2018.09.25
社会保障協定について
こんにちは、社会保険労務士の土屋です。みなさんにとって関心の高い年金についてお話しいたします。今回は社会保障協定についてとりあげて説明させていただきます。
勤務先の海外転勤やご自身の仕事の都合、外国籍の方との結婚等で、海外に転居をする方もいらっしゃるかと思います。そうした場合、日本からの出国前後に年金の手続きが必要になります。海外居住時に受給年齢に到達すれば、年金請求の手続きが必要なります。
また、外国の年金制度に加入しその国の年金受給資格を得れば、その国の年金請求手続きが必要になります。このホームページの読者の方の中には、留学やお仕事の関係で日本に居住されている外国人の方もいらっしゃるかと思います。そういう方の社会保険(年金・健康保険)の手続きについて今回は少し説明をしたいと思います。
日本人(日本国籍のある方)が海外に出国した場合
日本に居住する20歳~60歳までの自営業者等(国民年金の第1号被保険者)の方が日本から出国し、海外に住民票を移した場合、国民年金に加入する義務はなくなります。もしその方が希望をすれば、国民年金に任意加入をすることも可能です。手続きは、出国するまでは住所地の市区町村で、出国後は最後の住所地の年金事務所または市区町村で行います。保険料の納付は日本にいる家族が代理して納付する、または、日本の金融機関の口座から引き落としをする、いずれかの方法で行います。なお、日本国籍のある方が住民票を日本に残したまま海外に出国した場合には、海外在住期間であっても国民年金への加入義務がありますので、納付をしない場合には国民年金未納期間とみなされます。
また厚生年金に加入している方(国民年金の第2号被保険者)が、勤務先の仕事の関係で海外に転勤する場合、そのまま厚生年金に加入することになります。なお、その方に被扶養者配偶者がいれば、配偶者の方は海外に居住されていても国民年金の第3号被保険者扱いとなります。ただし、赴任先の国にも社会保険制度が存在する場合、赴任先の国によってはその国の社会保険制度に加入することが強制されるケースがあります。
日本人で海外に赴任する方は、いずれ日本に帰国し日本の年金制度から将来年金を受給します。会社にとっては二重負担となりますが、海外で仕事を行う以上必要な負担と考えて、会社は両方の国の社会保険制度に保険料を負担してきました。また、海外の会社で働く人が来日し日本で働く場合、同様の問題が起きていました。赴任先の居住期間が短期間で、年金受給資格を得ることができなければ、結果的に年金保険料は掛け捨てになります。それではお互い不合理であるということで、二国間で社会保障協定を締結し、二重負担をやめようという取り決めを結ぶようになりました。
たとえば、日本人が一時的に社会保障協定を締結する国に居住することになった場合、出国前に年金事務所で「適用除外の手続き」を行えば、社会保障協定締結国での居住期間が5年以内の場合は、日本の社会保険制度に加入したままで、相手国の社会保険制度に加入する必要はありません。(もし、在留期間が5年を超えた場合には、再度手続きが必要になります。)
また、社会保障協定を締結している国の年金制度の資格期間には、日本の年金制度の加入期間も通算することができますし、相手国の年金制度に加入した期間も日本の年金制度の資格加入期間に算入することができます。
したがって、日本の年金制度の加入期間も含めて、加入した社会保障締結国の年金受給資格を満たせば、その国の年金を受給することができます。ただし、日本の年金制度と社会保障締結国の年金制度とに重複して加入した期間については、それぞれの国の加入期間としては計算されますが、重複して通算はされることはありません。
☆国民年金60月+厚生年金48月と社会保障協定を締結した相手国の年金制度加入期間36月を通算し、144月で計算。120月以上の資格期間を満たし、日本の年金制度から年金が受給できますし、日本の年金制度の加入期間を通算して社会保障協定を締結した相手国の年金の受給資格を満たせば、相手国の年金も受給できます。

