年金コラム

2008.11.19

「ねんきん特別便」を受け取ったら?(4)標準報酬について

こんにちは社会保険労務士の土屋です。今回も「ねんきん特別便」についてお話しをさせていただきます。10月で社会保険庁の「ねんきん特別便」の発送業務が完了しました。皆様も「ねんきん特別便」を受け取ったことと思います。送付は完了しましたが、「ねんきん特別便」の記録確認の作業完了までにはもうすこし時間がかかるようです。
また、5,000万件の未加入記録該当者の記録統合後の再裁定の手続きについても、件数の多さに社会保険庁の業務量が追い付かず、半年以上経過しても、受給者の方にまだなんの通知もきていないという状況も散見されます。現状では再裁定後の年金が振り込まれるまでに約8ヶ月以上はかかるという状況もみられます。
そんなか中で起こったのが標準報酬の不適正処理問題です。

10月6日には、厚生労働大臣直属の「標準報酬遡及訂正事案等に関する調査委員会」が設置され、社会保険庁の職員が関与したと疑われる事案について、今後、職員への事情聴取や社会保険事務所の現地調査、刑事告発など法的手段をとるための裏付けや証拠を集めるなど、不正を追求し全容が解明されこととなるようです。
また、社会保険庁が公表した不適正訂正処理事案69,000件のうち、65歳以上の年金受給者の記録約2万件については、社会保険事務所職員の自宅訪問等による、標準報酬月額確認の作業に着手しており、調査委員会での事実関係の分析・解明が待たれるところとなっています。
ところで、今回問題になった標準報酬がどのように決まっているのか、皆さんご存じでしょうか?今回は標準報酬のしくみについてのべさせていただきます。

標準報酬で厚生年金保険(報酬比例部分)の年金額を計算

社会保険料には健康保険の保険料と厚生年金保険の保険料があります。
健康保険料は皆さんが病気やけがで医者にかかった際に支払う医療費に使われています。

一方、厚生年金保険の保険料は、みなさんが将来受け取る年金額に使われています。
厚生年金保険(報酬比例部分)の年金額は、皆さんが現役のときに支払った保険料によって違いますが、その保険料は標準報酬によって算出されています。では、みなさんの標準報酬はどう決まっているのかといえば、会社が毎年7月に社会保険事務所に堤出している被保険者報酬月額算定基礎届(以降算定基礎届という)によって決められています。算定基礎届とは毎年4月・5月・6月の各月に、皆さんに実際に支払われた給料を記載するものです。そして、その3ヶ月の平均額をその年の9月から翌年の8月までの標準報酬月額としています。
その標準報酬月額に厚生年金保険料率を掛けて計算された保険料を、事業主が事業主負担分と合わせて社会保険事務所に毎月収めているわけです。

ただし、みなさんの給料は会社の賃金規程等によって様々ですから、それをすべて届け出て保険料を計算していたのでは、非常に煩雑な手続きになります。その為、標準報酬月額に98,000円から620,000円までの30等級(健康保険は58,000円から1,210,000円までの47等級)を設定し、みなさんの4月・5月・6月の3ヶ月の給料の平均をいずれかの等級にあてはめているわけです。それが標準報酬月額です。

平成15年4月からはボーナスの額も給付に反映

平成15年3月までは毎月の給料だけで、厚生年金保険の年金額は計算されていましたが、不公平ではないかという議論がありました。そこで、それまでボーナスから徴収していた特別保険料(ボーナスの支給額【1,000未満の端数切り捨て】×1000分10で算出。負担のみで給付には反映しない)が廃止され、ボーナスも毎月の給料と同じ保険料率を掛けることにし、厚生年金保険の年金額に反映させるようにしました。この届けのことを標準賞与届といいます。こちらは算定基礎届出のような等級はありません。みなさんのボーナスの実支給額(1,000円未満の端数を切り捨て)を標準賞与額とします。そして、その額に厚生年金保険料率を掛けて計算した保険料を、事業主が事業主負担分と一緒に社会保険事務所に収めています。そして標準報酬月額と標準賞与額をあわせたものが標準報酬となるわけです。

昔の標準報酬は再評価する

50歳以上の方については社会保険事務所やインターネットを通じてご自分の将来の年金額を計算してくれますが、社会保険事務所でだしてもらう見込額照会回答票に記載されている金額は、先ほどの平成15年3月までのものと平成15年4月以降のものが表示されています。この金額は皆さんの今まで全期間の標準報酬の合計額を、皆さんの全厚生年金被保険期間で割った額です。当然、平成15年3月までと平成15年4月以降と別別に記載されています。

老齢厚生年金(報酬比例部分)の年金額計算式

(報酬比例部分の計算)

  • 平成15年3月までの加入期間
    平均標準報酬月額×(前期旧乗率)1000分の7.5×被保険者期間×1.031×0.985
  • 平成15年4月以降の加入期間
    平均標準報酬月額×(後期旧乗率)1000分の5.769×被保険者期間×1.031×0.985

※上記は昭和21年4月2日生まれ以降の人の計算式(従前保障額)

この額が平均標準報酬月額(平額)といわれ、この額で皆さんの年金額(厚生年金の報酬比例部分)は計算されています。

ただし、この平均標準報酬月額(平額)は皆さんが勤めていた会社が社会保険事務所に提出した実際の標準報酬の平均ではありません。当然ですが貨幣価値がありますから、皆さんが昔もらった給料と今の貨幣価値は違います。そのままの標準報酬で計算しては不公平になります。そこで、昔の標準報酬に一定の倍率を掛けて今の価値に直してあげる必要があります。その率が再評価率といわれるものです。

平成21年度には全被保険者の標準報酬の記録を送付

会社の賃金台帳は支払いを行ってから3年間は事業主に保存する義務がありますが、それ以上になると保存しておく義務はありません。また、合併や倒産・廃業等で会社自体がもう存在しない場合がありますので、昔の給与明細を確認するというのは、ご自分で明細を残しておかない限り、確認をするというのは非常に難しい問題があります。社会保険庁では、平成21年度に全被保険者に対して、標準報酬の記録を送付する予定です。すこしでもご自分の記録がおかしいと思うならば、早めに社会保険事務所で調べてもらうようにしてください。

社会保険労務士
土屋 広和
さいたま総合研究所人事研究会 所属
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