年金コラム

2010.07.07

「加給年金と振替加算」について

こんにちは社会保険労務士の土屋です。今回は「加給年金と振替加算」ついてお話しさせていただきます。

「加給年金」はどんなときに、いつからもらえる

特別支給の老齢厚生年金の年金請求書は60歳に到達(昭和28年4月1日生まれまでの男子、昭和33年4月1日生まれまでの女子※)する月の3ケ月程前に日本年金機構から送付されます。実際の請求手続き、つまり年金事務所に年金請求書を提出できるのは60歳到達日(誕生日の前日)以降です。その際に添付しなければならない書類が住民票(または住民票コード)です。ただし、配偶者のいる人には住民票の他に戸籍謄本の提出が求められます。

(※男性昭和28年4月2日以降生まれ、女性昭和33年4月2日以降生まれの方は年金支給開始が61歳以降になります。また、国民年金の加入しかない人は65歳から年金支給開始です。)

なぜ、戸籍謄本の提出が必要なのかというと、年金を受け取る人に厚生年金の被保険者期間が240月(中高齢の特例に該当する場合には生年月日により180月~240月未満でも可※)以上あれば、定額部分の年金支給時に65歳未満の配偶者がいれば加給年金が支給されるからです。支給の為には配偶者との婚姻関係を確認する必要があり、戸籍謄本の提出が求められるわけです。

(※男性の場合40歳以降、女性の場合35歳以降の厚生年金被保険者期間15年から19年で加給年金が加算される特例があります。)

ただし、昭和24年4月2日以降生まれの男姓の場合には定額部分は支給されません。65歳になるまでは報酬比例部分のみ受給します。 この場合、老齢基礎年金と老齢厚生年金を受給する65歳時に、配偶者が65歳未満であれば加給年金が加算されます(配偶者の方が65歳になるまで)。

その後、配偶者が65歳になったら加給年金の支給はなくなります。ただ、そのかわり配偶者のもらう年金に振替加算が加算され、この加算は配偶者の方が亡くなるまで支給されます。その後夫(または妻)と離婚しても加算はなくなりません。
ただし、配偶者が240月以上の被保険者期間がある厚生年金を受給できれば、加給年金は支給されませんし、65歳になっても振替加算は加算されません。

加給年金は定額部分の年金支給開始時または65歳時に配偶者の方がいれば加算されますので、定額部分が支給される前(または65歳前)に結婚し配偶者がいれば加算されます。入籍し1ケ月の婚姻期間であっても加算されることになります。平成19年から厚生年金の離婚分割制度が始まり、熟年離婚が多くなったといわれましたが、そういう意味では熟年結婚もお得ということになります。
なお、戸籍謄本の他に添付書類として、配偶者の方の所得証明(納税証明書等)の提出も求められます。これは配偶者の方に一定以上の収入(850万)があれば、加給年金は加算されませんので、その収入要件を確認するためです。

女性や長期特例の場合は65歳前でも加給年金が加算される

昭和24年4月2日以降生まれの男性の場合には定額部分が支給されませんが、女性の場合は支給開始年齢の引き上げが5年遅れになっています(定額部分が支給されなくなるのは昭和29年4月2日以降生まれの方から)。したがって、妻(昭和29年4月1日以前生まれ)の厚生年金被保険者期間が240月以上(中高齢の特例は生年月日により180月から200月未満で可)あって、定額部分が支給される時に夫が65歳未満であれば加給年金が加算されることになります。ただし、夫の厚生年金被保険者期間が240月以上あって受給権が発生していれば、当然加算はされません。

また、厚生年金被保険者期間が44年(528月)以上ある長期加入者の特例に該当する人や3級以上の障害厚生年金の受給権のある障害者の特例に該当する人は、報酬比例部分の受給開始と同時に定額部分も受給することができますので、その時に配偶者の方が65歳未満であれば加給年金が加算されることになります。ただし、「長期加入者の特例」または「障害者の特例」に該当する為には"被保険者でないこと"という条件があります。したがって、会社を退職しているか、または社会保険に加入しない勤務形態で働くことが条件になります。

