年金コラム

2015.05.20

「年金WEB相談室」(9)ねんきん定期便から見る夫婦の年金生活

友人から「Gladノート」という習慣を教えてもらいました。毎日の生活の中で出会ったちょっとした感動や小さな喜び、ラッキーだと感じたことなどをGladノートに書き留めるのだそうです。
例えば、「今朝庭に出てみたら、植え替えをした花の苗が夜に降った雨でしゃんと頭をもたげていた。なんとよいタイミングで植え替えをしたこと!!」とか「いつもの道を帰る途中、緊急工事で迂回させられた。日ごろはあまり通らない道で枝垂(しだれ)桜を見つけた。この季節ならではの発見だ。満開の桜花が風に揺れる様は、今日が一番美しい!!回り道もよいものだ。」というような感じです。
日常の生活の中でちょっとした小さな喜びは沢山ありますね。豊かな感性で暮らしの中のそんな小さな喜びを見つけることができれば、そこから楽しい人生が広がってゆくのではないでしょうか。心の中に明るい方に向かって進むためのエネルギーが沸いてくるように思います。

さて、今回と次回は、あるご夫婦のねんきん定期便からお二人の年金生活を描いてみたいと思います。お話は、奥様がご夫婦のねんきん定期便を持って年金相談にいらしたところから始まります。

まず、ご主人は、昭和30年6月11日生まれで、厚生年金に昭和49年4月から加入していて、62歳の誕生日で退職予定です。下記が夫のねんきん定期便です。

次に妻ですが、昭和33年5月28日生まれで現在専業主婦です。若いときに厚生年金に加入。期間は、昭和52年3月~昭和59年2月でした。国民年金には、昭和61年4月から60歳まで加入予定です。下記は、妻の年金定期便です。

【質問1】
今までは、「年金なんて先のこと」と思い、ねんきん定期便が届いても気にも留めていませんでした。しかし、気がついてみると夫も定年が近くなり、今回初めてねんきん定期便を開いて見たのですが、よくわかりません。私たち夫婦は、どのような年金が、いつから、いくらくらい受け取れるのかを教えてください。

【回答1】

お二人が受給する年金は、ねんきん定期便の「2.老齢年金の見込額」 でわかります。

①夫婦で受け取る年金の基本の図を書く
まずは、受給の開始年齢ですがAの年齢となります。夫は62歳、妻61歳から、特別支給の老齢厚生年金の報酬比例部分が受給できます。
次に年金額ですが、お二人とも50歳以上ですので、記載されている額は、夫は60歳まで現在の給料・賞与額で引き続き働いた場合の見込額、妻は60歳まで引き続き国民年金の第3号被保険者の場合の見込額となります。
これらの情報を図にしてみると【図1】のようになります。夫婦の年金スタイル図は、夫と妻の年齢差を考慮して書くと、年金生活での毎年の収入状況がわかりやすくなります。相談者のご夫婦は、年齢差が3歳あります。

②加給年金額・振替加算額が加算される場合は、書き加える
加給年金額と振替加算額は、ご夫婦が年金を受給する場合に加算される家族手当のようなものです。単身の方には加算されません。また、加算される場合であってもねんきん定期便には記載されません。加給年金額が加算されるための要件は、次のようになっています。チャートをたどって加算されるかどうかを確認してみましょう。


相談者のケースでは、夫が65歳に到達した時点から加給年金額が加算され、妻が65歳に到達した時点で加算は終了し、妻の老齢基礎年金に振替加算額が加算されます。
加給年金額は、年額で39万100円。振替加算額は、加算される方(このケースだと妻)の生年月日によって金額が決められています。(このケースでは、3万3,000円)
【参考】 振替加算の額 http://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/kakyu-hurikae/20150401.html

③世帯での年金月額を記入する
・相談者の世帯では、夫が60歳で退職した場合、2年間収入がない状態となります
・夫は年金を62歳から受給できますが、65歳までは報酬比例部分のみとなるので月額12万円。妻の報酬比例部分の受給が始まると13万円となります。
・夫が65歳に到達すると、老齢基礎年金と加給年金額の加算が始まり、妻の報酬比例部分を合わせて月額22万8,000円。
・妻も65歳に達すると合計月額が26万円になります。

【質問2】
夫が60歳で退職すると、私は57歳から60歳までの3年間、国民年金の保険料を自分で負担することになると聞きました。私は、61歳から年金を受給する資格はあるようですし、夫の退職後2年間は収入もないので、できれば納めたくないのですが、納めなければなりませんか?

