2017.01.25
「れいこ先生のやさしい年金」(4)最近の年金改正
皆さま、こんにちは。
2017年になって早くも3週間が経過しました。
昨年末私は、枚岡神社(大阪府東大阪市)で開催された「お笑い神事」に参拝いたしました。神主さんの先達で、参集した300人近い人が全員で、何と20分間も笑い続けるのです。
境内に怒涛のように「わっ、はっ、はっ、はっ」の声が沸きあがり、満開の桜のように、笑顔、笑顔、笑顔の花が咲きました。
その様は、今までのいろいろな思いが感謝の喜びに転換してゆくように思えました。
「笑う門には福来る」との言葉を体感することができました。
皆様におかれましても、笑いのあふれる一年でありますように。
最近の年金改正
今回は、皆様の年金生活に直結する最近の年金改正点をピックアップしてご紹介いたします。
1.年金額改定ルールの見直し
2.年金受給資格期間の短縮
3.国民年金第1号被保険者の産前産後期間の保険料の免除
1.年金額改定のルール見直し
この改正は、現在年金を受給している人や、もうすぐ受給開始となる人に、特に知っておいていただきたい内容です。
と言うのは、年金額の改定ルールの改正により、年金受給者にとっては我慢しなければならない状況が生じる場合があるからです。
「なぜ、受給者が我慢しなければいけないのか!」について、わかりやすい話をすると次のようになります。
年金は社会全体で子から親に仕送りをしているようなものです。
仮に子の給料が下がったとすると、仕送り額は当然減らされざるを得ません。
親が「前と同じ額を送金して欲しい。いや、物価が上がっているからその分も上乗せして送金を頼む。」と言っても、結局は子の給料を親と子で分け合うしかないので、親の要望をきいていると、子の生活が切り詰められることになってしまいます。
つまり、子の給料が下がったことを理解して、親も少し我慢しなければならないのです。
その具体的な我慢の内容が、次の2つの項目です。これによって、将来(子)世代の給付水準を確保することが可能になります。
①マクロ経済スライドのキャリーオーバー制度の導入(平成30年4月1日施行)
マクロ経済スライドとは、賃金や物価の改定率を調整し年金の給付水準を引き下げて、年金制度が将来にわたって維持できるように調整する仕組みです。
今回、その年度に調整しきれないスライド未調整分を翌年度以降に繰り越し、その繰越分を翌年度以降の賃金・物価が上昇した際に調整できるしくみに改定されます。
下図を参考に、具体的に説明しましょう。
なお、マクロ経済スライドによる調整率(被保険者数の減少と平均余命の伸長を数値化したもので、毎年度変わる率)を仮に0.9%としています。
※画像をクリックすると拡大できます。
Ⅰ 景気拡大期に賃金が1%上昇したと仮定します。
年金の改定率は、「1%-0.9%=0.1%」なります。
Ⅱ 景気後退期に賃金が0.5%上昇したと仮定します。
年金の改定率は、「0.5%-0.9%=-0.4%」となり、完全に調整すると前年の年金額より下がってしまうことになります。このような場合は年金額の改定は行わず、年金の名目下限が維持され、-0.4%については、景気が回復するときまで持ち越すことになります。
Ⅲ 景気回復期に賃金が2%上昇したと仮定します。
年金の改定率は、「2%-0.9%-0.4%=0.7%」となります。
②賃金・物価改定ルールの見直し(平成33年4月1日施行)
年金額は賃金・物価の変動率をもとに改定されます。現在の年金額改定のルールでは、賃金変動率は新規に受給する年金(新規裁定年金)に、物価変動率はすでに受給している年金(既裁定年金)に用いることになっています。
では、変動率が「物価>賃金」となった場合、前述のルールで年金額を改定するとどうなるのでしょうか?
年金世代は、物価上昇率をもとに年金額が改定されるため、財源となる保険料収入が減る(保険料は賃金に連動している)にもかかわらず、年金の所得代替率(モデル世帯の年金月額が、世代の男性の平均月収の何%になるか)は上がります。 一方、現役世代は、賃金が下がり生活が苦しくなるとともに、将来の年金も下がる(年金額に賃金が反映するため)というWピンチに襲われます。
そこで今回の改正では、現役世代の賃金が物価よりも伸びない(物価>賃金)場合は、既裁定年金も賃金の変動に合わせて改定することとし、現役世代の人達が受け取る年金の水準を低下させない措置をとることになりました。 これにより、年金世代の年金額も減ることになりますが、前年の名目年金額は維持されるため、年金額が当年度のスライド調整や前年度までの未調整分によって改定されることはありません
2.年金受給資格期間の短縮(平成29年8月1日施行)
年金受給資格期間とは、老齢基礎年金や老齢厚生年金を受給するために必要な加入期間のことで、現在は、「25年≦保険料納付済期間+保険料免除期間等+カラ期間※」となっています。
受給資格期間が25年に満たないときは、年金を受給することができません。
※カラ期間とは
通称「カラ期間」とは、「合算対象期間」のことで、できるだけ多くの人が受給資格期間を満たすことができるようにするために定められた期間です。国民年金に任意加入しなかった期間や、適用除外で国民年金に加入できなかった期間などが該当します。カラ期間は受給資格期間には算入されますが、年金額には反映されません。
この25年が、平成29年8月1日から10年に短縮されます。
その結果、10年以上25年未満の期間しか年金に加入していないために、今まで無年金であった人に新たに受給権が発生します。その数は、老齢基礎年金が約40万人、老齢厚生年金が約24万人となっています。
これらの人には、今年の2月から順次、年金請求書が送付され、事前に(8月1日前であっても)請求を受け付けることとされています。
さて、ここで注意していただきたいことが2点あります。
① 注意点 その1
請求書が送られて来ない人であっても、10年短縮に該当して、年金が受給できる人がいます。
と言うのも、年金受給資格期間を確認する際に算入できるカラ期間には、日本年金機構で確認できない期間があるからです。 確認できなければ、合算して10年以上となる場合でも、請求書は送付されません。 では、確認できないカラ期間を次の図で紹介しましょう。
② 注意点 その2
受給資格期間が10年になったので、とにかく10年だけ保険料を納めればよいという誤った考え方をする恐れがあることです。
年金受給額は保険料の納付期間に比例しています。納付期間が短いと受け取る年金額も低額になります。
年金は長く納めると受給額も増えるしくみになっていますので、10年だけ納めればよいと誤解しないようにしてください。 ちなみに、新たに10年で受給権が発生する人の受給月額の平均見込額は、老齢基礎年金が2万1000円、老齢厚生年金が1万1000円となっています。
3.国民年金第1号被保険者の産前産後期間の保険料免除(平成31年4月1日施行)
厚生年金に加入している女性の産前産後の休業期間については、厚生年金保険の保険料が免除されています。
この免除期間は、年金額を計算する際には、保険料を納めた期間として扱われています。
これと同様の措置が、国民年金第1号被保険者についても行われることになりました。
産前産後の期間(出産予定日の属する月の前月から4ヵ月)の国民年金の保険料を免除するとともに、その免除期間については、保険料を納めた期間として扱います。
なお、この措置の財源は、国民年金の保険料を月額100円程度引き上げることで対処することになっています。