加給年金の支給額はいくら

では加給年金はいくらもらえるのかというと、加給年金は妻の分として227,900円が受給者の年金に加算されます。また、もし定額部分の支給開始時に18歳未満の未婚の子(18歳到達後の最初の年度末まで、障害者の場合20歳未満)がいれば、子一人につき227,900円(子3人目以降75,900円)も加算されることになります。いくら晩婚化したとはいえ、60歳過ぎで成人前の子供がいるという方は少ないかもしれませんが、再婚した妻に加給年金の対象となる子供がいて自分の子(生計維持関係があることが条件)として入籍をすれば、加給年金が支給されることになります。ただし、定額部分の支給開始後に入籍しては加給年金の対象になる子とはされません。

また、昭和9年4月2日以降生まれの受給者には生年月日により33,600円から168,100円が妻の分の加給年金に加算されますので、昭和18年4月2日以後生まれの受給者に加算される年金額は合計で396,000円になります、月額で約3万円強の年金額が増えることになります。

これから年金をもらう方の年金受給額は今の70歳代や80歳代の方に比較すると、金額的にも多額ではありません。したがって、月額で3万円という額はたとえ支給期間が1年や2年であってもばかにできない額です。また、配偶者の方が65歳になれば、額はかなり少なくなりますが、振替加算として配偶者の方の年金として支給されますので、手続きはきちんと行いましょう。特に60歳~65歳まで支給される特別支給の老齢厚生年金について、在職中の方の中には「どうせ働いていて給料をもらっていれば年金は全額停止になる」とか、「65歳の時に手続きをすればいい」など、自分で判断をして手続きをしていない方がいますが、加給年金は支給調整されていても、条件に該当する65歳未満の配偶者の方がいて、1円でも年金が支給されていれば、支給されます。不明の点は自分で判断せずに、年金事務所で相談するか、社会保険労務士にご相談ください。

また、ちょっとレアなケースかもしれませんが、下記のケースのような場合はどちらが得かをよく検討する必要がでてきます。

妻は現在勤める会社に60歳まで勤めると厚生年金の被保険者期間が240月以上になるので、夫に加算される加給年金が加算されなくなり、65歳以降の妻自身の年金に加算される振替加算もありません。
12ケ月間保険料を支払い、1年分の厚生年金が増額になりますが、月額約3万強の加給年金と振替加算がなくなることになるので、標準報酬額にもよりますが、59歳と11ケ月(厚生年金加入239月)までで退職する方が年金額だけでみればお得なのではないかという判断ができます。
また、障害厚生年金にも加給年金は加算されますが、配偶者加給は加算されません。支給額は老齢厚生年金と同じです。

配偶者が昭和41年4月2日以降生まれの場合には振替加算はなし

配偶者の方が65歳になると受給者に支給されていた加給年金は支給終了になります。ただし、配偶者の年金に振替加算として加算されることになります。この加算額は配偶者の年金ですから、配偶者が亡くなるまでなくなることはありません。ただし、配偶者の方の生年月日によって加算される額が異なります。平成22年度に65歳になる人(昭和20年4月2日~昭和21年4月1日生まれ)は年額で112,400円です。年齢が若くなるほど支給額は少なくなり、昭和41年4月2日生まれ以降の方には振替加算は加算されません。

では、なぜこのような仕組みになっているのかというと、以前にもお話しした通り、昭和61年4月1日から基礎年金制度ができ、日本に居住する20歳~60歳まで人はなんらかの年金制度に加入することになりました。それまでは適用除外といって年金制度は任意加入とされていた方がいました。その代表例が厚生年金被保険者や受給者権者の配偶者(妻)です。適用除外とされた妻は昭和61年3月まではあくまで任意加入ですから、結果的に加入期間が短く、妻自身の年金額が少ないまたは受給権すらないという方が多いという現状があり、社会問題となりました。そうした制度の不備を解消するために基礎年金制度ができましたが、その中に振替加算という制度があり、高齢の妻の方々を救済するという目的が振替加算にはあるのです。その為高齢の方ほど振替加算の額は高額になっています。逆に昭和41年4月2日以降生まれの方は基礎年金制度ができた日以降に20歳になり、60歳まで年金制度に加入すれば480月(40年間)のフルペンションの老齢基礎年金を受給することが可能です。そうした方まで救済する必要がないというのがこの制度の趣旨なわけです。

社会保険労務士
土屋 広和
さいたま総合研究所人事研究会 所属
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