2014.01.22
「年金WEB相談室」(4)国民年金のメリット<見直そう、国民年金の良さを!>
私は、昨年の10月から数カ月間、社会保障審議会年金部会の下に設けられた、「年金保険料の徴収体制強化に関する専門委員会」の委員として審議に参加しました。
委員会は計6回開催され、12月13日に報告書がまとまり報道発表が行われました。それをもとに厚生労働省は17日、国民年金保険料の納付率向上のため、所得が年400万円以上あるにもかかわらず13カ月以上保険料を滞納している人全員に対し、財産の差し押さえを予告する督促状を送り、強制徴収に踏み切る方針を決めました。(来年度からの実施予定です。)
このニュースが強烈過ぎたために、審議された他の有効な対策が霞んでしまいました(だから霞が関というのでしょうか…)が、この他に保険料の払えない人、払いにくい人に対しての免除申請等の簡素化や、口座振替促進等の収納体制の強化、そして公的年金制度に対する理解の促進も対策として報告書に取り上げられています。
委員会では、いろいろなテーマに分けて議論が進められてきましたが、収納率向上について最も重要であり、根本的な対策は、「国民の皆様に国民年金のメリットを知っていただき、年金制度の信頼を取り戻し、自主納付する人を増やすこと」であると、私は思いました。そのような人を育てる年金教育や広報は、効果が出るまでに時間がかかります。また、費用対効果の検証も難しいと思われます。しかし、やはり地道に取り組むべきテーマである、そういう強い思いに駆られました。
そこで、改めて皆様に「国民年金の加入メリット」をご紹介したいと思い、2014年の始まりに当たりこのテーマを取り上げた次第です。
★国民年金の加入メリット
【その1】「月額約6万5000円の終身年金」が受給できる
国民年金の保険料は現在、月額約1万5千40円ですが、40年間納めることによって、月額約6万5千円の老齢基礎年金を生涯受給することができます。65歳から働かなくても定期的に年金収入があることは、国民の老後にとって、何より安心できることです。ちなみに、民間の保険会社で同じような保障内容の保険商品に加入した場合、20歳の女性ですと月額3万3千800円程度の保険料が必要になります。
さらに国民年金には、公的年金ならではの物価スライドの仕組みがあります。物価が上昇した場合に、年金額が一定程度増額される仕組みです。将来、大きな経済変動があった場合に年金の価値を維持する大事な機能です。
【その2】万一、障がいを負った場合に、障害基礎年金の保障がある
国民年金の加入者が、万一、障がいを負って、障害等級1級に該当した場合は月額約8万1千円、また2級に該当した場合は月額約6万5千円の障害基礎年金が、等級に該当している間受給できます。また、20歳未満で発生した障がいについても、同様の保障を受けられます。
これら障害基礎年金の保障は、生まれた時から、65歳到達までの間に初診日のある障害について行われます。
さらに、障害基礎年金は、非課税となります。第1号被保険者の場合、障害基礎年金が受給できる間、国民年金の保険料は、法定免除になります。
【その3】生計維持をしていた父または母が亡くなった場合、遺族基礎年金の保障がある
国民年金に加入している父または母が亡くなり、子が残された場合、子のある配偶者または子が遺族基礎年金を受け取ることができます。ここでいう「子」とは、18歳年度末までの間にある子または、障害等級1・2級の障害状態にある20歳未満の子で、いずれも未婚の子を言います。一般的には、高校を卒業した3月末までの間となります。(注:遺族基礎年金の遺族の範囲は、2014年4月から「子のある妻」が「子のある配偶者」に改正されます。)
年金額は、子の人数によって違ってきます。
【その4】基礎年金の給付費用の1/2は、税金で賄われている
老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金の給付費用は、その1/2が国民の税金で負担されています。4月から消費税が上がりますが、その消費税の一部は、基礎年金の安定的な給付を実施するための財源である基礎年金拠出金として使われます。
