年金コラム

2010.04.22

れいこ先生の「言わせてちょうだい!」シリーズ【その5】夫婦で受け取る年金スタイルは?

桜前線を追うように、新緑前線が日本列島を緑に変えてゆきます。新緑の魅力は薄緑、若草色、浅緑、萌黄色、若葉色、黄緑色、きはだ色、鶯色、抹茶色、etc、etc...と実にさまざまな色があること。一本ずつの樹木が、それぞれ自分の色で、みずみずしさ、新鮮さ、力強さを主張します。風になびく木の葉は重なり合ったり、離れたり、空の青さをバックに、自由自在に緑のグラデーションを作り上げます。その緑のエネルギーは、見る人に生きる力を注ぎこんでくれるようです。新緑を求めて、ちょっと外へ出かけてみませんか。

【その5】夫婦で受け取る年金スタイルは?

※由美さん(50歳)は専業主婦、菜々子さん(55歳)は厚生年金に加入中

●菜々子

今日は、夫婦で年金を受け取るときの加算額について教えてください。

●由美

うちの夫は、昭和32年9月生まれで、大学を卒業して22歳から60歳までの38年間、厚生年金に加入するので、63歳から報酬比例部分、65歳から老齢厚生年金と老齢基礎年金を受給する予定です。私は、昭和34年10月生まれで厚生年金に2年加入して、あとは第3号被保険者期間だけなので61歳から報酬比例部分、65歳から老齢厚生年金と老齢基礎年金を受給しますが、この図の赤い部分が加算額ですね。

●れいこ先生

そうです。加算には、加給年金額と振替加算額があります。加給年金額は、年金の家族手当のようなもので、老齢厚生年金に加算されます。
ただ、誰にでも加算されるということではなく、加算されるには、次の二つの要件を満たしていることが必要です。

  1. 夫の厚生年金の加入期間が20年以上あること。中高齢の特例に該当する場合も、20年以上あるものとして取り扱います。
  2. 加給年金額の加算開始時点(このケースでは夫が65歳時点)で、生計維持関係にある65歳未満の妻(配偶者)がいること。

この他、18歳到達年度の末日(障害等級1・2級の状態にある場合は20歳未満)までの未婚の子供がいる場合にも加算は行われます。
なお、中高齢の特例とは、昭和26年4月1日以前生まれの人に適用される受給資格期間の特例です。男性40歳、女性35歳以後の厚生年金の期間が15年~19年であっても20年とみなす特例です。

●由美

ところで、生計維持関係というのは、どのような関係ですか?

●れいこ先生

生計同一であることと、加算対象者、つまり妻の前年の年収が原則850万円(所得ベースでいうと、655万5千円)未満であれば、生計維持関係があるものとされます。

●菜々子

加給年金額はいつから加算が始まるのですか?

●れいこ先生

夫に定額部分が支給される場合は、その時点から、定額部分の支給が無い場合は、老齢基礎年金の支給が始まる65歳から加算されます。
加算の終了は、妻が65歳に達するときです。

●菜々子

なぜ、妻が65歳になると加算が終わるのですか?

●れいこ先生

妻が65歳に到達すると、老齢基礎年金の受給が始まります。自身の年金を受け取るようになったら、家族手当は終了するよということですね。その後は、振替加算額として妻の老齢基礎年金に上乗せの形で加算されます。
加算は終身続きますよ。

●由美

そういう意味があるのですね。ところで、加算の額はいくらくらいですか?

●れいこ先生

配偶者の加給年金額は、396,000円(年額)ですが、振替加算額は、加算される人の生年月日で決まります。由美さんは、昭和34年10月生まれですので、27,300円(年額)ですね。

●菜々子

次は我家の年金スタイルですが、夫は昭和28年3月生まれで、大学卒業後22歳から60歳まで厚生年金に38年加入。私は、昭和29年12月生まれで、厚生年金に33年加入なので、二人とも60歳から報酬比例部分、65歳から老齢厚生年金と老齢基礎年金になります。今までの話を聞いていて、私たち夫婦の年金スタイルを書いてみました。これでよいでしょうか?

●れいこ先生

うーん、残念ながら悲しいお知らせがあります。この図は誤りです。実は、菜々子さんご夫婦には、加給年金額も振替加算額も加算されません。

●菜々子

えーっ、なぜなんですか?

●れいこ先生

菜々子さんは、厚生年金に20年以上加入していますね。夫に加給年金額が加算される時点で、妻が20年以上の加入期間のある老齢厚生年金や退職共済年金を受給しているときには、加給年金額の加算は停止されることになっています。また、障害基礎年金や障害厚生年金等を受給しているときも同様です。そして、加給年金額が加算されないと、振替加算額の加算もありません。

●菜々子

ということは、私は厚生年金の期間が20年未満で退職すれば、私が65歳に達するまで夫の加給年金額の加算は続きますし、65歳到達以後は、私の老齢基礎年金に年額57,700円の振替加算額が終身加算されたということですね。がっかり...。

●れいこ先生

菜々子さん、何もがっかりすることはありませんよ。厚生年金の加入が20年未満であるのと33年では、将来受け取る老齢厚生年金の金額が違います。また、働いていたということは、給料や賞与もあったということですから、世帯あたりの収入も多かったでしょう。年金の加算の有り無しだけで、悔やむことはありません。

●菜々子

それもそうですね。気を取り直して、再度、私たち共働き夫婦の年金スタイルを書いてみました。これでいいですか?

●れいこ先生

はい、よくできました。これで正解です。夫に加給年金額が加算される65歳時点で、菜々子さんは65歳未満ですが、20年以上加入した老齢厚生年金(報酬比例部分)を受給しているので、夫の加給年金額の加算は停止されます。
では、夫が20年以上厚生年金に加入していても、妻の厚生年金の加入期間によって加給年金額がどのようになるのかをまとめてみましょう。

妻の受給している老齢厚生年金(報酬比例部分)の加入期間が、
  • 20年未満の場合、加給年金額は加算される! → 65歳以後は振替加算額あり
  • 20年以上の場合、加給年金額は加算停止! → 65歳以後は振替加算額なし

●由美

れいこ先生、質問があります。もし、私が老齢基礎年金を繰上げ受給したら、加給や振替はどのようになりますか?

●れいこ先生

老齢基礎年金を繰り上げても加給年金額と振替加算額は、繰り上げなかったときと同様に加算されます。つまり夫の加給年金額は、由美さんが65歳に到達するまで加算されます。由美さんが65歳以後は、振替加算額は減額されずに100%の金額で加算されます。老齢基礎年金は減額されたままです。

●菜々子

では、老齢基礎年金を繰下げたときはどうなりますか?

●れいこ先生

老齢基礎年金を繰り下げても、加給年金額は由美さんが65歳に到達するまでは加算されます。ただ、その後の繰下げ待機期間中については、振替加算額は加算されません。繰下げ受給をした時点から振替加算は100%の金額のまま加算されます。

●菜々子

ということは、繰下げるとその間に支給されるはずであった振替加算額は受け取れずに終わってしまうだけということになるのですね。繰下げたら増えるのは、本体の基礎年金だけということですね。繰下げの際に考慮したい点ですね。

社会保険労務士
原令子
株式会社JEサポート代表取締役
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