年金コラム

2013.05.01

「ねんきん定期便活用術」(4)

「ずっと続けている、身体に良いことは何かありますか?」と聞かれて、(テレビなどを含む)「ラジオ体操」と答える方が推定2,600万人から2,800万人もいるそうです(NPO法人日本ラジオ体操連盟発表の数字です)。
実は私も、NHKの教育テレビで毎朝6時25分からの10分間放送されている、「みんなの体操」や「ラジオ体操」をやっています。時に寝過ごしたりしてできないときもありますが、そんな日は何となく身体がシャキッとしない感じです。連盟によると朝の体操は覚醒作用があるそうです。また、筋肉は三日休むと弾性は元に戻ってしまうそうで、できれば毎日、それが難しい場合は三日以内にもう一度、という具合に継続することのほうが大切であると、即効性ではなく毎日の積み重ねによる継続効果を強調しています。
私の友人は、毎日、テレビ体操を録画し、日課のように実践しています。用事や旅行等で体操ができないときには、その録画分の体操をすべて行ってから消去してゆくという方法で、1年365回分をやりこなしています(すごい人がいるものですね)。
皆様も「いつでも、どこでも、だれでもできる」ラジオ体操をはじめてみませんか?余談ですが、ラジオ体操は、逓信省簡易保険局(現在のかんぽ生命)が昭和3年に「国民保健体操」として制定したのが始まりだそうです。

「ねんきん定期便活用術」その4

前回は、ねんきん定期便を使って年金生活の問題点を確認しました。60歳で退職して、その後は働かないという選択をした場合に、隼人さんご夫妻の老後資金1,000万円は、65歳台で赤字となり、その後もずっと赤字の額が増してゆくという結果(下表参照)になりました。
老後の収支が赤字になる場合の対策は、ふたつあります。ひとつは「支出を抑える=節約」で、安心年金生活の生活費の簡単な目途のつけ方についても前回ご紹介しました。

「隼人さん・奈津子さんの年金生活と老後資金の収支表」

さて、今回はふたつ目の対策である「収入を増やす」ことを考えてみましょう。
年金相談では、60歳以後働くことに関して、よく寄せられる相談は、次のようなものです。
「働くと年金がカットされると聞きました。それならば、働かない方が得なのでしょうか?」
「再就職で大幅に給料が下がります。この給料では、働いても将来の生活にプラスになるように思えませんが・・・」
「再就職をしたら、雇用保険からお金が出るそうですが、どのようなお金ですか?」

60歳で定年退職を迎え、年金受給は61歳。この1年間、働かなければ無収入になる世代の皆さんは、働く機会があれば、働きたいとお考えの方も多いことでしょう。
今回は、平均的なサラリーマンであった隼人さんが働いた場合の年金と老後資金の収支表を作って、働くことの効果を検証してみましよう。

◆隼人さん(昭和28年11月11日生まれ)59歳の会社員(配偶者等の詳細は、前回を参照してください。)

・隼人さんは、今年11月の誕生日で定年を迎えます。
・年金は、61歳から老齢厚生年金の報酬比例部分が120万円(年額。以下同じ)
65歳から老齢厚生年金(120万円)と老齢基礎年金(78万6,500円)
・60歳からは、再就職して月額10万円の給料(賞与なし)でアルバイト(1週間の所定労働時間25時間)勤務の予定です。また、60歳時点での給料は、40万円でした。
・雇用保険には加入、厚生年金には未加入となります。
・老後資金は、1,000万円、生活費の年額は300万円(月額25万円)です。

◆隼人さんが働いた場合の年金と老後資金の収支表を作ってみましょう。

(1)収入・給付金の記入について
・60歳での収入は、「給料×12ヵ月+賞与+給付金」です。
・61歳での収入は、「給料×12ヵ月+賞与+給付金+年金」になります。
・厚生年金に未加入で働く場合、年金はカットされることなく全額受給できます。
・「給付金」とは、高年齢雇用継続基本給付金のことで、雇用保険に加入して働く場合に一定の要件に該当すれば、受給できます。
なお、雇用保険に加入するには、1週間の所定労働時間が20時間以上であり、31日以上継続雇用の見込みがあることが条件です。

  • 隼人さんのケースでは、次のようになります。

    ・60歳台での年収138万円=10万円×12ヵ月+1.5万円×12ヵ月
    ・61歳台での年収258万円=10万円×12ヵ月+1.5万円×12ヵ月+120万円
    ・給付金額=10万円×15%=1.5万円

【高年齢雇用継続基本給付金】

  1. 「高年齢雇用継続基本給付金」とは?
    60歳以後働き続ける場合に、給料が60歳時点に比べて、75%未満に低下した時に雇用保険から支給される給付金です。
  2. 受給要件は、どのようになっていますか?
    次のすべての条件に該当している場合に請求できます。
    ①60歳から65歳までの各月の賃金が60歳時点の75%未満であること
    ②雇用保険の被保険者であること
    ③基本手当(いわゆる失業保険)を受給していないこと
    ④60歳到達日までに雇用保険の被保険者期間が5年以上あること
    (5年に満たない時は、5年以上になった時点から)
  3. 高年齢雇用継続基本給付金の額は?
    再就職した時の給料が60歳時点の給料の61%以下に低下した場合は、再就職時の給料の15%相当額となります。
    60歳時点の賃金の61%超75%未満に低下した場合は、その低下率に応じた支給率となります。なお、各月の賃金が34万3,396円を超える場合は支給されません。(給付額早見表参照)
  4. 受給できる期間は?
    最長で60歳到達月から65歳到達月までの間受給できます。
 

