年金コラム

2012.08.23

クイズで挑戦、あなたの年金力チェック!(5)働いたときの年金

ご主人が定年退職を迎える日の夜、どこのご家庭でもやはりそれはちょっと家庭史に残る特別な日。
「お父さん、長い間お疲れさまでした。子供を大学に行かせることができたのも、家のローンを何とか払ってこられたのも、みんなあなたのおかげです。とりあえずは肩の荷を降ろしてゆっくりしてくださいね。」・・・なんて、いつもはなかなか聞けない奥様からのリップサービス。
「いやいやホントにホッとしたよ。でもあんたも、パートに出てよく頑張ってくれたね。」
食卓には、鯛の尾頭付きとはいかなくても、鯵の尾頭付きの塩焼きぐらいは並んでいるでしょう。
冷たく冷やしたビールも、いつもはプリン体カットの発泡酒のはずが、本日に限り普通のビールが並んでいたりするかもしれませんね。
「ところであなたは、これから先は会社と新しい契約で働くのよね」
「うん、そうだよ。今までのことはいったんご破算で、またイチからだ。」
・・・ご夫婦の会話は続きます。
「そこで提案があるの。私たちも新しい契約をしない?」
「なんだそれは!?」
・・・さては、これがよく聞く退職時の熟年離婚提案なのか・・・? はては退職金を分けてポイポイされるってハメなのか・・・。
「あなたもめでたく定年退職。だから私も今日限り専業主婦を退職します!」
「エッ、そっそれって・・・やっぱり別れるってことか!?」
「いえいえとんでもありません。ただ、専業主婦を退職するだけです。だからこれからはあなたも掃除、洗濯それに料理も分担してね。よろしくね。」
上機嫌で誇らしげな奥様を前に、複雑な面持ちながら内心どこかほっとしているご主人でした。

今回は、「働いたときの年金」についてのクイズです。問題文の選択肢の中から正しいものを1つ選んでください。

掲載に当たり、

  • 設問・解答・解説は、2012年4月現在の年金制度で作成しました。
  • その他、関連する制度等は、当コラムのバックナンバーや下部の「参考」等をご参照ください。

【在職老齢年金】

Q1:私の会社は60歳で定年ですが、退職後も働きたいと思っています。働くと年金がカットされると聞きましたが、本当ですか?
  1. 働くと年金はカットされる
  2. 給料の額によって、カットされるかどうかが決まる
  3. 働く時間と日数によって、カットされるかどうかが決まる

解説:60歳以後も厚生年金に加入する場合に受給する老齢厚生年金を「在職老齢年金」といいます。在職老齢年金での在職とは、働くことではなく、厚生年金に加入することを意味します。つまり、年金がカットされるのかどうかは、再就職先で厚生年金に加入するのかどうかによって決まります。
厚生年金に加入すれば、在職老齢年金の仕組みによって、原則年金の一部または全部が、支給停止になります。加入しない場合は、給料や収入の額にかかわらず、全額受給することができます。
ところで、厚生年金に加入するのかどうかは、働く時間や日数によって決まります。所定労働時間と所定労働日数のいずれもが正社員の4分の3以上であれば、厚生年金に加入することになります。例えば、正社員の1日の労働時間が8時間で、1か月の労働日数が240日の場合、1日に6時間以上、かつ、1か月に15日以上働く場合は厚生年金の被保険者となります。

正解:3
Q2:厚生年金に加入すると在職老齢年金の仕組みで年金がカットされるようなので、働く時間数や日数を少なくして、厚生年金に加入しない方が有利でしょうか?
  1. 厚生年金に加入しない方が有利である
  2. 有利・不利は、ケースによって異なる
  3. 厚生年金に加入する方が有利である

解説:60歳以後の厚生年金の加入については、在職老齢年金の仕組みにより年金が減額されることばかりに注目しがちですが、加入することのメリットもあります。特に(1)の長期加入者の特例に該当する場合は、メリットが大きいので、ご自身の60歳時点での厚生年金の加入月数に注意してください。

(1)65歳に到達するまでの間に厚生年金の加入期間を528月(44年)以上にして、被保険者資格を喪失(退職または、厚生年金が適用されない範囲の短時間で働く)すると、その翌月から長期加入者の特例に該当し、65歳までの間、報酬比例部分の他に定額部分(加算される場合は加給年金額も)が受給できます。
例えば、本年度60歳に到達する男性で、60歳時点で42年の厚生年金の加入期間のある人は、62歳まで厚生年金に加入し、その後被保険者資格を喪失すると、翌月分の年金から定額部分(年額約80万円)と対象者がいれば加給年金額(年額約40万円)が、報酬比例部分にプラスして支給されます。65歳まで加算が続けば、120万円×3年=360万円の年金額増加となります。

(2)引き続き厚生年金に加入することで、配偶者(第3号被保険者)は、そのまま第3号被保険者の資格を継続させることができます。もし、厚生年金に加入しなければ、配偶者は第1号被保険者となり、国民年金の保険料負担が発生します。

(3)老齢厚生年金の報酬比例部分は、働いた月数に応じて下記の計算式で計算した額が増額します。

年収×1/12×0.937(再評価率)×5.769/1000×60歳以後の厚生年金の加入月数×1.031×0.978
=年収×1/12×60歳以後の厚生年金の加入月数×0.00545

(注)0.00545=0.937×5.769/1000×1.031×0.978

なお、60歳時点で厚生年金の加入月数が480月未満の場合は、480月に達するまでの月数に対応した定額部分の金額と経過的加算額が増加します。増加額はどちらも1年の加入で約2万円(年額)です。