☆現在日本と社会保障協定を締結している国の中で、韓国と英国は日本の年金制度との通算制度はありませんので、日本の年金との通算はできません。なお、それぞれの国の受給資格を満たせば、それぞれの国の年金を受給することはできます。

韓国・英国以外の社会保障協定締結国の年金制度と日本の年金制度は通算します。たとえば、アメリカの年金制度に5年(60月)、日本の年金制度に8年(96月)加入した方であれば、両方の国の年金制度に10年以上加入したとみなされますので、日本の年金の受給資格を満たしたことになります。
現在、日本と社会保障協定を締結する国は以下の通りです。

上記以外で協定発効を前提に署名済みの国として、イタリア・スロバキア・中国が、また現在協定を協議中の国としてスウェーデン・トルコ・フィンランドがあります。
なお、それぞれの国の適用除外の手続きについては年金事務所等でご確認ください。
海外在住時に加入した外国の年金も日本から請求できます。
海外在住時に加入した外国の年金制度でも、相手国の受給資格を満たせば、社会保障協定を締結した国の年金であれば、日本から請求することができます。窓口は年金事務所等になりますが、年金制度の詳細については「各自で調べていただくように」という回答しかできないようです。ただ、アメリカの年金については、加入された方も多く請求件数も多いので、請求手続きも他の国に比べて簡素化され、裁定請求についてもアメリカ大使館を窓口にして問い合わせもできるようになりました。

国によっては必要書類等も違います。請求書類等は年金事務所やウェブサイトから入手できる場合が多いので、年金事務所か社会保険労務士にご相談いただければと思います。
短期間の日本在住期間で帰国する外国人の方は脱退一時金を請求できます。
外国籍の方で国民年金や厚生年金に加入した方で10年以上の受給資格を満たせない場合には、脱退一時金を請求できます。下記の要件に該当していることが必要です。
- 1.日本国籍でないこと
- 2.国民年金・厚生年金の被保険者でないこと
- 3.老齢・障害の年金を受けていないこと
- 4.日本国内に住所を有していないこと
- 5.日本国内に住所を有しなくなってから2年を経過していないこと
- 6.老齢年金の受給資格を満たしていないこと
- 7.国民年金の保険料納付済期間(全額免除以外の免除期間含む)が6ケ月以上あること
- 8.厚生年金・共済組合等の期間が6ケ月以上あること
請求手続きは年金事務所等で行います。出国後のパスポートの写し(出国確認)や帰国後の住所や送金先の海外の金融機関の口座の記入が必要な為、原則出国後に日本年金機構宛て郵送(エアメール)で手続きをしていただくことになります。日本出国後2年以内に行いませんと請求はできなくなります。
なお、出国前であっても帰国する航空チケットを提示して住所地の自治体で転出の書類をもらえれば、請求手続きを行うことも可能ですが、帰国後の住所をあらかじめ申告する必要があります。いずれにしても帰国日が目前に迫っている為かなりあわただしい手続きになると思います。転出の手続きの詳細については住所地の自治体でご確認ください。
※脱退一時金の支給は請求後2~3ケ月後の振込になりますが、所得税が課税されます。出国前や出国後に住所地の税務署(出国後は最後に住所のあった税務署)に還付請求の手続きを行うことで、還付を受けることが可能です。
最後に
平成29年8月1日から10年の保険料納付済期間があれば、年金を受け取ることができるようになりました。外国人の方であっても10年の期間があれば、帰国後も海外からでも年金請求は可能です。また、将来日本に帰化したり、永住権を取得すれば、20歳~日本に初めて上陸した期間は合算対象期間(年金の計算になりませんが資格期間には算入できます)にすることができます。
なお、現在社会保障協定を締結していない国であっても将来社会保障協定を締結されるかもしれません。脱退一時金を請求してしまうと、年金制度に加入した記録はなかったことになります。請求手続きをお考えの方はよく検討をされることをお勧めします。