2008.03.21
アメリカの年金(2)
こんにちは、社会保険労務士の土屋です。本日も皆さんにとって大変関心の高い年金について、お話しをさせていただきます。
今回も、アメリカの年金についてです。
アメリカの年金といってもいくつかの種類がありますが、アメリカに在留経験のある日本人が受給できる可能性のあるものは、社会保障年金(Social Security Administration)といわれる年金です。
受給できるのは企業の職員(年収が一定額以上の自営業者含む)としてアメリカで就労した人、また、その家族や遺族の方です。受給するためには、年齢条件と就労期間条件を満たす必要があります。
勤労者は所得から掛け金である社会保障税を納めますが、最低でも10年間働き掛け金を納める必要があります。ただ、この10年の数え方は、10年間勤労するということではなくて、どれだけのクレジットを得たかによって決まります。年金を受給するためには40クレジットを取得していなければなりませんが、クレジットは所得に応じて定められています。ただ、1年間で最大4クレジットしか与えられません。
たとえば、1月に4,000ドルの報酬を得た人が、残りの11月仕事をしなかったとしても、その年は900ドルにつき1クレジット与えられれば、4クレジット取得できます。
つまり、1年間通して働かなくても一定の所得を得ていれば、最高4クレジット取得することが可能で、10年間まるまる働く必要はないわけです。
前回(1月17日掲載分)お話ししたように、アメリカと日本とは社会保障協定(2005年10月1日発効)を締結し、5年以内の短期間の在留の場合は相手国の制度に加入することが免除されました。したがって、以降はアメリカの年金を受給するためには5年以上アメリカに在留することが必要になりますので、該当するような方はかなり少なくなるのではないかと思います。
一方アメリカの年金に加入した期間については、1クレジットを3月分の基礎年金の加入期間としてみなして、日本の年金では計算されます。
ただし、二重加入した期間は、一方の期間としてしかみなされません。
※日米で重複している期間は1年として計算します。したがって、日本の期間20年とアメリカの期間の5年で日本の年金の加入資格を得、一方アメリカの年金の資格期間である10年も満たすことになります。
協定発効前にアメリカでの就労経験のある方は、10年未満の期間であってもアメリカの年金を受けることが可能です。ただし、その場合であっても、アメリカと日本の年金の加入期間を合わせて10年以上の期間が必要です。(重複する期間は一方の期間としかみなされないのは前述の通りです。)その上で、アメリカでの加入期間が1年6ヶ月(6クレジット)以上必要になります。
たとえば、アメリカで4年(16クレジット)、日本で6年の年金加入期間がある場合、アメリカの加入期間だけでは年金を受給できませんが、日本の加入期間とあわせると10年となり、アメリカの4年分の老齢年金を受けることができます。
2005年10月の協定発効前までは、外国に短期間駐留する日本人の方は、日本の年金制度に加入しながら、アメリカの年金制度に加入していましたので、6クレジットという条件を満たす方はかなり多くいるはずです。思い当たる方は一度調べてみてはいかがでしょうか。
また、アメリカの年金の支給開始年齢は65.5歳(2027年までに67歳に段階的に引き上げ)ですが、62歳で繰上して受給することも可能です。年金の請求は年金を受ける権利が発生する3ヶ月前から申請可能です。もし、請求が遅れた場合は、時効により遡って受給できるのは6ヶ月前の分までです。 年金の種類は老齢・障害・遺族があります。また、アメリカの年金は本人以外の他に、家族にも支給される家族年金という仕組みもあります。家族年金は受給者が年金を受給し始めてから、家族が一定の条件を満たしていれば、受給することができます。家族とは18歳未満の子供、62歳以上の配偶者、62歳以上で再婚していない元配偶者が該当します。離婚した配偶者については、受給者との10年以上の婚姻関係と62歳以上で独身であることが条件です。
請求手続等は社会保険事務所で行うことができます。ただし、その後の手続等については、英文の書類やマニラ事務所(アメリカ社会保障庁のアジアの出先機関)とのやり取り等が必要になりますので、手続に自信のない方は社会保険労務士やコンサルタント会社にご相談することをお奨めします。