2012.05.24
クイズで挑戦、あなたの年金力チェック!(3)年金の受給スタイル
先の連休に海外に出かけられた方も多かったことでしょう。私もNYに在住している家族のところへ行ってきました。国際線では、出発後すぐに食事が提供されます。食事時間帯以外に搭乗しても、北米以外の違う路線に搭乗しても、どういうわけか、必ず、まず食事なのです。そして終了後は、消灯、強制就寝・・・このスケジュールが特に不満だということではないのですが、養鶏場の鳥たちと我が身が一瞬オーバーラップしてしまいます。そこで今回、キャビンアテンダントさんに聞いてみようと思い立ち、そのスケジュールの真意を尋ねてみました。すると、理由は大きく分けて2つありました。
1つ目は、食事の賞味期間の問題。多くの乗客の複数回にわたるすべての食事を保管できるスペースを持つ冷蔵庫が機内にはないのです。一回目の食事は、積み込んで常温保存となりますので、とにかく一刻も早く提供しなければなりません。そのために出発したらすぐ食事ということになるのです。
そして2つ目は、労働時間の問題。ワンフライト12時間を超える勤務の中ですべての乗務員が、2時間の休憩をとらねばならないので、食後から交代で休憩に入るそうです。約3時間から4時間は乗客にも休んでもらうのは、そのためでした。「こちらの勝手で申し訳ありません」と言葉を加えられました。
理由がわからずブロイラー状態に置かれていたときの小さな引っ掛りは、話を聞いて納得し、すっきりしました。やっぱりわからないことは、率直に尋ねてみることですね。
さて、今回は、「年金の受給スタイル」についてのクイズです。問題文の選択肢の中から正しいものを1つ選んでください。
掲載に当たり、
- 設問・解答・解説は、2012年4月現在の年金制度で作成しました。
- その他、関連する制度等は、当コラムのバックナンバーや下部の「参考」等をご参照ください。
【年金の受給開始年齢】
- 老齢基礎年金は、65歳にならなければ受け取ることができない
- 老齢基礎年金は、希望すれば60歳以後、受け取ることができる
解説:老齢基礎年金は65歳に到達した月に受給権(年金を受け取る権利)が発生し、翌月分から支払いが開始されます。つまり、65歳から受給するのが原則です。
しかし、60歳時点で受給資格を満たしている人は、繰上げ請求をすることができます。繰上げ請求をすると、ひと月繰り上げるごとに、0.5%の割合で年金額が減額されます。たとえば60歳で繰上げ請求をすると、60月×0.5%=30%の減額となりますので、受給率は70%となり、この率は終身続きます。繰上げ請求は、ひと月ごとに受給率が決まっていて、下記のようになります。
- 老齢厚生年金は、生年月日によって支給開始年齢が決まっている
- 老齢厚生年金は、生年月日と性別によって支給開始年齢が決まっている
- 老齢厚生年金は、生年月日と性別と厚生年金の加入月数によって支給開始年齢が決まっている
解説:厚生年金の加入月数が12ヵ月未満の場合は、性別や生年月日にかかわらず、65歳から老齢厚生年金が支給されます。
一方、加入期間が 12ヵ月以上の場合は、生年月日と性別で支給開始年齢や支給される年金が次の表のようになります。現在、60歳から65歳までの間、報酬比例部分や定額部分からなる「特別支給の老齢厚生年金」が支給されていますが、まずは定額部分を次に報酬比例部分を廃止し、65歳支給に移行するスケジュールが進行中です。
本年度60歳を迎える昭和27年度生まれの方の場合、男性は65歳未満の間、報酬比例部分のみの支給となります。女性は、60歳から報酬比例部分が支給され、64歳からは定額部分も支給されます。男性と女性の支給開始年齢の引き上げスケジュールは、男性より女性が5年遅れとなっている点に注意してください。
なお、現在の法律では、最終的には男性も女性も65歳から老齢厚生年金と老齢基礎年金が支給されることとなっていますが、この支給開始年齢の引き上げについても将来的な課題として、検討される予定となっています。
【長期加入者の特例】
- 60歳から報酬比例部分、65歳から老齢厚生年金と老齢基礎年金を受け取るこができる
- 60歳から報酬比例部分と定額部分、65歳からは老齢厚生年金と老齢基礎年金を受け取ることができる
解説:昭和27年度生まれの男性の一般的な受給スタイルは、60歳から65歳の間、特別支給の老齢厚生年金の報酬比例部分のみが支給され、65歳から老齢厚生年金と老齢基礎年金支給されることになります。
しかし、長期加入者(厚生年金の加入月数が528月(44年)以上ある場合)と障がい者(障害等級3級以上の障害の状態にある人)には特例があり、報酬比例部分の支給に合わせて、定額部分と加給年金額(加算の対象となる配偶者がいる場合のみ)が加算された年金を受け取ることができるようになっています。