さて消費税は、受給資格のある人もない人も全員負担することになります。だとすれば、受給資格のない人は、消費税は負担するものの、年金では、何ら恩恵に与ることができないということになります。また、加入していても納付した期間が短い人は、長期に保険料を納めていた人と比較すると、国庫負担分の受け取りが少なくなります。そう考えると、きちんと保険料を納めておくことが、あなた自身にとっても有効なことであるということがお分かりになりますね。
【その5】免除・猶予等の保険料を納めにくい人向けのサポートがある
国民年金の加入者のうち、第2号被保険者と第3号被保険者の保険料については、厚生年金と共済年金の制度が、それぞれの制度の加入者の人数に対応した負担額を基礎年金拠出金として拠出します。そのため、滞納や免除・猶予のような状況は起こりえません。
一方、第1号被保険者については、保険料を納めたくても納められない人や納めにくい人が存在します。このような状況の人が無年金や低年金になることを防ぐために保険料の納付について、法定免除(生活保護法による生活扶助を受けている人、障害基礎年金の1・2級の受給権者は、全額免除される)の他に、次のようないろいろなケースに合わせた措置があります。ただし、ご自身で手続きが必要です。
A 学生納付特例制度
学生の納付特例制度は、自動的に保険料の納付が猶予される訳ではなく、本人の申請手続きが必要です。申請先は、住民登録している市区町村役場または在学する大学等の窓口です。
なお、学生本人の所得がアルバイト等により一定額以上ある場合は、学生納付特例制度は受けられないため、国民年金の保険料を納付しなければなりません。
B 申請免除
申請免除は、本人の所得が低額でも、世帯主や配偶者の所得が一定額以上ある場合は認められません。
また、申請免除が認められても、本人の希望で免除区分(全額免除、3/4免除、半額免除、1/4免除)が決まる訳ではなく、本人および世帯主や配偶者の前年所得により免除区分が決められます。
C 若年者納付猶予(平成27年6月までの時限措置)
30歳未満の国民年金の第1号被保険者が、本人および配偶者の前年所得が一定額以下の場合は、申請に基づき保険料の納付が猶予されます。若年者納付猶予制度の特徴は、世帯主の所得が一切問われない点です。
D 失業等による特例免除
免除は前年の所得を基準に免除の可否を判定しますが、震災・風水害等の被災者や失業により保険料の納付が困難な場合は例外で、前年の所得が免除基準を超えていても保険料の免除が認められます。
なお、失業により免除を申請する場合は、「雇用保険受給資格者証(ハローワークで求職の申込みを行うと交付されます。)」や、「雇用保険被保険者離職票(前勤務先が発行します。)」の写しを添付し、失業中であることの確認を受けなければなりません。
E DV被害(配偶者の暴力)による特例免除
国民年金の保険料は、本人はもちろんのこと、配偶者や世帯主にも納付の義務が課せられているため、本人の所得が低額でも、配偶者や世帯主に一定額以上の所得があると免除は認められません。
しかし、配偶者の暴力(DV)から逃れるために、その配偶者と別居(住民票上は同居のまま)している人が、経済的に保険料の納付が困難な場合は、本人からの申請が認められれば保険料は免除されます。
初回申請の場合は、婦人相談所および配偶者暴力相談支援センター等の公的機関が発行する証明書(配偶者からの暴力の被害者の保護に関する証明書)の添付が必要です。詳しくは、お近くの年金事務所にご相談ください。
【その6】税制上有利な上乗せ給付がある
保険料を納めていれば、付加年金や国民年金基金、個人型確定拠出年金などの制度を利用して、老後の上乗せを準備することができます。
なお、国民年金、付加年金の保険料、国民年金基金掛金は、全額社会保険料控除となります。また、個人型確定拠出年金の掛金は、全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象となります。
A 付加年金
毎月400円の付加保険料を支払うことで、「200円×付加保険料を納めた月数」の額の付加年金が受け取れます。2年の受給で支払った保険料が戻る、大変お得な、老齢基礎年金の上乗せ年金です。
ただし、物価スライドはしません。
B 国民年金基金
同業者で設立されている「職能型基金」と各都道府県に設立されている「地域型基金」があります。詳細は、下記のアドレスで。
なお、個人型確定拠出年金についてもこちらのアドレスでご覧になれます。
http://www.npfa.or.jp/index.html