2010.02.25
れいこ先生の「言わせてちょうだい!」シリーズ【その3】何歳からどんな年金が受け取れますか?
「春は名のみの風の寒さや~」で始まる、『早春賦』という歌をご存知の方も多いことでしょう。遠くて近い春を思わせるこの歌に出会ったのは、小学校の頃だったかと思います。難しい言い回しの歌詞にもかかわらず、今までしっかり覚えている歌のひとつです。この歌の作者を調べてみると、吉丸一昌作詞、中田章作曲とのこと。「吉丸一昌氏が大正の初期に長野県安曇野を訪れ、穂高町あたりの雪解け風景に感銘を受けて『早春賦』の詩を書き上げたとされている」と、記載されていました。
改めて口ずさんでみると、明るい春を思う、どこか懐かしいメロディーの中に、雪を抱いた日本アルプスの山々と清冽な水が流れる信州の風景が浮かびあがって素敵な気分になりました。皆さんもちょっと歌ってみませんか?
【その3】何歳からどんな年金が受け取れるの?
※由美さん(50歳)は専業主婦、菜々子さん(55歳)は厚生年金に加入中
●由美
年金は人によって、受け取り開始年齢や、受け取ることができる年金が違うのでわかりにくいのですが、今回は、何歳からどんな年金が受け取れるのか教えてください。
●菜々子
そういえば私の周りにも、60歳から受け取る方や65歳という方もいるわ。何でこんなにいろいろなのかしら?
●れいこ先生
では、お二人のリクエストにお答えして今回は、何歳からどのような年金が受け取れるのか、年金スタイルをマスターしましようね。
受給できる年金スタイルは、どの制度に何年加入していたかということと、生年月日と性別で決まります。
ここでは、菜々子さんのご主人の例で確認してみましょう。
ご主人の生年月日と年金の加入履歴を教えていただけますか?
●菜々子
ハイ、夫は昭和28年3月25日生まれで、60歳時点で厚生年金に38年加入することになります。
●れいこ先生
では、【シート1】を確認してゆきますよ。
※画像をクリックすると拡大できます。
●由美
スタートは、受給資格の有無の確認ですね。これは、原則25年の加入年数があれば受給資格があるということでした。菜々子のご主人は38年の厚生年金の加入ですので受給資格有りってことね。
●れいこ先生
その通りね。又、年数だけではなくて、50歳以上の方は、ねんきん定期便に老齢の年金額が記載されていれば、受給資格期間を満たしているということなので、金額の記載の有無でも確認が可能ですね。
●菜々子
次の質問は、「厚生年金の加入期間がありますか?」ですね。ここは「はい」ね。次は、「厚生年金の加入期間は1年以上ありますか?」で、ここも「はい」ですね。ところで、この二つの質問の意味を教えてください。
●れいこ先生
まずは、厚生年金の加入期間がない場合ですが、これは、国民年金だけということで65歳から老齢基礎年金の受給となります。
厚生年金の加入期間がある場合には、1年未満の方と1年以上の方とで支給スタートの年齢が違ってきます。
例えば、国民年金に30年、厚生年金に6ヵ月加入していた方は、6ヵ月の厚生年金でも老齢厚生年金として受け取ることができます。ただし、支給のスタートは65歳となります。
●由美
ところでれいこ先生、ここにある「脱退手当金を受けた期間を除く」ってどういうことですか?
●れいこ先生
脱退手当金は過去に厚生年金にあった制度で、退職時にそれまで納めた厚生年金の保険料の一部を返還してもらう制度です。保険料を清算してしまっているので、年金としては受け取ることができません。
●菜々子
ここまでは、順調ですね。さて次のステップは、長期加入者と障がい者に該当するかどうかのチェックですね。うちの主人は、どちらにも該当しませんが、れいこ先生、ここはどういう意味ですか?
●れいこ先生
ここでは、支給開始年齢の特例に該当するかどうかをチェックします。特例に該当するケースは、二つあります。まず、長期加入者ですが、厚生年金の加入期間が44年以上ある方のことです。次に障がい者ですが、障害等級3級以上の障害のある方のことですが、障害の年金の受給の有無は問いません。
●菜々子
この方たちは、どんな特例があるのですか?
●れいこ先生
60歳から報酬比例部分だけではなく、定額部分と対象者がいれば加給年金額も加算された年金が支給されます。ただし、60歳以後厚生年金に加入していないことが条件よ。又、報酬比例部分が61歳以後に支給される場合は、報酬比例部分の支給に合わせて定額部分と加算される場合は加給年金額が支給されます。
●由美
定額部分が年間約80万円、加給年金額が年間40万円ですから、5年間早く支給されると、すごいですね、600万円もお得になるってことですね!
●菜々子
残念ながら、うちの夫は、長期加入者にはならないわ。ということは、どうなるのかしら?
●れいこ先生
ハイ、今度は、【シート2】を見てください。生年月日と性別で受給できる年金スタイルが決定します。
※画像をクリックすると拡大できます。
●菜々子
えっと、夫は昭和28年3月生まれだから、60歳から報酬比例部分、65歳から老齢厚生年金と老齢基礎年金が受給できるのね。
私自身は、昭和29年12月生まれで、厚生年金33年加入だから60歳から報酬比例部分、65歳から老齢厚生年金と老齢基礎年金、あら、夫と同じだわ。
●由美
私は、短大を卒業してから2年だけ厚生年金に加入して、あとはずっと専業主婦。昭和34年10月生まれだから、61歳から報酬比例部分、65歳から老齢厚生年金と老齢基礎年金ね。れいこ先生、年金支給のスケジュールは、男性と女性で違うのですか?
●れいこ先生
そうなのよ。特別支給の老齢厚生年金は、順次なくなってゆきます。65歳から老齢厚生年金と老齢基礎年金が支給されるという最終スタイルに向かっての切替えは、まず男性から始まって、女性は男性より5年遅れで進んでゆきます。つまり、切替えについては、女性のほうが有利ということね。
それから、この切替えの注意点ですが、退職共済年金についても同様のスケジュールで行われますが、厚生年金との違いは、女性も男性と同じスケジュールで切替えが進んでゆく点です。
●由美
今日頂いた2枚のシートがあれば、何歳からどんな年金が受け取れるのかが、簡単にわかりますね。
●菜々子
まとめると、
- 国民年金の加入期間しかない場合 → 65歳から支給開始
- 厚生年金の期間があっても1年未満の場合 → 65歳から支給開始
- 厚生年金の加入期間が1年以上ある場合 → 生年月日と性別で受給スタイルを決定する
ということですね。
●れいこ先生
ハイ、そのとおりです。厚生年金の加入が44年以上の長期加入者と障害のある方の特例もお忘れなくネ。
参考リンク
(注)日本年金機構から旧社会保険庁等のホームページへリンクする場合があります。