2010.12.24
知って得する年金あれこれ 「女性と年金大特集」(4)50代専業主婦からの年金相談(後編)
子供の頃の私は、時計の秒針が1月1日午前0時の日付変更を超えるのを息を止めて真剣に見つめていました。新年の始まりのその瞬間の気持ちが、一年の行方を占うような気がして、できるだけよいことを考えるんだと自分に言い聞かせていました。あれから数十年たちましたが、今もこの習慣は続いています。もうすぐ新しい年がやってきますが、感動と感謝であふれる一年にしようと思っているので、「ありがとう」とつぶやきながら午前0時を迎えたいと思っています。
皆様にとって来年が健やかな一年になることをお祈りいたします。
「女性と年金大特集」シリーズ、今回は、前編に引き続き悩み多き50代専業主婦の女性です。老後の生活設計には年金はなくてはならない存在ですね。来るべき年金生活への疑問を解説する後編です。
- 専業主婦で第3号被保険者のD子さん(58歳・昭和27年3月10月生まれ)
- 20歳から厚生年金に約4年6ヶ月加入して寿退職をしました。
- 結婚後は昭和61年4月より国民年金の第3号被保険者で、国民年金の加入は60歳時点で26年になる予定です。
- 夫は現在59歳で、来年定年を迎えます。厚生年金の加入期間は、42年になる予定です。
D子さんからの質問
A5:「自分で食べる野菜を自分で作る」ということは、食の安全を確保するために、最高のリスク管理になるといえるでしょうね。さて、D子さんご夫婦の老後のリスク管理について、試算をしてみました。老後資金が1,000万円あり、生活費を月額27万円として、60歳から年金生活に入った場合の収入試算は、下記のようになります。なお、年金の月額は、以下のとおりです。
- 報酬比例部分および老齢厚生年金:100,000円
- 老齢基礎年金:66,000円
- 報酬比例部分および老齢厚生年金:7,000円
- 老齢基礎年金:54,000円
- 定額部分:7,600円
※すべて月額です。
試算結果を分析してみると、次の3つの問題点が浮かび上がりました。
- 1,000万円の老後資金は、65歳時点から赤字となります。
- 夫婦ともに65歳以後は、月々37,000円の赤字が継続します。
- もし、87歳まで生存すれば1,011万円の不足額が生じます。
A6:対策を考えるときは、なぜこうなったのかを考えると、解決の糸口が見えてきます。
このような厳しい結果になった原因は、ご主人の年金が60歳から65歳の間、報酬比例部分のみであり、大きくお金が不足してしまうというところにあります。
64歳11月での試算残高を見てみると23万円。つまり、60歳から働かずに年金生活に入ると、5年間で約1,000万円の老後の資金を使い込んでしまい、その後の収支に大きく不足額が生じることとなります。そこでご提案したいのは、次の3つです。
- 節約する
- 働く
- お金にも働いてもらう
A7:節約の金額は、何歳まで老後の資金を保持したいのかによって決まりますが、たとえば80歳を目標にしてみましょう。
シミュレーションで80歳時点での不足額を確認すると約700万円ですね。
ということは、700万円÷240月(60歳から80歳間での月数)≒3万円になりますので、3万円節約をして、月額生活費24万円が目標となります。
A8:働くと年金がカットされるというのは、よく言われることですが、必ずしもそうではありません。カットは、厚生年金に加入して働く場合のみおこなわれ、厚生年金が適用されない働き方であれば、年金は全額受給できます。また、厚生年金に加入した場合でも「標準報酬月額+過去1年の賞与の合計額/12月+年金月額」が28万円以下の場合は、年金は全額受給できます。
A9:1ヶ月の所定労働日数または1日の所定労働時間のいずれかが、正社員の3/4未満であれば厚生年金は適用されませんので、給料の額にかかわらず年金は全額受給できます。
A10:給料の多寡にかかわらず、働くと明確に老後の収支は改善します。次の図をご覧ください。給料が(A)30万円で働く場合と(B)15万円で働く場合の比較です(注:年金月額を10万円。60歳になる前6ヶ月の給料の平均値が45万円、過去1年の賞与の合計が120万円として試算しています)。
働かなかったときは、65歳で赤字になってしまう老後資金が、15万円で働くと86歳まで保持できます。
また、15万円で働く場合は、30万円で働くときに比べて、給料(総支給額)の差は、15万円×60月=900万円となりますが、「年金+給料(手取り額)+高年齢雇用継続基本給付金(※)」の合計額の差は、360万円になっています。
これは在職老齢年金(※)のしくみによるものです。
このシミュレーションからわかることは、給料の額にかかわらず、働くことで老後の収支は大きく好転するということです。
※関連する「原令子の年金コラム」は、「読者からの素朴な相談(5)高年齢雇用継続基本給付金(2008.04.24掲載分)」と、「読者からの素朴な相談(4)在職老齢年金(2008.03.27掲載分)」をご参照ください。