高年齢雇用継続給付 給付額早見表(目安月額:円)

60歳以後
各月の賃金
60歳到達時賃金(賃金日額×30日分)
45万600円以上 40万円 35万円 30万円 25万円 20万円 15万円
35万円 0 0 0 0 0 0 0
34万円 0 0 0 0 0 0 0
33万円 5,181 0 0 0 0 0 0
32万円 11,712 0 0 0 0 0 0
31万円 18,259 0 0 0 0 0 0
30万円 24,810 0 0 0 0 0 0
29万円 31,320 6,525 0 0 0 0 0
28万円 37,884 13,076 0 0 0 0 0
27万円 40,500 19,602 0 0 0 0 0
26万円 39,000 26,130 0 0 0 0 0
25万円 37,500 32,675 8,175 0 0 0 0
24万円 36,000 36,000 14,688 0 0 0 0
23万円 34,500 34,500 21,229 0 0 0 0
22万円 33,000 33,000 27,764 3,278 0 0 0
21万円 31,500 31,500 31,500 9,807 0 0 0
20万円 30,000 30,000 30,000 16,340 0 0 0
19万円 28,500 28,500 28,500 22,876 0 0 0
18万円 27,000 27,000 27,000 27,000 4,896 0 0
17万円 25,500 25,500 25,500 25,500 11,441 0 0
16万円 24,000 24,000 24,000 24,000 17,968 0 0
15万円 22,500 22,500 22,500 22,500 22,500 0 0
14万円 21,000 21,000 21,000 21,000 21,000 6,524 0
13万円 19,500 19,500 19,500 19,500 19,500 13,052 0
12万円 18,000 18,000 18,000 18,000 18,000 18,000 0
11万円 16,500 16,500 16,500 16,500 16,500 16,500 0
10万円 15,000 15,000 15,000 15,000 15,000 15,000 8,170

 

<使い方>
60歳時点で40万円の給料の方が60歳以後20万円で働いた場合

横列の40万円と縦列の20万円の交差する金額3万円が給付額

(注1)60歳到達時賃金:60歳到達直前6ヵ月間の賃金平均額
(注2)60歳到達時の賃金月額の上限450,600円/下限69,600円
(注3)高年齢雇用継続給付の支給限度額343,396円
(注4)支給額が1,856円未満の場合は不支給(H25.7.31までの金額)

(2)年間収支を記入
隼人さんのご家庭では、年間の生活費が300万円必要ですので、300万円から収入・給付金の額を引くと、年間収支が計算できます。

(3)資産残高を記入
年間収支がマイナスの場合は、老後資金1000万円から取り崩してください。
プラスの場合は、老後資金が増えてゆきます。

◆働くと年金がカットされると聞きましたが、それならば働かない方が得でしょうか?

年金がカットされるのは、厚生年金に加入して働く場合だけです。
隼人さんのように厚生年金に加入せずに働く場合は、給料の額にかかわらず、年金は全額支給となります。
また、厚生年金に加入すると年金は在職老齢年金の仕組みにより、一部または全額がカットされることがあります。年金のカットが大きいのは、給料や賞与が高いためですので、全額カットになっても働いた方が収入は多くなります。

◆再就職で大幅に給料が下がります。この給料では、働いても将来の生活にプラスになるように思えませんが・・・

60歳以後働かなかった場合と比べてみましょう。
図中の資産残高は、各年齢の末月での金額です。(60歳→60歳11ヵ月時点)

60歳以後働かなかった場合(年金生活)では、老後資金の1,000万円は、65歳台でマイナスになってしまいます。しかし、月額10万円で5年間働くと、65歳0ヵ月時点で700万円の残高となります。その後も働いた効果は持続し、1,000万円の老後資金は、およそ108歳までマイナスになりません。
では、5万円の収入を5年間確保した場合はどうなるでしょうか。
老後資金の増額分=5万円×60ヵ月=300万円
70歳時点の年金生活の資金残高は-136万円なので、
5万円の収入を得た場合の資金残高=300万円-136万円=164万円
となります。70歳時点で164万円の資金残高があれば、
164万円÷14万円(不足年額)≒11年となり、老後資金は81歳まで維持できることになります。
このように月額5万円の収入を5年間確保することで、予想以上に老後の収支は大きく改善します。
60歳以後働く場合は、給料やパート、アルバイト等の働き方にこだわらないことや複数の仕事を掛け持ちするなどの工夫をすることが安心年金生活への近道のようですね。

◆再就職をしたら雇用保険からお金が出るそうですが、どのようなお金ですか?

前述した「高年齢雇用継続基本給付金」です。
60歳以後に転職・出向等で勤務先が変わった場合でも、給付金の対象になります。
隼人さんは、アルバイトですが、週25時間の勤務なので雇用保険に加入しますので、高年齢雇用継続基本給付金が受け取れます。
60歳時点での給料が40万円、再就職の給料が10万円なので、給料の低下率は25%となり、給付金の支給率は15%となります。
支給額は、10万円×15%=1.5万円(月額)になります。
給付金が受給できるのは、雇用保険の被保険者に限られています。雇用保険の加入は、週所定労働時間が20時間以上の場合とされていますので、再就職先では、できれば20時間以上働いた方がよいと思われます。
なお、給付金を受け取っても、65歳に到達する日前(65歳の誕生日の前々日)に退職すれば、基本手当も受給できます。

社会保険労務士
原令子
株式会社JEサポート代表取締役
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