この相談者は長期加入者に該当しますので、報酬比例部分が支給される60歳時点から、定額部分(年間786,800円)も合わせて支給されます。また、加算の対象者となる配偶者があれば、60歳から加給年金額(年額393,200円)も加算されます。
ただしこの特例は、60歳以後厚生年金に加入していないことが条件となり、厚生年金に加入すると定額部分と加給年金額は支給されなくなります。さらに、報酬比例部分については、在職老齢年金の対象となり、年金の一部または全部が支給停止となりますので、60歳以後の働き方を検討するときには、注意してください。
【加給年金額】
- 妻(配偶者)がいれば必ず加算される
- 妻(配偶者)が65歳未満であり、生計維持関係がある場合に加算の対象となる
解説:加給年金額は、年金の家族手当のようなもので、配偶者や子を対象に加算が行われる制度です。しかし、配偶者がいれば必ず加算されるわけではありません。加算のための配偶者の要件は、次の2つです。
(1)配偶者が65歳未満であること
そのため、配偶者が65歳に達すると加給年金額の加算は終了します。その後は、配偶者の老齢基礎年金に振替加算額(生年月日によって金額が異なる)が終身加算されます。
(2)生計維持関係があること(配偶者の前年の年収が850万円未満であること)
ただし、生計維持関係の有無を判断する時点で、前年の年収が850万円を超えていても、5年以内に定年により退職する場合には、年収は問わずに加算が行われます。
以上の要件がありますので、夫に加給年金額が加算される時点で、妻がすでに65歳を超えている場合や、妻の前年の年収が850万円を超えているケースなどでは、加算はありません。
正解:2- 厚生年金の加入月数に関係なく加給年金額は加算される
- 厚生年金の加入月数が原則240ヵ月以上ある場合だけ加給年金額は加算される
解説:加給年金額はすべての老齢厚生年金に加算されるのではなく、厚生年金の加入期間が原則240月(20年)以上ある場合のみに加算されることになっています。残念ながら、厚生年金の加入期間が10年の老齢厚生年金には、加給年金額は加算されません。
正解:2- 妻が原則240月(20年)未満の老齢厚生年金を受給する場合には、加算は継続される
- 妻の厚生年金の期間にかかわらず、妻が65歳に達するまでの間加算される
解説:夫に加算されている加給年金額は、妻が特別支給の老齢厚生年金を受給すると、その時点で加算が停止される場合と、加算が引き続く場合があります。どちらのケースになるのかは、妻の厚生年金の加入月数によって決まります。
(1)妻の厚生年金の加入月数が原則240月(20年)未満であれば、妻が特別支給の老齢厚生年金を受給しても加給年金額は夫の老齢厚生年金に引き続き加算されます。
(注)加給年金額は老齢厚生年金に、振替加算額は老齢基礎年金に加算されます(以下同じ)。(2)妻の厚生年金の加入月数が原則240月(20年)以上であれば、妻が特別支給の老齢厚生年金を受給すると、夫の加給年金額は加算が停止されます。
正解:1【厚生年金の繰上げ支給・繰下げ支給】
- 報酬比例部分は繰り上げることはできないので、62歳からの受給となる
- 60歳以後であれば、報酬比例部分と老齢基礎年金を繰り上げて受給することができる
解説:報酬比例部分が61歳以後から支給開始されるケース(男性:昭和28年4月2日から36年4月1日生まれ/女性:昭和33年4月2日から41年4月1日生まれ)では、経過的に老齢厚生年金の繰上げ請求をすることができます。老齢厚生年金の繰上げ請求をする人は、同時に老齢基礎年金の繰上げ請求もしなければなりません。繰上げのイメージは次のようになります。
なお、老齢基礎年金の繰上げは、障がい者特例、長期加入者の特例に該当する人を除いて、全部繰上げとなります。
- 老齢基礎年金は繰り下げることができるが、老齢厚生年金は繰り下げることはできない
- 老齢厚生年金は繰り下げることはできるが老齢基礎年金は繰り下げることはできない
- 老齢厚生年金と老齢基礎年金はどちらも繰り下げることはできる
解説:老齢厚生年金と老齢基礎年金は、どちらも繰り下げて受給することができます。繰り下げる際には、同時に繰り下げる必要はありません。別々に繰り下げることも可能です。
ただし、老齢厚生年金に加給年金額が加算されている場合には、繰り下げても加給年金額は増額しませんし、さかのぼっての支給も行われませんので、繰下げ期間中に支給される加給年金額は、受け取れないまま終わってしまいます。また、老齢基礎年金を繰り下げる際は、振替加算額が加算される場合であっても、やはり繰下げ期間中の振替加算額は受け取れないまま終わってしまいますし、繰下げ支給が開始しても増額しません。繰下げの際には、これら加算額について不利な点がありますので、注意してください。