【回答2】

国民年金は20歳0ヵ月から59歳11ヵ月までが強制加入であるため、受給資格期間を満たしている場合でも、保険料は納付しなければなりません。保険料を1年間納付すると、老齢基礎年金が年額で約2万円、終身増えます。
あなたのように夫の退職により、国民年金保険料の納付が困難な場合は、住所地の国民年金担当窓口で「退職(失業)による特例免除」の申請を行うことができます。申請が認められれば、保険料が免除されます。
「退職(失業)による特例免除」ですが、申請する年度または前年度に退職(失業)の事実がある場合が対象で、申請の際には、失業していることを確認できる公的機関の証明の写し(雇用保険被保険者離職票、雇用受給資格者証など)を添付します。

 

【質問3】
私(妻)は61歳で特別支給の老齢厚生年金の報酬比例部分が受け取れますが、月額1万円です。老齢基礎年金を繰り上げることができるようですが、いくらぐらいになりますか?繰上げの損得も教えてください。 

【回答3】

老齢基礎年金を繰り上げて61歳から受給すると、老齢基礎年金は終身減額され、年額で562,000円になります。(739,500円×76%=562,020≒562,000円)
繰上げ請求月から16年9ヵ月で、65歳から受給した老齢基礎年金の累計額が上回るため、61歳0ヵ月で繰上げ請求した場合は、77歳9ヵ月で65歳からの額が上回ります。(61歳0ヵ月+16年9ヵ月=77歳9ヵ月)
なお、特例支給開始年齢(相談者の場合は61歳)到達以後に老齢基礎年金を繰り上げる場合は、報酬比例部分は原則どおり受給できますが、特例支給開始年齢到達前の場合(60歳以上61歳未満の間)は、老齢基礎年金を繰り上げると、老齢厚生年金も一緒に繰り上げなければならなくなります。
また、老齢基礎年金を繰り上げた場合の注意すべき点としては、次のようなことがありますので、よく検討してから、繰上げ請求をしてください。
・終身、減額された老齢基礎年金を受給することになる。
・繰上げ受給後に障害基礎年金に該当する障害の状態になっても、原則として障害基礎年金は受給できない。
・繰上げ受給後に遺族厚生年金の受給権が発生しても、65歳まではどちらか一方しか受給できない。
・国民年金に任意加入することはできない。

 

【質問4】
今から、私(妻)の年金額を増やす方法があればアドバイスをお願いします。

【回答4】

あなたの年金額を増やす方法には次のようなものがあります。

①60歳以後も国民年金に任意加入して、老齢基礎年金の受給額を増やす。
あなたの老齢基礎年金の額をねんきん定期便で確認してみると、満額の78万100円より少ない金額です。ということは、60歳以降国民年金が満額になるまでの間、任意加入ができます。任意加入で増額する老齢基礎年金は、年額で4万630円です。
なお、報酬比例部分(特別支給の老齢厚生年金)を受給しながらでも、国民年金に任意加入ができます。 

②付加保険料も納付して、付加年金も受給する。
任意加入の間、付加保険料(月額400円)も納付して、付加年金を受給することができます。例えば付加保険料を25ヵ月納付(400円×25月=1万円)すると、年額5,000円の付加年金が、老齢基礎年金と一緒に65歳から終身受給できます。(200円×25月=5,000円/年)
額は少ないながらも、2年受給すれば支払った保険料が戻り、3年目からはすべてプラスになります。任意加入の間は、是非、付加保険も納めましょう。

③年金を繰り下げて受給する。
原則、65歳から受給する老齢基礎年金、老齢厚生年金を、66歳以降の希望する時期まで繰り下げてから請求することを繰下げ受給と言います。繰り下げると、年金は1ヵ月につき0.7%増額し、最大70歳まで繰り下げることができます。その場合の受給率は、142%になります。
繰下げのパターンは、老齢基礎年金のみ、老齢厚生年金のみ、両方の年金、と3つあります。両方の年金を繰り下げる場合、繰り下げる期間が異なっていても構いません。(例えば、老齢基礎年金は66.0歳から、老齢厚生年金は70.0歳からの受給でも可能。)
また、付加年金は、老齢基礎年金を繰り下げている間は支給停止されますが、繰下げ終了後は老齢基礎年金と同じ増額率が適用されるため、付加年金の受給額も増えます。
ところで繰下げには、注意するべき点があります。それは、振替加算額が加算される場合です。振替加算額は、老齢基礎年金を繰り下げている間は支給停止となり、その分は受け取れずじまいになります。繰下げ終了後は加算されますが、増額はしません。繰下げ受給の損益分岐点は、繰下げ請求の月から11年11ヵ月後で、それ以上長生きをすれば、繰下げ受給がお得になります。しかし、振替加算額が加算される老齢基礎年金を繰り下げた場合は、分岐点は、もっと先に延びることになりますので注意してください。
繰下げ受給を希望する場合の手続きは、日本年金機構から届く65歳時のはがき形式の年金請求書(「国民年金・厚生年金保険 老齢給付裁定請求書」)で行います。

社会保険労務士
原令子
株式会社JEサポート代表取締役
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