法律コラム

2011.04.28

贈与・財産分与手続について

読者の皆様、こんにちは。
このたびの大震災で被災された東北地方・関東地方の皆様、お見舞い申し上げます。又この震災で亡くなられた方のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
皆様が一日も早く復興され、また、一日も早く平常の生活を取り戻されることを心から願ってやみません。

さて、この「暮らしに役立つ法律コラム」もはや4回目となりました。
今回は、「贈与・財産分与手続」について三項目のQ&Aをアップさせて頂きます。

Q1:協議の上、夫と離婚しました。子どもは私が引き取って育てることになりました。離婚したのは性格の不一致が原因であり、別に夫に非があったわけではありません。この場合でも夫に財産分与の請求ができますか?

A1:財産分与は、婚姻中に二人で協力して築き上げた夫婦財産関係の清算や離婚後の扶養料の性質を有するものですから、離婚の原因について相手方に不貞行為等の責任(この場合は別途、慰謝料の問題が生じます)がない場合であっても請求することができます。さらに、妻の方に不貞行為等の責任があって離婚に至った場合でも、夫に対して財産分与の請求ができる場合があります。
財産分与の請求権は、夫婦の協議によって成立しますが、離婚の届出前に協議がされた場合には、離婚の効力が生じたとき、すなわち離婚の届出が受理されたときに効力を生じます。相手が協議に応じないときは、家庭裁判所に対して、協議に代わる処分を請求することができます。ただし、この請求は離婚の届出が受理されたときから2年以内にしなければなりません。
また、ポスタルくらぶ「原令子の年金コラム」の第1回「離婚と年金」にも掲載されていますように、離婚した場合には年金も分割の対象となります。詳しくは年金事務所等でご相談されることをおすすめします。

Q2:私(68歳男性)は22年前、贈与税の配偶者控除の制度を利用して、妻(66歳)に対して居住用土地建物を贈与したことがあります。
その贈与の後、再び婚姻期間が20年を経過したのですが、再度妻に対して同じ制度を使って居住用土地建物の贈与をすることは可能でしょうか? ちなみに婚姻期間は42年になります。

A2:婚姻期間が20年以上である配偶者から、居住用の土地または建物の贈与を受けた場合、贈与税の申告を条件として、贈与税の1年分の基礎控除(110万円)の他に最高2,000万円までの控除を受けることができます。
しかし、この配偶者控除は、同じ贈与者からは1回しか受けることができないことになっています。従って、ご質問の場合、過去にこの制度を利用したのであれば再度利用することはできません。ちなみに離婚して別の人と再婚した場合は、再婚後また20年を経過すればこの制度を利用して配偶者に贈与をすることができるようになります。

【渡辺拓郎のワンポイント・アドバイス!】
  • この制度の利用は1回までです。ただし、別の人と再婚した場合は、20年経過すればこの制度の利用ができます。

Q3:不動産の贈与を受ける場合、どういうことに注意すればよいでしょうか?

A3:不動産のような高額の財産の贈与を受ける場合は、まず税金のことを考えなければなりません。何も考えずにうっかり不動産の贈与を受け登記をしてしまうと、後から高額の贈与税を払うことになって大変なことになります。「タダほど怖いものはない」というわけです。
かつて、贈与にかかる登記の登録免許税(所有者の名義変更のための税金)が、売買の場合にかかる登記の登録免許税の半額であった時期がありました。「贈与を原因として名義変更をした方が税金が安い!」というので、何も知らずにこの登記原因で不動産の名義変更をし、後から来た贈与税の通知にびっくり仰天して贈与を撤回し、せっかく済ませた名義変更を錯誤で抹消しなければならなくなったといったことも時々あったようです。

それでは、贈与税がかからないようにするためには、どのような方法があるのでしょうか。

  1. 基礎控除額である年間110万円分にあたる不動産の持分を毎年贈与していく、という方法がまず頭に浮かんできます。
  2. 次に、「夫から妻へ」とか「親から子へ」といったような親族間で不動産の贈与をする場合は、税金を軽減できる場合があります。

例えば、夫婦間の贈与の場合はQ2で触れた「贈与税の配偶者控除」の制度がありますし、65歳以上の親が、20歳以上の子に贈与する場合は、「相続時精算課税」という制度を選択することもできます。
この「相続時精算課税制度」は、贈与時に贈与財産に対する「贈与時の贈与税」を払い、その後の相続時にその贈与財産と相続財産とを合計した価額をもとに計算した相続税額から、すでに支払った贈与税を控除することにより贈与税・相続税を通じて納めるというものです。この制度を利用すれば、評価額2,500万円以内の不動産の生前贈与については(相続時に基礎控除額を超える財産を有していなければ)、贈与時・相続時を通じて税額がゼロになります。いずれにせよ不動産を贈与する場合は、最寄りの税務署や税理士に相談のうえ慎重に進めるべきでしょう。

【渡辺拓郎のワンポイント・アドバイス!】
  • ちょっと待った! 不動産贈与の登記をする前にまず税金に関する相談を!
  • 不動産贈与の場合の評価額は、土地については一般的に路線価、建物については固定資産の評価証明書を基準に算出します。
司法書士
渡辺 拓郎
渡辺拓郎事務所 代表
一覧に戻る

わからないことがある方

よくあるご質問

ポスタルくらぶサービスセンター

 03-3497-1555

受付時間 9:00~17:00(月~金、祝日除く)

会員の方

ログインして
会員限定サービスを利用する

お電話でのお問い合わせは会員カードに記載のフリーダイヤルへお問い合わせください。

会員カードのご案内

会員の方へ

※お電話でのお問い合わせも承っております。会員専用電話番号は会員カードにてご確認ください。