2011.09.22
大きく得する年金の分岐点(3)厚生年金を40年にしよう!
本格的な秋に移り変わろうとするこの季節、私にはささやかな楽しみがあります。それは、金木犀の香りとの再会です。残暑が厳しく、晩夏とも初秋とも判断がつきかねる気候であっても、金木犀の香りは、きっぱりと「秋が来た」ことを告げてくれる、そんな気がするからです。
昨日までは素通りしていた通勤路や散歩道も、突然その香りに満たされます。思わず足を止めると、見慣れたはずの風景もなんだか新鮮な情景に感じられます。少しひんやりとした風に乗って降り立つ金木犀の香り、今年はいつ届くのでしょうか。
A1:あなたが60歳以後、引き続き働く場合、厚生年金の加入が40年になるまでの期間と40年を超えてからの期間の年金増加額は、大きく異なります。40年未満の期間の増加額は、その後に比べて1年間の加入について、約2万円(年額)多く増額します。そのため友人の方は、厚生年金が40年になるまで加入すると有利だといわれたのでしょう。
では、詳しく説明しましよう。図1をご覧ください。厚生年金の加入が38年、40年、42年と延びたときの比較です(報酬比例部分の額は、分かりやすくするために年額100万円としています)。
- 60歳時点で退職して年金生活に入る場合
60歳から特別支給の老齢厚生年金の報酬比例部分100万円(年額)が受給できます。65歳になると報酬比例部分は、老齢厚生年金になりますが、年金額は変わりません。また、老齢基礎年金749,500円(年間)と経過的加算額280円が受給できるようになります。
- 厚生年金が40年になるまでの2年間加入する場合
厚生年金に加入すると、退職した日の翌月(月末退職の場合は、翌々月)から報酬比例部分が増額し、65歳以後の老齢厚生年金も増額します。
しかし、老齢基礎年金は、60歳以後厚生年金の期間が延びても増額はしません。そこで、厚生年金の期間が40年になるまでの間は、経過的加算額が、老齢基礎年金の増額部分に相当する金額(このケースでは約4万円)をカバーします。 - 厚生年金が40年を超えてさらに2年間加入する場合
厚生年金が40年となってからさらに2年間厚生年金に加入すると、退職した日の翌月(月末退職の場合は、翌々月)から報酬比例部分が増額し、65歳以後の老齢厚生年金も増額します。
老齢基礎年金は、60歳以後厚生年金の期間が延びても増額はしません。また、経過的加算額も厚生年金の期間が40年を超えると増加しません。つまり、40年を越えて働く場合は、報酬比例部分と65歳からの老齢厚生年金のみが増額することになります。
年金基礎知識!!【60歳以後働いた場合の年金額の改定】編
- 老齢厚生年金
●本年度60歳になる人の厚生年金の受給スタイルは?
次のようになります。本年度60歳になる人は、60歳から報酬比例部分が受給できます。女性の人は、63歳から定額部分も受給できるようになります。
●報酬比例部分と65歳からの老齢厚生年金は、どのように計算されるの?
(1)報酬比例部分と老齢厚生年金の額は・・・
報酬比例部分と老齢厚生年金の額は、同じ計算式で計算され、前記のようになっています。この式を見ると、給料が高かった人ほど、また、加入月数が長い人ほど年金額が高いことがわかりますね。
老齢厚生年金の額には、60歳以後の加入期間の延びもすべて反映されますので、加入月数が延びれば、年金額は増額します。(2)平成15年4月前後で計算が違うのは・・・
平成15年4月から総報酬制が導入されたためです。総報酬制とは、年金額の計算に給料だけではなく、賞与も含めるというものです。A(導入前の期間)とB(導入後の期間)で別々に計算してから合算し、スライド率(1.031×0.981)を乗じて年金額を計算します。
Aの「平均標準報酬月額」は、給料のみを基に算出した平均額ですが、Bの「平均標準報酬額」は、給料と賞与額を基にした平均額です。賞与を組み込んだことで、A<Bとなり、年金の給付水準に変化が生じないようにするために、給付乗率は、"7.5/1,000" から "5.769/1,000" に引き下げられました。「平均的に年間で3.6ヵ月分のボーナスを支給されている」との前提の下に、導入後の率が定められています。●報酬比例部分と65歳からの老齢厚生年金は、どのように計算されるの?
定額部分の計算は、1,676円の単価に厚生年金加入月数を乗じて求めます。
加入期間に比例して、定額部分は増えてゆきます。ただし、加入月数が480月以上ある場合でも480月として計算するので、40年以上厚生年金に加入しても、定額部分に相当する額は増加しません。また、給料等の平均値は、定額部分には一切影響しません。●増加額の簡単計算は?
(1)報酬比例部分と老齢厚生年金の増加額
(2)定額部分の増加額
●60歳以後の加入期間が年金に反映するのは、いつ?
60歳時点での年金額は、59歳11ヵ月までの被保険者期間に基づいて決定されます。60歳以後引き続き働いて退職した場合は、退職日の翌月(月末退職は翌々月)に退職時改定が行われます。また70歳まで在職の場合には、65歳時に60歳以後の期間分が、70歳時に65歳以後の期間分が再計算され、年金額が改定されます。
- 経過的加算額
●経過的加算額とは何?
65歳から支給される老齢厚生年金に加算されるお金です。
65歳になると、報酬比例部分は老齢厚生年金にかわります。報酬比例部分と老齢厚生年金は、計算式が同じですので、60歳以後に厚生年金の加入期間がなければ、同じ額となります。
また、定額部分にかわって老齢基礎年金が支給されますが、定額部分と老齢基礎年金は、計算式が異なるため、差額が生じます。差額部分をそのままにしておくと年金額が減ってしまうのです。そこで、65歳以後の年金額が減らないようにするために、差額分が「経過的加算額」として、老齢厚生年金に加算されています。計算式は、次の通りです。なお、定額部分が支給されない生年月日の人でも、経過的加算額は前述の考え方に基づいて加算されます。
以上述べましたが、経過的加算額の計算は複雑なので、ねんきん手帳を持参の上、年金事務所で確認されることをお勧めします。