2012.09.27
クイズで挑戦、あなたの年金力チェック!(6)遺族の年金
今年の夏、一度は訪れてみたいと思っていた世界自然遺産の一つ、カナディアン・ロッキーに行きました。白い氷河を抱いてそびえる3,000メートル級の峰々は、視界の中に途切れることなくどこまでも広がって行きます。その力強い雄大な自然は、心の中にくすぶっているマイナスの想いやこだわりなどを木端微塵に吹き飛ばすような衝撃を与えてくれました。そして氷河の溶け水でつくられた数々の美しい湖は、神秘的なエメラルド色に輝き、周りの山と氷河を鏡のように映し込んで別世界を創出しています。太陽の光や時間帯で刻々と変化する様は、本当に宝石のようでした。湖畔にたたずんでいると、神秘的なエネルギーが一掃された心の中にどんどん流れ込み、からだ中を駆け巡って、周りに溢れ出してゆくように感じられました。 雄大で神秘的な大自然は、力強くかつ繊細に、人を目覚めさせ、励まし、癒し、新たなエネルギーを吹き込んで再生してくれる・・・それを体感した貴重な旅でした。
今回は、「遺族の年金」についてのクイズです。問題文の選択肢の中から正しいものを1つ選んでください。
掲載に当たり、
- 設問・解答・解説は、2012年4月現在の年金制度で作成しました。
- その他、関連する制度等は、当コラムのバックナンバーや下部の「参考」等をご参照ください。
- 死亡した人については、滞納期間等がなく保険料を納付していることとします。また、遺族に該当する人については、死亡した人と生計維持関係があったものとします。
- 遺族基礎年金と遺族厚生年金の遺族の範囲は、同じである
- 遺族基礎年金の遺族の範囲の方が、遺族厚生年金より広い
- 遺遺族厚生年金の遺族の範囲の方が、遺族基礎年金より広い
解説:遺族年金を受け取ることができる遺族の範囲は、遺族厚生年金の方が広くなっています。
遺族基礎年金は、「子のある妻」と「子」(子のない妻や夫は、遺族となりません)ですが、遺族厚生年金は、「配偶者・子」「父母」「孫」「祖父母」となっています。年金でいう「子」とは、「18歳年度末までの間にある子」「障害等級1・2級に該当する障害の状態にある20歳未満の子」でいずれも未婚の子となっています。また、配偶者には夫も含まれます。ただし、夫、父母、祖父母が遺族になるのは、死亡者が死亡当時、55歳以上であることが条件です。例えば、就職したばかりの子(23歳)が亡くなり、父親が50歳、母親が48歳の場合には、父母は遺族厚生年金を受け取ることはできません。
- 妻は、遺族基礎年金を終身受給することができる
- 妻は、遺族基礎年金を子供Cが18歳年度末に達するまでの間、受給することができる
- 妻は、遺族基礎年金を子供Cが20歳に達するまでの間、受給することができる
解説:遺族基礎年金を受給することができる遺族は、「子のある妻」と「子」です。
年金でいう「子」とは、「18歳年度末までの間にある子」「障害等級1・2級に該当する障害の状態にある20歳未満の子」でいずれも未婚の子とされています。
そのため、子の成長に伴い、遺族基礎年金の額は変わってゆきます。
次の図は、自営業の夫が、3人の子供と妻を残して亡くなった場合の遺族基礎年金の変化です。
夫が死亡当時に3人の子供がいた妻は、遺族基礎年金の基本年金額に3人分の子の加算額がプラスされた年金額で受給がスタートします。
その後、Aが18歳年度末を迎えると子の加算額のうち75,400円が減額されます。次にBが18歳年度末を迎えると子の加算額のうち226,300円が減額されます。そしてCが18歳年度末を迎えると、子の加算がなくなるだけではなく、妻は「子のない妻」となるため、遺族基礎年金は失権します。
- 法律上の妻しか受け取ることはできない
- 子がいれば内縁関係の妻でも受け取ることができる
- 内縁関係の妻であっても受け取ることはできる
解説:年金制度では、配偶者について「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係にある人も含む」と定められています。そのため、内縁関係であっても婚姻の届出さえすれば、法律上の配偶者と同様であり、生計維持関係があると認められる場合は、配偶者として遺族年金が受給できる遺族に該当します。
(注)「生計維持関係」の認定の基準は・・・「生計同一」かつ「前年の年収が850万円未満」
正解:3- 夫に遺族基礎年金が支給される
- 子に遺族基礎年金が支給される
- 子に遺族基礎年金の受給権が発生するが、父と同居している間は支給停止となり実際には受給できない
解説:遺族基礎年金を受給できる遺族は、「子のある妻」と「子」で、夫は遺族になれません。そこで、専業主婦の妻が死亡した場合、「子」に遺族基礎年金の受給権が発生します。
ところが、「生計を同じくするその子の父または母がいる場合は、子の遺族基礎年金は支給停止」というルールがあるため、父と同居している間は、子の遺族基礎年金は支給停止となり、実際には受給することはできません。
例えば、子が父と別居し、祖父母と同居することになったような場合は、遺族基礎年金の支給停止は解除されて子に遺族基礎年金が支給されます。
- 妻が亡くなった時点から、夫は遺族厚生年金を受給できる
- 妻が亡くなった時点で夫に遺族厚生年金の受給権が発生するが、実際に支給されるのは60歳以後となる
- 妻が亡くなっても夫は遺族厚生年金を受給できない
解説:まず、夫が遺族厚生年金の受給権者になれるかどうか検討してみましょう。
夫は、妻の死亡時点で「55歳以上である」「前年の年収が850万円未満である」の2つの条件を満たしているので、遺族厚生年金の受給権者となります。しかし実際に受給できるのは60歳からです。
では、60歳から夫は、遺族厚生年金を受給するのでしょうか?
