法律コラム

2012.07.26

相続手続(2)

読者の皆様、その後お変わりありませんか。今年も夏休みシーズンが到来しましたが、節電の必要性からか、夏休みの長い方も多いのではないでしょうか。
さて、今回は、「相続手続」に関して次のQ&Aを取り上げてみたいと思います。

贈与・財産分与手続 死因贈与や財産分与が認められるケースについての具体的考察

Q1:私と夫とは、婚姻届を出さず、内縁の夫婦として長く過ごしてきましたが、このたび、内縁の夫が死亡しました。私は、財産を承継することはできないのでしょうか。

A1:相続というのは、人が死亡すると、その財産的権利義務はすべて、一応当然に一定の親族によって承継されることをいいます。そして、民法によりますと、ある人が死亡した場合(以下、「被相続人」と呼ぶ)には、誰が相続人になるかということを、順位を付けて定めています。それによりますと、第1順位は子、第2順位は親または祖父母、第3順位は兄弟姉妹と定めています。第1順位の子がいる場合には、第2、第3の順位の人は相続人となりません。また、第1順位の子がおらず、第2順位の親等が相続人となる場合には、第3順位の人は相続人となることはありません。そして、第1、第2順位の者がいない場合にはじめて第3順位の兄弟姉妹が相続人になります。

しかし、被相続人の配偶者は、相続分は変わりますが、第1から第3順位の人と一緒に相続人(相続人が複数いる、という意味で共同相続人と呼ぶ)になることができます。
そこで、Q1の内縁の妻の相続権の有無を、他の2つのケースを追加して検討してみたいと思います。

Q1の場合、つまり内縁の妻は、内縁の夫の相続人となることはできるでしょうか。
内縁の妻は、法律上の配偶者とはいえず、相続権はありません。従って、婚姻届を出さないうちに内縁の夫が死亡した場合において、内縁の夫名義の財産を受ける場合としては、生前に遺言としてもらうか、死因贈与契約(贈与者の死亡を条件とした贈与契約)をしておく必要があります。
しかし、内縁の夫に相続人が誰もいない場合には、「特別縁故者」として財産の分与を家庭裁判所に申し立てることができます。

次に、離婚裁判や離婚調停中に配偶者が死亡した場合はどうでしょうか。 相続は、被相続人の死亡時に開始しますので、その時点で離婚裁判や調停が継続中であれば、まだ婚姻関係は継続中ですので、離婚しているとはいえず、配偶者はそのまま相続することができます。 このような場合に配偶者に相続させないようにするためには、「相続人の廃除」という方法をとる必要があります。この問題につきましては、次回で詳述する予定ですが、方法としては、生前に家庭裁判所に廃除の請求をする場合と、遺言で廃除の意思を表示する場合の2つのやり方があります。

養子に行った子も実親の相続人となることができますか。 養子に行った子は、養親の相続人となることはもちろん、実親の相続人となることもできます。
しかし、養子縁組の中に、特別養子縁組と呼ばれるものがあり、この養子縁組においては、実親との親子関係がなくなりますので、養親の相続権のみしかありません。

贈与・財産分与手続 死因贈与や財産分与が認められるケースについての具体的考察

Q2:私には、先日死亡した主人との間に2人の未成年の子供がいます。残された財産としては、現在居住している土地・建物の不動産と、わずかな預貯金のみです。子供が幼いこともあり、不動産の名義を私の単独名義にしたいと思うのですが、どのような手続を踏めばよいのでしょうか。
ちなみに遺言書等はありません。

A2:A1でも触れましたが、被相続人たるご主人には妻のあなたと、子供2人の計3名が相続人となります。そして、民法で定められている割合で各相続人が財産を承継する場合の、いわゆる法定相続分による場合には、妻であるあなたが全体の2分の1、子供2人が各4分の1ずつの相続分を得ることになります。土地、建物の相続登記をする場合にも、この法定相続分に従う限りでは、戸籍謄本や除籍謄本等を添付して比較的簡単にすることができます。

しかし、未成年者を含む3人の相続人間で、法定相続分とは異なる持分で相続登記をする場合(例えばQ2のケースで相続人3人が各3分の1ずつの持分で相続登記をするような場合)や、今回のご質問のように、妻であるあなたが単独で土地・建物を相続するような場合には、「遺産分割」という手続を経る必要があります。

この「遺産分割」といいますのは、言葉のとおり、ご主人の残された財産を、相続人全員で誰がどの財産をどのように承継するかを決めることです。

2人の子供が成年者の場合には、あなたと2人の子供との3人で遺産分割を行い、その分割内容を記載した「遺産分割協議書」に全員の実印を押印して、それぞれの印鑑証明書を付けたものを戸籍謄本や除籍謄本と一緒に添付して相続登記をすることができます。この場合には、3人の遺産分割協議が整ったものとして、ご主人名義の土地・建物は、相続を原因として、直接、妻であるあなたの名義にすることができます。

しかし、相続人の子供の中に、1人でも未成年者が含まれている場合には、手続は少し複雑になります。さらに、Q2のように2人とも未成年者の場合にはどうしたらよいのでしょうか。

結論からいいますと、未成年の子供さんそれぞれに、特別代理人の選任を家庭裁判所に請求しなければなりません。そして、あなたと2人の子供の特別代理人2人の計3名で遺産分割をすることにより、あなたの単独名義にし得る場合がある、ということになります。

ここで、あなたの単独名義にし得る場合がある、といいますのは、子供2人のそれぞれの特別代理人は、それぞれの未成年の子供の利益を考えてあなたとの遺産分割協議に臨みますので、必ずしもあなたの単独名義とする協議がまとまるとは限らないからです。そして、このようなケースは親権を行使するあなたと子供の利益が遺産分割等の場面で相反する、という意味で、法律上、利益相反行為(りえきそうはんこうい)と呼ばれています。

そして、特別代理人の選任を家庭裁判所に請求する場合には、請求してから選任されるまでに2ケ月から3ケ月を要する場合もありますで、選任までにかかる期間及び家庭裁判所に提出する書類等に関しては、一度最寄りの家庭裁判所に問い合わせをされてはいかがでしょうか。

最後になりましたが、特別代理人に選任されるのは、一般的に、当該遺産分割に直接利害関係を有しない子供の親族(祖父母やおじ、おば)である場合が多いようですが、適当な方がおられないときには、弁護士や司法書士等の専門家が選任される場合もあります。

参考
司法書士
渡辺 拓郎
渡辺拓郎事務所 代表
一覧に戻る

わからないことがある方

よくあるご質問

ポスタルくらぶサービスセンター

 03-3497-1555

受付時間 9:00~17:00(月~金、祝日除く)

会員の方

ログインして
会員限定サービスを利用する

お電話でのお問い合わせは会員カードに記載のフリーダイヤルへお問い合わせください。

会員カードのご案内

会員の方へ

※お電話でのお問い合わせも承っております。会員専用電話番号は会員カードにてご確認ください。