(4)20年未満の厚生年金の加入期間を20年にすると、加給年金額加算の期間要件を満たすことになります。そのため、加給年金額の加算対象者(加算開始時点で65歳未満の配偶者で、前年の年収が850万円未満かつ、障害年金や加入期間が20年以上ある老齢厚生年金や退職共済年金を実際に受給していない人)がいれば加給年金額が加算されます。

正解:2(在職老齢年金のしくみによるカットもあるけれど、加入した方が有利なこともある)
Q3:在職老齢年金の計算では、給料以外の家賃等の不動産収入や運用による収入、利息等も年金のカットに関係ありますか?
  1. 給料の他に収入があれば、すべての収入が在職老齢年金の計算の対象となる
  2. 給料のみが在職老齢年金の対象となる
  3. 給料と賞与(過去1年分)が在職老齢年金の対象となる

解説:在職老齢年金は、「給料」「賞与」「年金月額」を基に計算をします。家賃収入や利息、運用収入等は、在職老齢年金の計算には一切関係ありません。
では、在職老齢年金の計算について、もう少し詳しく説明しましょう。在職老齢年金の受給額は、「総報酬月額相当額」と「年金月額」」で決定されます。「総報酬月額相当額」とは、給料(標準報酬月額)と過去1年の賞与(標準賞与額)の総額の1/12の合計額です。「年金月額」とは加給年金額を除いた年金の1/12の額で、具体的には次のようなルールがあります。

(1)「総報酬月額相当額」と「年金月額」の合計が28万円(65歳以上の人は46万円。以下同じ)以下の場合は全額受給できます(図の左側参照)。

(2)「総報酬月額相当額」と「年金月額」の合計が28万円を超える場合は超えた額の1/2の額が支給停止されます(図の右側参照)。

(3)「総報酬月額相当額」が46万円を超える場合は、46万円を超える額についてもさらに支給停止されます。

(4)加給年金額は、加算される時点で、老齢厚生年金が1円でも支給されれば、全額が加算されます。全額支給停止の場合は、加給年金額も加算されません。

正解:3
Q4:在職老齢年金の額は、ずっと一定の金額ですか?
  1. 給料(標準報酬月額)が変わらなくても、支給される年金額が変わることがある
  2. 給料(標準報酬月額)が変わらない限り、支給される年金額は同じである
  3. 最初に決定された金額がそのまま支払われ、改定されない

解説:在職老齢年金の計算に使う「総報酬月額相当額」には、過去1年の標準賞与額が含まれています。60歳で定年を迎えた人は、60歳直後の総報酬月額相当額に現役時代の高かった賞与が含まれるため、再就職で給料が低減しても年金が全額支給停止となるケースが多くみられます。
しかし、月の経過とともに、過去1年の範囲から現役時代の賞与が外れてゆきますので、総報酬月額相当額は下がってゆき、下がった額の1/2に相当する額の年金が増えます。たとえば、60歳前過去1年の賞与月が6月と12月だったとすると、まず、年金の受給開始後の最初の6月に在職老齢年金の受給額が改定されます。次いで、12月にも同様に受給できる在職老齢年金の受給額が改定されます(下図参照)。

正解:1

【高年齢雇用継続基本給付金】

Q5:定年退職後の再就職先が決まっていないので基本手当を受給しようと思いますが、受給後に再就職した場合でも高年齢雇用継続基本給付金は受け取れますか?
  1. 基本手当を受けても高年齢雇用継続基本給付金を受けることはできる
  2. 基本手当を受けると高年齢雇用継続基本給付金を受けることはできない

解説:高年齢雇用継続基本給付金の受給要件には「基本手当を受給していないこと」があり、基本手当を受給してしまうと、給付金を受け取ることはできません。
基本手当の所定給付日数を100日以上残して再就職(雇用保険加入)した場合は、要件を満たせば「高年齢再就職給付金」が受給できます。この給付金の受給要件は「高年齢雇用継続基本給付金」とほとんど同じです。しかし、受給できる期間が、高年齢雇用継続基本給付金が60歳以上65歳未満の間で最大5年間であるのに対し、「高年齢再就職給付金」は、所定給付日数の残日数が200日以上の場合は2年間、100日以上200日未満の場合は1年間と短くなってしまいます。
このことを踏まえた上で、基本手当を受け取るかどうかを検討しましょう。

正解:2
Q6:高年齢雇用継続基本給付金を受給すると、特別支給の老齢厚生年金に影響はありませんか?
  1. 高年齢雇用継続基本給付金を受給すると厚生年金への加入・未加入に関らず、年金の一部がカットされる
  2. 高年齢雇用継続基本給付金を受給すると厚生年金の被保険者の場合は、年金の一部がカットされる
  3. 高年齢雇用継続基本給付金を受給しても、厚生年金への加入・未加入に関らず、年金には影響しない

解説:高年齢雇用継続基本給付金を受給すると特別支給の老齢厚生年金の一部がカットされるという調整は、厚生年金の被保険者の場合に行われます。給付金を受給しても厚生年金の被保険者でなければ、調整は行われず、年金は全額受給できます。1週間に30時間以上働く場合は、厚生年金と雇用保険の両方に加入しますので、調整が行われます。1週間に20時間以上30時間未満で働く場合は、雇用保険のみに加入しますので、高年齢雇用継続基本給付金は受給できますし、年金も全額受け取ることができます。

正解:2

【参考】高年齢雇用継続基本給付金の支給率と停止率

60歳になるまでの6か月間の給料の平均値と60歳以後の給料を比較した低下率によって、「標準報酬月額×0.18~6%」の額が支給停止となります。
具体的な金額は、、61%未満に低下した場合で次のようになります。

給付金の額=再就職時の給料×15%
年金の支給停止額=再就職時の標準報酬月額×6%

社会保険労務士
原令子
株式会社JEサポート代表取締役
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