実際に受給するかどうかは、夫自身の年金と比較して決めることになります。というのも、65歳未満の間は、特別支給の老齢厚生年金と遺族厚生年金のいずれか有利なものを選択することになっているからです。遺族厚生年金の額は、妻の老齢厚生年金の3/4ですので、一般的には、夫自身の年金が高くなるケースが多く、夫は自身の老齢厚生年金を選択することになります。
次に、65歳からはどうなるのでしょうか?
65歳以後、夫はまず、自身の老齢厚生年金を受給します。その上で、遺族厚生年金の額が夫の老齢厚生年金の額を超えていれば、超えた分が遺族厚生年金として支給されますが、夫の老齢厚生年金が高い場合は、遺族厚生年金を実際には受給しないという状態が続きます。
65歳以後は以上のような調整が行われるので、夫は自身の老齢厚生年金だけを受給するケースが多くなります。そのため「共働きの場合、妻が亡くなっても夫は遺族厚生年金を受け取れない」といわれるのです。
正解:2- 65歳以後は、遺族厚生年金と老齢厚生年金は両方を全額受給することができる
- 65歳以後は、遺族厚生年金と老齢厚生年金はどちらか一つを選択して受給する
- 65歳以後は、老齢厚生年金を受給するが、遺族厚生年金の額が老齢厚生年金よりも高い場合は、差額を遺族厚生年金として受給する
解説:妻の報酬比例部分が3万円、定額部分が9万円(月額。以下同様)、遺族厚生年金が9万円受給できるとすると、遺族と老齢の年金の選択は次のようになります。
- 妻が60歳以上65歳未満の間
遺族厚生年金と特別支給の老齢厚生年金のどちらか一方を選択して受給します。
報酬比例部分のみを受給する期間は、老齢厚生年金3万円<遺族厚生年金9万円なので、遺族厚生年金を選択します。定額部分が受給できるようになると、老齢厚生年金10万円>遺族厚生年金9万円となるので、老齢厚生年金を選択します。このように時期によって、年金の選択を変えること(将来に向かってならば何度でも)も可能です。 - 妻が65歳以後
まず、自身の老齢厚生年金(3万円)を受給します。そして遺族厚生年金(9万円)>老齢厚生年金(3万円)なので、差額(6万円)を遺族厚生年金として受給します。
結果的に受け取ることができる年金は、老齢基礎年金+老齢厚生年金(3万円)+遺族厚生年金(6万円)になります。
- 妻は遺族基礎年金を受給できる
- 妻は遺族厚生年金を受給できる
- 妻は遺族基礎年金と遺族厚生年金を受給でき
解説:遺族厚生年金は、死亡者が下記の要件を満たしていた場合、遺族に支給されることになっています。
夫は現在下記(5)の要件に該当するので、万一の時には、妻は遺族厚生年金を受け取ることができます。なお、(5)の要件の「老齢基礎年金の受給に必要な加入期間の要件」とは、受給資格期間のことで、国民年金と厚生年金、共済年金の加入期間が原則25年以上あれば、受給資格期間を満たしていることになります。
なお、遺族基礎年金は子がいないので受給できません。
(1)被保険者の死亡
(2)被保険者であった方が加入中に初診日のある病気・けが等で、初診日から5年以内に死亡
(3)障害厚生年金1・2級の受給権者の死亡
(4)老齢厚生年金の受給権者の死亡
(5)老齢厚生年金の受給に必要な加入期間の要件を満たしている方の死亡
- 240万円×1/2=120万円
- (124万円+76万円)×3/4=150万円
- 124万円×3/4=93万円
解説:老齢厚生年金を受給している人が亡くなった場合の遺族厚生年金の年金額は、死亡した人の老齢厚生年金(報酬比例部分相当額)の額の3/4となります。老齢基礎年金や加給年金額は、受給権者が死亡しても遺族厚生年金には反映しません。
正解:3