金加入中とのことでした。
この方には、60歳から特別支給の老齢厚生年金の報酬比例部分、63歳から定額部分が支給され、65歳からは老齢厚生年金と老齢基礎年金が支給されます。
この中で、
- 繰下げることができる年金は、65歳から支給される老齢基礎年金と老齢厚生年金です。
- 65歳前に支給される特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分と定額部分)は、繰下げできません。
これらの年金は、66歳以後70歳までの間の希望する時期まで、受給を遅らせることができます。老齢厚生年金の繰下げ増加率ですが、老齢基礎年金と同様で昭和16年4月2日以後生まれの人の場合、支給率は月単位(0.7%刻み)で決められています。
また、請求時期や支給時期も老齢基礎年金と同様になります。
繰下げ受給の方法
65歳以後に支給される老齢厚生年金と老齢基礎年金の繰下げ方法は、次のいずれかから選択できます。
- 老齢厚生年金だけを繰下げ(65歳からは老齢基礎年金を受給)
- 老齢基礎年金だけを繰下げ(65歳からは老齢厚生年金を受給)
- 両方の年金を繰下げ(65歳から繰下げ請求時までは受給額なし)
※老齢基礎年金68.0歳、老齢厚生年金70.0歳で受給、というようにそれぞれの繰下げ期間が異なってもかまいません。
65歳以後の在職老齢年金と繰下げ受給の関係
65歳以後も厚生年金に加入している人が繰下げを希望する場合は、在職老齢年金の調整後、老齢厚生年金(=報酬比例相当部分)が支給される場合に限ります。報酬比例相当部分が在職老齢年金の調整により全額支給停止になる場合は、老齢厚生年金の繰下げはできません。
たとえば、老齢厚生年金の月額が10万円の方が、65歳以後も厚生年金に加入して、在職老齢年金のしくみの仕組みにより、3万円が支給停止となった場合を考えてみましょう。この方が70歳まで繰下げた場合、10万円全額が142%となるのではありません。10万円から支給停止額の3万円を引いた、在職老齢年金の支給額7万円のみが142%になります。支給停止分の3万円は、そのままの金額で支給されますので、70歳からの支給額は、12万9400円(=7万円×142%+3万円)となります。
なお、在職老齢年金の額は、給料と過去1年の賞与額によって、支給額が変動します。
そのため、繰下げていた期間の平均支給率を算出して、年金支給額を求めます。
【参考】 支給率は月単位(0.7%刻み)で決められ、繰下げ加算額は次の計算式を使用します。なお、経過的加算額も繰下げの対象になります。
●65歳以後は厚生年金未加入 ⇒ 65歳時の老齢厚生年金額×繰下げ待期月数(上限60月)×0.7%
●65歳以後も厚生年金加入 ⇒ 65歳時の老齢厚生年金額×平均支給率×繰下げ待期月数(上限60月)×0.7%
※平均支給率=月単位の支給率の合計÷繰下げ待期月数
※月単位の支給率=1-(在職支給停止額÷65歳時の老齢厚生年金額)
繰下げ受給と加給年金額
老齢厚生年金に加給年金額が加算される場合、繰下げ待期期間中は加給年金額もストップしてしまいます。その上、加給年金額は、繰下げても年金額が増加しません。
このことも加味して、繰下げ受給の有利不利を考えてみることも必要です。