2011.05.26
特集「共済年金」(3)
北国では、一週間で早春から初夏へと季節が変容します。まるでスローモーションの映像を見ているように、冬枯れしていた草花や樹木が、頭をもたげ、新芽を伸ばし、つぼみをつけ、一気にそろって花を咲かせます。樹々は芽吹き、若葉はぐんぐん広がり、大きく枝を茂らせます。冬は、厳しい寒さで凍てつく北国ですが、寒さに耐えてじっとエネルギーを蓄え、春を迎えたときにその力を爆発的に発揮するのですね。
この光景を目の当たりにして、厳しい自然の中で停滞したり、忍耐しているということは、エネルギーを蓄積していることに他ならず、そのエネルギーは時が来れば、すべての生命を躍り上がらせる力となる。そして、必ず春は巡り来るのだということを強烈に感じました。震災で困難な状況におかれている多くの皆様に想いが重なりました。
共済年金に加入していたAさんは、60歳から特別支給の退職共済年金を受け取ることができます。年金額は、報酬比例部分が10万円、職域年金部分が2万円の計12万円になるとのことです。60歳以後も働くことを考えているAさんからのご質問です。
A10:働いた場合に特別支給の退職共済年金(報酬比例部分と職域年金部分)がどのようになるのかということは、Aさんが再就職先で年金制度に加入するのかどうかということと、加入するならば、どの年金制度なのかということによって、違ってきます。ケース別に説明しましょう。
- 厚生年金にも共済年金にも加入せずに働く場合
特別支給の退職共済年金は全額受給することができます。
厚生年金等に加入しない働き方の目安は、労働時間と労働日数のいずれかが、正社員の3/4未満であることとなっています。例えば、正社員が1日に8時間、1ヵ月に20日働く会社の場合、Aさんが1日の労働時間を6時間未満にすれば20日働いても、厚生年金等に加入しないことになります。また、1日の労働時間を8時間とした場合は、労働日数を14日以下とすれば、厚生年金等に加入しないことになります。
ただし、この基準はあくまで目安ですので、ケースによっては、厚生年金等に加入することが適当であると判断される場合もあります。 - 退職前と同じ共済組合に加入して働く場合
特別支給の退職共済年金は、在職年金の仕組みにより、年金の一部または全部が支給停止となります(注:要件によっては全額支給される場合もある)。
共済組合には、国家公務員共済組合と地方公務員等共済組合、私立学校教職員共済の3つの制度がありますが、国家公務員共済組合と地方公務員等共済組合は、同じ公務員の制度ということで通算制度があり、同一共済として取り扱います。私立学校教職員共済については、別の制度として扱われることになっています。 - 厚生年金や他の共済組合(たとえば国家公務員共済組合 → 私立学校教職員共済)に加入した場合
2の在職年金のしくみと同じような調整が行われますが、2と比較して支給停止は緩やかなものとなっています。
A11:では、働いた場合の在職年金のしくみを説明しましょう。
在職年金の受給額を決定するのは、年金月額と総報酬月額相当額です。
●年金月額とは、退職共済年金額の1/12(ひと月あたりの額)です。職域年金部分は含まれず、取り扱いは次のようになります。
共済年金に加入する場合 → 全額支給停止
厚生年金に加入する場合 → 全額支給
●総報酬月額相当額とは、「標準報酬月額」と「過去1年の賞与の合計額の1/12」の合計額です。
受給額の計算は、次の通りです。
●計算の考え方は、「年金月額と総報酬月額相当額を合計し、一定額を超える部分の1/2の額の年金を停止」させるというものです(図の右側参照)。
●もしも、合計額が、一定額より低い場合は、年金は停止されずに全額受け取ることができます(図の左側参照)。
●一定額は、共済年金に加入する場合は28万円、厚生年金に加入する場合は46万円となります。
●これを計算式にしてみると次のようになります。
受給できる年金額(月額)
=年金月額-(年金月額+総報酬月額相当額-●●万円)×1/2
※●●万円:共済年金28万円、厚生年金46万円
A12:次の条件で、Aさんが共済年金に加入した場合と厚生年金に加入した場合の在職年金の仕組みを説明しましょう。
●特別支給の退職共済年金:報酬比例部分10万円(月額)、職域年金部分2万円
●再就職の給与:20万円(賞与なし)
●退職前、過去1年の賞与合計額:120万円
- 共済年金に加入した場合
受給額=10万円-(10万円+30万円-28万円)×1/2=4万円
- 厚生年金に加入した場合
受給額=10万円-(10万円+30万円-46万円)×1/2=10万円
厚生年金に加入した場合は、年金月額と総報酬月額相当額の合計額が46万円を超えないため、年金は調整されずに全額受給できることになります。さらに職域年金部分も受給できますので、年金額は、月額で12万円となります。
この結果を比較してみると、再就職先での給料が同額であるならば、厚生年金に加入して働くほうが有利だと考えられます。
なお、60歳以後初めて厚生年金に加入した場合は、61歳時点(厚生年金の加入期間が1年に達した時点)で特別支給の老齢厚生年金の受給権が発生します。
厚生年金に加入していますので、特別支給の老齢厚生年金は、在職老齢年金の仕組みによる調整の対象になります。しかし、請求をしておけば、退職時に手続きをすることなく、その後の厚生年金の加入期間を加えた老齢厚生年金を受給することができます。