法律コラム

2023.06.20

空き家問題について

新型コロナウイルス感染症が「5類」に引き下げられ、街中がコロナ禍前の状態に戻りつつありますが、皆様は、いかがお過ごしでしょうか。
さて、これまで6回にわたって所有者不明土地の問題についてお話ししてまいりましたが、今回は、こちらも最近深刻な問題となっている「空き家問題」について、お話ししたいと思います。

Q1.「空き家問題」が深刻な問題となっていると言われていますが、現状はどの様になっているのでしょうか。

A1.一口に「空き家」と言っても、別荘の様に主たる住まいとして利用しない住宅や、売り出し中で買い手がつかない空き家もあります。
ここで問題となっているのは、用途が全く無くなり、ただ放置されて老朽化するばかりとなった空き家なのです。
この様な空き家は、親が亡くなって田舎の実家を相続したものの、自分は都市部で家を所有しているので、田舎の実家を使用しない、という流れで発生するのが典型例と言えます。
そのためか、空き家は地方で多く発生する傾向だったのですが、近年は、都市部でも空き家が増加しており、今や戸建て住宅の20%が空き家であると言われる程になっています。

Q2.そこまで「空き家」が増加した原因は何でしょうか。
また、「空き家」が増加することによって、どの様な問題が起きるのでしょうか。

A2.「空き家」が増加し続けている原因は、次の4つがあると言われています。

  1. (1)仕事を求めて地方から都市部へ人口の流入が進み、地方の実家を継ぐ者が減少したこと。
  2. (2)少子高齢化によって住宅購入者が減少しているのに、住宅メーカーが毎年新規に住宅を作っているために、住宅の需要と供給のアンバランスが生じたこと。
  3. (3)晩婚化・未婚化が進んだ結果、マイホームを持つ必要性が少なくなり、中古の住宅が多く売れ残る事態となっていること。
  4. (4)「負」動産時代などと持家リスクが言われる様になったことにより、持家率が減少していること。

「空き家」が増加しても自分には関係ない、と思っておられる方も多いのではないでしょうか。しかし、空き家の増加には次の様な問題があり、皆様にとっても他人事とは言えないのです。

  1. (1)老朽化による倒壊の問題や、ごみの不法投棄等による悪臭の発生等による被害といった、物理的なリスクが高くなり、平穏な生活が阻害される可能性があること。
  2. (2)いたずら目的で放火される、犯罪集団の拠点として悪用される、といった危険性が生じ、近隣住民が犯罪に巻き込まれる恐れがあること。
  3. (3)価値の低い不動産が増えることにより、不動産相場が全体的に下がり、その結果、不動産業界だけでなく関連産業も損害を受け、ひいては日本全体の景気に影響する恐れがあること。
  4. (4)空き家の存在によって、有効活用できない土地が増加してしまうこと。

Q3.「空き家問題」の対策として、「特定空家」の措置があり、この「特定空家」に指定されると所有者の経済的負担が増える、とのことですが、どの様な場合に指定されるのでしょうか。また、これを回避するためにどの様な対策を講じれば良いのでしょうか。

A3.「特定空家等に対する措置」は、平成27年に施行された「空き家対策特別措置法」に基づく制度です。
自治体が空き家と判断するに際しては、概ね1年以上家に出入りが無いとか、水道・ガス・電気の使用が認められない等の事情を判断材料としている様ですが、さらに「特定空家等」と指定するためには、国土交通省が次のガイドラインを定めています。

  1. (1)そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
  2. (2)そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
  3. (3)適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
  4. (4)その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

そして、以上のいずれかに該当し、「特定空家等」に指定されますと、自治体より所有者に対して修繕等の何らかの措置をとる様に助言・指導・勧告・命令が下されることになります。
また、この勧告を受けますと、固定資産税の優遇措置が受けられなくなりますので、更地と同じ様に4~6倍の税負担をしなければならなくなります。
更には、「特定空家等」と指定され、所有者が何らかの措置を取らなかった場合には、行政代執行(義務者が行政上の義務を履行しない場合に、行政庁が自ら義務者のなすべき行為をなし、又は第三者としてこれをなさしめ、その費用を義務者から徴収する、という方法です)によって解体されてしまう、という事態に陥りかねません。
しかも、この行政代執行においては、所有者が解体費用を支払わない場合には、所有者の財産に対する差押えが行われることになっているのです。

従って、もし「特定空家等」の指定を受けてしまったら、指定を受けた要因を取り除き、改善することにより、特定空家等の指定を取り消してもらう様にして下さい。
空き家を改修して賃貸に出したり、解体して更地として売却したりすることも、お考えになってみては如何でしょうか。

それでは、皆様、次回のコラムもどうぞお楽しみに。
お体くれぐれもご自愛下さい。

司法書士
渡辺 拓郎
渡辺拓郎事務所 代表
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